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「大津絵踊り」大津の芸妓による曲解説!お面の日本舞踊は花街発祥

更新日:2020/12/11 佐々木 美佳
「大津絵踊り」大津の芸妓による曲解説!お面の日本舞踊は花街発祥

滋賀県大津の伝統「大津絵踊り」

「大津絵」とは江戸時代初期に生まれた滋賀県の伝統的工芸品です。
松尾芭蕉が「大津絵の筆のはじめは何佛(最初に描くのは何の仏様なのか)」と詠んだほど有名で、東海道五十三次の中で最大級の大きさを誇る大津宿で旅のお土産や護符として広まりました。現在でも大津を歩くと看板や商品のデザインでも見かける、非常に身近な絵です。

写真:大津市役所から大津絵美術館に向かう道にある大津絵の解説

そしてそんな有名な大津絵の画題を「元唄(大津絵節)」と三味線伴奏にあわせて、面をつけて舞う「大津絵踊り」は明治初期に大津の花街で始まったお座敷芸。

現在は大津絵踊り保存会により、一般の人が気軽に習えるようになっています。

稀少な文化になってしまった大津絵踊り

大津絵踊りをされている芸妓の笑幸(えみゆき)さんにお話を伺いました。

笑幸(えみゆき)さん
「ほとんど一般の生徒さんが楽しんでお稽古してもろてる状態です。
大津絵踊りは、花街で芸妓らが座敷で踊り継いできたものですが、昭和が終わった時に自粛自粛の日々になり、お座敷の予約はほとんどキャンセル。
観光も少ない大津は、料亭やらもどんどん辞めていかはり、芸妓らの仕事も減り、後継者も育てられる状態ではありません。
ただ、大津市無形民族文化財と指定されたことで、芸妓でなくとも、一般の方にでも、継承していけるだけ頑張りましょう。と、今の様な状態になっております。
2020年は、コロナで色々と動けなくなりましたが例年では、敬老の日には大津市内の老人ホームへ踊りに行ったり、何らかお祝い事で呼んでもらって踊りに行ったりしています。」

くわえ面「大津絵十画題面」

「大津絵十画題面」はそれぞれ護符としての意味があり、地方(じかた)三味線で踊ります。
お面に込められた風刺画の意味をご紹介いたします。

雷の太鼓釣り
護符:雷避け。
雷様が太鼓を落として慌てて吊り上げようとする図。どんな熟達した者でも時に失敗することがある。

外法の梯子剃り
護符:長寿。
外法(げほう/長頭翁)の長い頭に梯子をかけ、大黒天が髪を剃ると、「福が昇りつめて長寿の神が倒れる」という図。

藤娘
護符:良縁。
歌舞伎や舞踊でも有名。大津絵では黒い着物に藤柄で描かれます。
シキミ(樒)を持って踊る愛宕山参りの風俗から生まれた図。なぜ藤になったのかは謎。

矢の根
護符:目的貫徹。
歌舞伎「矢の根」でも人気の画題。鏃(矢尻、矢先)という意味。

瓢箪なまず
護符:水難除け。諸事円満に解決し水魚の交わりを結ぶ。
老僧が瓢箪でなまずを押さえる禅画が元で、のらりくらりとした人の心を風刺した画。


写真;左)藤娘、右)鷹匠

座頭
護符:倒れない。
目が不自由な座頭が犬にふんどしをくわえられて慌てているところ。幕府の公認の「当道座」という悪徳高利業者を風刺。

釣鐘弁慶
護符:火難盗難除け。身体剛健。
合戦の際、三井寺の鐘を奪い、引き摺っていく途中で谷底に投げ落としたという伝説を表しています。

鷹匠
護符:失せ物。
江戸時代の人気の画題。イケメン若衆。

槍持奴
護符:道中安全。
大名行列の先頭で毛槍を持ち、威張っている姿「虎の威を借りる狐」を揶揄する風刺画。

鬼の寒念仏
鬼が僧衣をまとい、偽善者を風刺する代表的な画題。
鬼の角は三毒(貧欲・瞋恚・愚痴)を表し、一本折れているのは自責の念という意味です。


写真:瓢箪なまず 瓢箪でなまずを押さえているところ

「近江八景」など滋賀ならではの曲

今回はたくさんある曲の中から、「大津絵節」と、近江の名所を謡う「近江八景」をご紹介いたします。

「大津絵節」歌詞
〽長頭翁の梯子ずり。雷太鼓で釣鐘とる。お若衆は。鷹を持つ。塗笠お女郎がかたげた藤の花。座頭のふんどしを犬ワンゝつきや。びつくり仰天し。腹立ち杖をばふり上げる。荒気の鬼もはつきして。鉦しもゝ。瓢箪なまずを。しつとおさえます。奴さんの尻ふり行列。向こう鉢巻き釣鐘弁慶。矢の根男子。〽

お面の意味がわかると歌詞もわかりやすいですね!コミカルな振り付けが楽しい舞です。


写真:座頭 犬にふんどしをかまれ、怒って杖を振り上げる

「近江八景」歌詞
〽近江八景は。たれ故に。粟津に。こがるゝ矢橋船。たのむ文さへ。堅田より。逢瀬は堅き石山の。月に一度も会ひ兼し。積る話は比良の雪。ほんにわたしは。唐崎の松。 いつも浜辺に。たヾ一人青々と。たへぬ涙は夜の雨。瀬田の橋より。長い月日を。くよくよ送るや。三井の鐘。〽

滋賀の名所がたくさん出てくる曲です。詳しくは次項の芸妓さんによるわかりやすい説明をご覧ください。

芸妓 笑幸さんによる曲解説

定期公演会で披露された曲を笑幸さんに解説していただきました。

重ね扇 (舞:笑幸 えみゆき)
祝舞、おめでたい踊りです。「重ね扇に抱きがしわ」という歌詞は音羽屋の定紋をさしています。
歌詞「重ね扇はよい辻占よ 二人しっぽり抱きがしわ 菊の花ならいつまでも 活けて眺めているこころ 色も香もある梅の花」

秋の夜 (舞:伊東)
秋の踊り、季節の踊り。お月見を思い浮かべる歌詞が特徴です。
歌詞「秋の夜は 長いものとはまん丸な 月見ぬ人の心かも 更けて待てども来ぬ人の 訪る者は鐘ばかり 数うる指も寝つ起きつ わしゃ照らされているわいな」

近江八景~大津絵踊り (舞:羽田、藤川、ブロック)
近江の名所を謡う「近江八景」。上方落語の演目「矢橋船(やばせぶね)」、「石山の秋月」、唐崎の夜雨で有名な「唐崎の松」、「三井の晩鐘」(三井寺)などが出てきます。

志賀の唐崎 (舞:塚田悠依乃)
近江の踊り。志賀の唐崎は夏越祓(なごしのはらえ)などの禊をする場所で松と月の名所です。

奴さん (舞:小柳)
お座敷の定番曲。江戸芸かっぽれ踊りの楽しい踊りです。

淡海節 (舞:中村)
滋賀県の民謡で近江の踊りです。

潮来出島いたこ でじま  (舞:塚田悠依乃、笑幸)
茨城県潮来発祥の地元唄で、利根川の船頭歌や都々逸のルーツの曲といわれています。
潮来節は、長唄「藤娘」の中にも引用されています。歌詞の二番には宇治も出てきます。

近江八景~大津絵踊り (舞:中村、小柳、伊東、磯辺、大迫)
普段は舞台の広さにより人数を変えます。先ほどは3人でしたが、5人の舞も披露しました。

大津絵賛歌 藤娘  (舞:全員)
公演会を親しんでもらえる様に作った歌と踊りです。

民俗芸能や舞が大好きな京都在住のカメラマン佐々木も全く知らなった大津絵踊り。
京都島原の葵太夫から、その存在を教えていただき、花街発祥のお面の日本舞踊「大津絵踊り」を知ることができました。


写真:大津の芸妓・笑幸さんと京都島原の葵太夫三井寺にて撮影

歌詞も滋賀に関するものが多く、とても興味深い舞。
「芸妓さんの舞」というと敷居を高く感じますが、非常にユーモラスで楽しい舞です。
一般の方、全く日本舞踊を習ったことがなくても大丈夫です。ぜひ一度練習に参加してみてください。


写真:大津絵橋 鬼の寒念仏

大津市無形民俗文化財 伝統芸能、郷土芸能
NPO法人「特定非営利活動法人大津絵踊り保存会」
〒520-0046 滋賀県大津市長等2丁目8-18
TEL 077-525-6078
FAX 077-525-6078
http://www.eonet.ne.jp/~ooooo/ootuetop.html

お稽古:円満院 第2第4土曜日 10時~12時
毎年11月定期公演会

「大津絵踊り」大津の花街発祥!お面の日本舞踊

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
毎日「京都散歩の旅」なカメラマン。
奈良・吉野アンバサダー。観光経済新聞、楽天トラベル等を執筆。聖地と舞が好き。民俗芸能や瀬織津姫研究中。
instagram @kyoto.photographer
https://earth-traveler.com/

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