2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
害虫を払い、豊作を祈る
今回は、6月の第1日曜日に広島県北広島町川戸地区で行われる「上川戸虫送りまつり」を紹介しようと思う。島根県および広島県を流れる江の川源流域では、ウンカ、ナカザシなどの害虫が発生し、農作物に被害を与えるのを追い払う呪法として「サネモリさん」と呼ばれるわら人形を作り、害虫の御霊をわら人形に移し、川に流すお祭りが行われている。
中でも北広島町の川戸地区で行われている「上川戸虫送りまつり」は、サネモリさんのわら人形を振りかざして、「上川戸虫送り踊り」を踊る特徴ある祭りだ。
サネモリさんと呼ばれるわら人形は、平家の武将、斉藤別当実盛に由来している。嘉永2年(1183年)、実盛は源平合戦中に水田の稲の切り株に足をとられ、「われは害虫になって水田にたたる」と言い残して亡くなった。以降、各地に害虫の被害が多発するようになり、実盛の怨霊を鎮めるために、実盛をかたどった人形を持って地域を回り、害虫の御霊を人形へ移して、村境で川に投じて追放するようになったといわれている。
上川戸虫送り踊りは、腰に付けた太鼓や手打ちがねを打ち鳴らしながら、拍子に合わせてサネモリ人形を振りかざす、独特の動きが特徴の踊り。
祭りが行われる6月の第1日曜日は、田植えが無事終わり、稲が成長を始める頃。当日の朝、神社での神事が終わると、サネモリ人形を高く掲げ、左右に振り上げながら、周辺の田んぼを回る。クライマックスはサネモリさんを中心に円になりながら踊った後、橋の上からわら人形を投げ込み、石を投げ、追い打ちをかける。わら人形が流れていったら、集会場で神楽を見ながら皆でお弁当を食べて楽しむ。
今年は新型コロナウイルスの影響で、各地の虫送り行事が縮小・中止になったことも原因だろうか、ウンカによる被害が多かったと聞いた。収穫時期にもかかわらず、枯れたまま放置されている稲を見て、改めて大事な行事だと思った。