日本には、鬼が登場する童話や伝説が多くあります。悪さをする鬼を退治する話、心優しい鬼が人を助けてくれる話など、昔から語り継がれている話の中には鬼の存在が欠かせないと言っても良いでしょう。今回は、童話や伝説に登場する鬼と縁が深い食べ物についてご紹介します。
鬼退治に使われた「ムーチー(鬼餅)」
ムーチー(鬼餅)は、餅粉に黒糖や砂糖などと水を加えて蒸した甘いお餅です。月桃(カーサー)の葉に包んで蒸して作るので、「カーサームーチー」とも呼ばれます。沖縄では旧暦の12月8日に、健康と長寿を願ってムーチーを食べる行事があります。沖縄に伝わる昔話では、人食い鬼になった兄を退治するために、鉄の塊(瓦という話もあり)入りのムーチーを妹が作り、それを食べて弱った兄を妹が崖から突き落として退治したとされています。
童話に出てくる「きびだんご」
童話「桃太郎」では、桃から生まれた桃太郎が、鬼退治に行く途中で出会った犬、サル、キジにきびだんごをあげて鬼退治の手伝いをしてもらいます。鬼退治に行く途中でお腹が空いた桃太郎が、きびだんごを食べてパワーをもらったという伝説もあり、鬼退治=きびだんごというイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。きびだんごの「きび」とは、日本で昔から食べられていた穀物のことで、漢字では「黍」と書きます。このきびを蒸してつぶして作られたお団子がきびだんごです。
桃太郎伝説が残る大月の「おつけだんご」
おつけだんごは、味噌汁の中に野菜と小麦粉を水で溶いた団子を入れた山梨県大月市の郷土料理です。山梨県大月市には、「大月桃太郎伝説」という古くから伝わる桃太郎の伝説があり、桃太郎に関係する地名や言い伝えも多く残っています。おつけだんごも、大月桃太郎伝説が料理として伝えられたのではないかといわれています。大月市の公認キャラクター「おつたろう」は、白い団子を模した顔に桃太郎のハチマキを絞め、おつけだんごの材料がはいった巾着を腰につけてPR活動に励んでいます。
「にんにく」を鬼に奉納した
青森県弘前市の鬼沢菖蒲沢地区には、鬼を祀った「鬼神社」があります。鬼沢には、親しくなった村人が水田の水が枯れてしまうと困っていたため、鬼が一夜にして水路を作ったという伝説が語り継がれています。鬼神社は、鬼が残したくわとミノ笠を祀ったのが始まりとされており、今でも鬼の好物だったにんにくを奉納しています。
ちなみに、ここでは「鬼」は上部の”ノ”がありません。これは、ツノのない優しい鬼とされているためです。
鬼が苦手な「イワシ」
鬼といえば節分ですが、一部の地域では節分のときにイワシを食べたり、イワシの頭とひいらぎの小枝を使った「やいかがし」や「柊鰯(ひいらぎいわし)」と呼ばれる飾りを、節分の夜に家の戸口や軒下に飾ったりする風習があります。鬼はイワシの臭いが苦手なので、焼いたイワシの頭を、葉に棘があり、「鬼の目突き」とも呼ばれるひいらぎの小枝に刺して飾ると鬼を撃退できるのだそうです。
まとめ
今回は、鬼と縁が深い食べ物を5つご紹介しました。鬼退治の道具として使われた食べ物や、鬼の好きな食べ物、鬼が苦手なものなど、昔話や伝説にはさまざまな食べ物が登場します。物語の内容だけでなく、登場する食べ物にも注目しながら昔話や伝説に触れてみるのも面白いかもしれませんね。