鬼の姿を想像してみてください。あなたが想像した鬼はどのような服を身にまとっていましたか。多くの方が、「虎柄のパンツをはいている」と言うでしょう。なぜ鬼は、虎柄のパンツを履いているのでしょうか。
昔話やアニメで描かれる鬼は虎柄のパンツをはいていることが多いですよね。また、童謡の「鬼のパンツ」でも、虎柄のパンツが歌詞として取り上げられています。なぜ鬼は当たり前のように虎柄のパンツをはいているのかを探るため、鬼のパンツの謎や子どもたちに馴染みのある童謡「鬼のパンツ」について解説します。
鬼のパンツはなんで虎柄なの?
私たちが当たり前のように想像する鬼がはいている虎柄のパンツ。なぜか、幼い頃から馴染みがありますよね。鬼がはいている虎柄のパンツのイメージは、何を起源とするのでしょうか。ここでは、虎柄パンツの由来などをご紹介します。
鬼門が由来している
日本に伝わる鬼の姿は、魔除けに関わる「鬼門(きもん)」に由来すると言われています。鬼に関する節日のお祭りといえば豆まきです。豆まきは、中国の大儺(たいな)という風習が日本に伝わり追儺(ついな)と呼ばれるようになったのが始まりです。追儺は、陰陽五行説に基づいて行われていました。この陰陽五行説には、鬼門とは北東にある鬼が出入りする方角であるという考え方があります。
私たちに馴染みのある北・南・西・東などの方位は、同じく馴染み深い十二支の置き換えることができます。北から東にかけて置き換えられる干支は以下のとおりです。
・北=子
・北北東=丑
・東北東=虎
・東=卯
このように置き換えると、鬼門にあたる北東は、丑と虎の間にあることがわかります。この北東のことを艮(うしとら)と言い、鬼は頭が牛で下半身が虎というわけです。これが、鬼のパンツの柄の由来です。
室町時代に今の鬼のイメージが定着した
豆まきの歴史については諸説ありますが、ここでは通説をご紹介します。
平安時代には、追儺(ついな)を宮中行事として大晦日に行っていました。追儺では、方相氏と呼ばれる鬼神の役が手下役を連れて宮中をまわり、鬼を払います。鬼神は、金色の目が4つある面をつけて朱色の服をまとい、盾と矛を持っていたそうです。この出で立ちは、中国の風習をそのまま取り入れていたと言われています。
平安時代に残された書物には、鬼に関する記述が多くあり、伊勢物語や今昔物語などにも鬼が登場します。室町時代以降は、鬼の絵が描かれた「百鬼夜行絵巻」などの美術品が制作されました。この頃には、追儺が豆をまいて悪鬼を追い払う行事へと発展し、庶民にも定着していったようです。なお、節分に登場する鬼のイメージは仏教の鬼からきているとも言われています。
童謡「鬼のパンツ」
「鬼のパンツ」という童謡をご存知でしょうか。定番ソングとして、耳にしたことがある人も多いかもしれません。童謡「鬼のパンツ」は、NHK教育から広まった子供向けのコミックソングです。この歌では鬼のパンツについて何が語られているのでしょうか。
どんな歌詞なの?
鬼のパンツは、いいパンツ
強いぞ 強いぞ
虎の毛皮でできている
強いぞ 強いぞ
5年はいても破れない
強いぞ 強いぞ
10年はいても破れない
強いぞ 強いぞ
はこう はこう 鬼のパンツ
はこう はこう 鬼のパンツ
あなたも あなたも あなたも あなたも
みんなではこう鬼のパンツ
鬼の虎柄パンツの素材について、布でできていると想定していた人もいるのではないでしょうか。しかし、この歌で語られている内容を見るに、鬼のパンツは「毛皮」でできているようですね。
また、鬼のパンツがどれだけ丈夫なのか、少ない歌詞の中で上手に表現されています。10年はいても破れないということは、人間の寿命で考えれば生きている間の買い替えが、7回~8回程度で済むということですね。1枚いくらかわかりませんが、経済的なのかもしれません。
原曲は?
鬼のパンツは、イタリアの歌曲である「フニクリ・フニクラ」をベースに作られました。ちなみに、鬼のパンツの歌詞は原曲の歌詞と全く関係ありません。
フニクリ・フニクラは、ヴェスヴィオ山という活火山の登山電車「フニコラーレ」のコマーシャルソングとして、イタリアの作曲家であるルイジ・デンツァにより作曲されました。作詞を担当したのは、ジャーナリストであるジュゼッペ・ペッピーノ・トゥルコです。
鬼のパンツは、フニクリ・フニクラの替え歌として、現代の日本の子どもたちに親しまれています。なお、鬼のパンツの作詞者は不明です。
まとめ
私たちの中で、固定概念として定着していた虎柄パンツの鬼の姿。鬼が虎柄のパンツをはいているというのは、陰陽五行説と干支に置き換えた方角が関係していることが分かりました。また、鬼の虎柄パンツについて歌った「鬼のパンツ」に原曲があるということを知っていた人は少ないかもしれません。
イタリアのコマーシャルソングが日本で童謡になるなんて、作曲者は想像しなかったでしょう。今年の節分は、鬼のパンツについてお子さんに伝授して、鼻高々になってみてはいかがでしょうか。