奥多摩(青梅市)に位置する武蔵御嶽神社。標高929m、御岳山商店組合の宿と共に存在し、関東一円を見晴らす静かで神秘的な雰囲気の中、たそがれ時より行われる「陰の祭り 流鏑馬神事」。東京にもこのような謎めいた祭が存在する魅力をお伝えして参ります。
毎年9月29日の夕方。東京都青梅市の武蔵御嶽神社で開催
東京駅から約2時間半で神秘的な雰囲気を体験できます。中央線 青梅特快で御嶽駅まで1本で行きます(約1時間半)。拝島駅を過ぎたあたりからは田畑が見えはじめ、本格的に奥多摩エリアに入っていきます。御嶽駅到着後はバスでケーブル下まで行き(約10分)、御嶽山登山鉄道で滝本駅から御岳山駅までケーブルカーで昇ります(約10分)。なんとこのケーブルカー平均勾配22度26分と関東一の勾配だそうです。そんな関東一のケーブルカーに乗り関東平野一円を見晴らした後は、御岳山駅から武蔵御嶽神社まで歩きます(約20分)。神社のある宿屋密集地に着くまで、綺麗に舗装はされてますが崖のような密林を通り抜け、アップダウンのある道を登山して行きます。
神社に近づくにつれ、御岳山商店組合などの宿やお店が増えていきます。昔ながらの商店や宿は風格があり、古き良き日本の景色と言った感じです。車の出入りも出来るようですが、勾配がきつく、道が細いのでかなり山に慣れたベテランドライバーでないと大変だと思います。このように都心から約2時間半で武蔵御嶽神社の入り口まで来ることが出来ます。このぐらいの所要時間なら日中のお祭りであれば日帰りでも参加可能ですが、下山の終電が17時半頃には神社を出ないといけないので夕方や夜のお祭りに参加する方は宿泊がおススメです。
標高929ⅿ異彩の神事。馬から矢を射る流鏑馬とは違う?
近所の人や外部の方も続々と集まり、鳥居前の広場で流鏑馬が始まろうとしていました。屋台などが出てワイワイとする雰囲気ではなく、夕闇に松明(たいまつ)の炎が灯り、静かで荘厳な雰囲気の中、儀式が執り行われます。神事自体は建物内で行われるようですが、そちらが終わると、広場で神社の方が今回の流鏑馬について説明をし、流鏑馬の儀式を行うと言った流れでした。
流鏑馬は、本来は馬に乗って走りながら矢で的を射る儀式等のことを意味しますが、現在の武蔵御嶽神社では神事として実際の流鏑馬を模した独特の儀礼を体験することが出来ました。神社の方の説明が終わると、神社に通じる階段(324段もあるそうです)から広場へ向かって神職の方が闇の中、提灯(ちょうちん)を持ちながら向かってきます。掛け声をしながら広場に到着し、流鏑馬の儀式が始まります。神職数名で役割分担し、弓を模し的を射る動作を行うと、的が割れます。静かで荘厳な雰囲気の中、神職の方の声が轟き、木片のようなものも散らばります。儀式が終わると、木片の配付がはじまり、参加者は有り難そうに持ち帰るという状況でした。
30分程度で流鏑馬の儀式が終わり、標高も900m付近で霧も出て来た中、終電のアナウンスが流れ、その場を後にしましたが、お金と時間があれば宿泊するのがベストだなあと思いました。宿を通さないと参加できない朝の神社の行事もあるようです。今回の流鏑馬とは別行事になりますが、広場に「天空もみじまつり」の準備がされており、こちらも楽しそうなお祭りの雰囲気を感じました。
無病息災!焼き魚を美味しく食べよう
東京23区では東京スカイツリー(標高634m)や高層ビル群を見ることはありますが、休日に自然を体験するには奥多摩エリアは最高のロケーションの一つ。その中でも、武蔵御嶽神社は都心から2時間半で秘境を体験でき、簡単な登山や宿泊まで出来る素敵な場所です。流鏑馬神事でもらった木片は神様からのお下がりとなり、焼き魚を乗せて食べると無病息災という風習が江戸時代からあるようです。昔からの風習で詳細が残っていないこともありますが、魚を食べるという風習は日本食の米と魚を食す文化に起因していると思われます。米と魚は、基本的には東南アジア・東アジアの大きな特徴で、稲作に適する風土に加え大量の水が必要で、そこには魚が棲むことから、米と魚の文化が生まれたと考えられているようです。かつては今ほど医療も発達していない中、謎の病の不安を取り除くため、無病息災の願いを込めて日本の食文化の魚を有り難い木片の上に乗せて食べたのではないかと思います。また5月には陰祭と対の「日の出祭」も開催され1年を通して楽しめる、正に天空の城(社)です。
武蔵御嶽神社 http://musashimitakejinja.jp/matsuri/
御岳山商店組合 http://mitakesan.com/
日本食の歴史 https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/attach/pdf/index-15.pdf