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埼玉県の長瀞町に社殿を構える宝登山神社
全国各地の神社や寺院では参詣の記念に御朱印を頂くことができます。朱印帳に訪れた神社や寺院の御朱印が並ぶと、貴重な思い出となり写真とは趣の異なる味わいが滲み出てくるものでしょう。埼玉県の長瀞町に社殿を構える宝登山神社では、紙面に神社名と授与日が書かれ、朱印が押されます。
宝登山神社では、本殿の東に隣接する授与所で御朱印を頂くことができます。
授与所では御朱印ばかりでなく、お守りや絵馬など様々な授与品が準備されています。種類豊富なお守りの中には、黒色の珍しいお守りの「吉祥寳守」があります。これを身につけておれば、きっと宝が守られ、お金持ちになれることでしょう。また、黄色の下地に宝登山の文字で書かれる「縁起うちわ」は、火伏せや金運招来などにご利益があると言われています。
『日本書紀』の物語に登場する宝登山神社
「縁起うちわ」のご利益は、宝登山神社の創建にまつわる伝説に由来しているのでしょう。宝登山神社の歴史は古く、『日本書紀』の物語に登場しているのです。日本武尊が西暦110年頃、東征のために宝登山を訪れたとき、山火事に見舞われました。真赤な炎が山を焦がしているとき、2頭の巨犬がどこからともなく姿を現し、火を消し日本武尊の命を救ったと記されています。これをきっかけに宝登山は火止山と呼ばれるようになり、山麓には宝登山神社の社殿が創建されたと伝わっています。
四面に緻密な装飾が施される権現造りの本殿
現在の宝登山神社の本殿は、1874年に権現造りの様式を用いて建造されたものです。神日本磐余彦尊、大山祗神、火産霊神をご祭神として祀っています。創建の伝説に加えて、神社名から宝の山が連想されることから、火災盗難除け、諸難除け、家内安全、商売繁盛などのご利益があると信じられています。
本殿で参詣を済ませたら、欄干などの装飾を鑑賞したいものです。正面の向拝には神を守る5頭の龍が緻密に彫刻されています。東西の両側面には、中国で親孝行を範として描かれた『二十四孝』の8つの物語が描かれています。そして背面には出世を願う登竜門が刻まれています。本殿を精巧な装飾が取り囲んでいることに驚かされることでしょう。
長瀞の自然が豊かな表情を添える境内や参道
宝登山神社は建築家や彫刻家によって見事なデザインが施されていますが、宝登山や長瀞の自然も社殿に豊かな表情を添えてくれます。早春には一の鳥居と二の鳥居を繋ぐ参道は、薄紅色の桜並木となり、「長瀞紅葉まつり」を盛り上げます。秋には境内に点在する社殿が紅葉で覆われます。「長瀞紅葉まつり」の開催日には夜間のライトアップも行われます。
長瀞の夏の風物詩として定着している船玉祭
季節ごとに装いを変える宝登山神社では、一年を通して様々な行事が開催されます。1月1日の歳旦祭に始まり、2月には節分追儺祭、4月3日に例大祭、5月2日に奥宮祭、7月20日に八坂大祭、8月15日に船玉祭、11月23日に新嘗祭などと多彩です。この中で最も大勢の人々で賑わうのが船玉祭です。会場は神社の境内ではなく、東方約1キロを流れる荒川です。川の水上安全無事故を願い、万灯船の水上渡御や、灯篭流しや花火大会が行われます。毎年、岩畳は大勢の人々で埋め尽くされ、長瀞の夏の風物詩として定着しています。
埼玉県の長瀞町で長い歴史をもつ宝登山神社は、四面に緻密な彫刻が施された権現造りの本殿を構えています。授与所には神社の歴史を物語る授与品が並びます。境内や参道は季節ごとの彩りで装飾され、夏には長瀞の風物詩となっている船玉祭が開催されます。