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茨城県の伝統文化紹介シリーズ 常陸大津の御船祭(おふねまつり) 五年に一度開催、国指定重要無形民俗文化財の祭りを見逃すな!

2019/4/2
2024/3/7
茨城県の伝統文化紹介シリーズ 常陸大津の御船祭(おふねまつり) 五年に一度開催、国指定重要無形民俗文化財の祭りを見逃すな!

「常陸大津の御船祭(おふねまつり)」は、茨城県北茨城市大津町、佐波波地祇(さわわちぎ)神社の春の例大祭。海上の安全と大漁を願いを込めて、五年に一度開催されます。
華やかな装飾の木造船「大漁丸」を、左右に揺らしながら約500人(300人?)の手で引くという、勇壮なお祭り。その魅力について、御舟祭保存会の鈴木さんにお話を伺いました。

1.海上の安全と大漁を祈願!御船祭とは?

大津町は、カレイやアンコウなどが獲れる良港として知られる漁師の町です。その町で五年に一度行われる、勇壮なお祭が「常陸大津の御舟祭」です。
美しい装飾を施した木造船「大漁丸」がソロバンと呼ばれる木枠の上を滑走します。
車輪がないので、ソロバンと船底がこすれ、木が焦げるにおいも迫力満点です。
水主(かこ)や御囃子連による御船歌や囃子も華やかです。
お祭り初日5月2日は宵祭。昼過ぎに空船(からふね)が御囃子を奏でる中に曳かれ、夜は関係者による『移魂の儀』が神殿奥深く厳かに執行されます。
翌日3日は本祭。船に神輿を載せた「神船」が、ソロバンを敷きつめた路上を左右にゆれながら進む『曳き船の儀』で、祭は最高潮に達します。 15万人の観客を集めるというこのお祭、次の開催は2019年5月2日~3日。これは見逃せません。

2.300年近くの歴史。国指定重要無形民俗文化財

お祭の由来は、佐波波地祇の神が現在地に鎮座した後、浜に下った際の祭事にあると言われています。「御船祭」としては、1726年(享保11年)に始まったという記録が神社の絵馬に残っています。昔は、神輿を神船(じんぜん)にして海上を渡していました。 しかし、その後地形が変わり、海は道路に。そこで道筋を変えることなく神船を渡すために、現在のように陸上神船曳を行うようになりました。
ももとは港町の船員さんたちで行っていたお祭りですが、町役場との協力のもと、文化財指定を目指して「大津町御船祭保存会」が発足しました。
その甲斐あって、昭和50年には県指定民俗無形文化財、昭和54年には国選択無形民俗文化財に指定されました。また、昭和59年には保存会を現在の「常陸大津の御船祭保存会」に組織を改め、平成29年、国指定重要無形民俗文化財となりました。
五年に一度と決まったのは昭和49年、県指定無形文化財になるにあたってのこと。それまでは1月に総会が行われ、その年にお祭りを行うかどうか決めていました。あまりに荒々しい動きのため、船の損傷が激しく、その修繕を行うための費用捻出が課題になるためです。前年が豊漁であれば祭りが行える。祭りはそれだけ生活に深く根付き、豊漁を祝い、祈るものであったと言えます。

3.地元の誇り!保存会の皆さん

保存会を構成するのは、町の世話人の方々、水主(かこ)と呼ばれる乗組員、そしてお囃子です。
世話役は三つの町会から合計80人ほどが集まります。
水主は現在18人。船方の家系にのみ許されたもので、水主の歌を歌います。この歌は京都から伝わり、真鶴、館山を経て、大津湊に伝わりました。さらに伊達藩に伝わり、水主は御座船を出すときの警備に当たり帯刀を許されたと言います。その御座船が、現在の御船祭で使う船の基となっているそうです。神社に向かうとき、降りてくるとき、引くときなど複数の曲があり、先祖代々受け継がれています。
お囃子は三つの町会に分かれて行います。大人が笛、小学生が小太鼓、中高生が大太鼓をたたきます。お囃子の練習は2月から週に1回行われます。

神船内の様子。大太鼓、小太鼓、笛、鐘の鳴り物、それに神輿が乗り込みます。

引き手は500人。こちらは町外からも募集します。厄払いのために行う目的もあり、厄年、前厄、後厄に当たる人からの応募が多いとのことです。地元の同窓会、同期会での応募も多く、お祭をきっかけとした再会が大きな楽しみとなっているとのことです。

4.とにかく大迫力!御船祭の魅力

御船祭のクライマックスは、本祭の『曳き船の儀』。
海の幸を描いて飾った「大漁丸」ですが、1日目の宵祭りでは、「空船(からふね)」の状態にあります。
2日目の本祭では、空船に御輿を乗せて「神船(じんぜん)」となり、水主の歌う御船歌やお囃しにあわせ500人ほどに曳かれ町中を練り歩きます。船底に車輪はなく、ソロバンとよばれる井桁状に組んだ木枠300丁を敷き、20人から30人の若者が船縁にとりつき左右に揺らしながら木枠の上を滑らすように曳いていきます。その重さは何と10トン!あまりの摩擦に巻き上がる煙、「引け!」の掛け声で一斉に走り出す若者と、一気に滑り出す神船、見ごたえがある場面です。
引手の動きが目立ちますが、ソロバンを並べる様子も「いつ船が滑ってくるのか」とはらはらします。
祭の見どころは?との質問に、「船が丁字路を直角に曲がる時の迫力がすごい。是非丁字路を見てほしい。撮影にも最適ですよ」と鈴木さん。船が曲がるシーンは、ぜひご覧ください!

5.次回は2019年5月!今後にかける思い

保存会の鈴木さんは、幼稚園のころから太鼓の演奏で関わり、五年に一度の祭りを家族全員が楽しみにしているとのこと。
中でも2019年5月に迫る御船祭は、国の指定になって初めての大祭。平成が終わり、新年号の下で初めて行われる祭りでもあります。鈴木さんは「若者は楽しくにぎやかに。伝統に残るようにしたい。」と語っています。
記念すべき例大祭、これを逃すと五年後です。ぜひ、この興奮を味わいに、「常陸大津の御船祭」にいらしてはいかがでしょうか。

2017年国の重要無形民俗文化財指定を受け特別開催された際のポスター

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