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3年ぶりの開催直前!250年続くお旅まつり 曳山子供歌舞伎が、コロナ禍を経て模索するあらたな道とは?

更新日:2024/3/4 瀬尾 裕樹子
3年ぶりの開催直前!250年続くお旅まつり 曳山子供歌舞伎が、コロナ禍を経て模索するあらたな道とは?

三代加賀藩主、前田利常公が隠居先として選んだ石川県小松市。第一線を退いた利常公が文化を大変奨励したことから、裏千家発祥の地として今もお茶の文化が市民に定着していたり、全国的にも有名な九谷焼作家さんが多かったりと、知る人ぞ知る趣深い文化が根付く地域です。

そんな歴史古く文化的な地域で350年続いてきたお祭り、それが小松市最大のお祭りである「お旅まつり」です。そのお旅まつりがコロナ禍で開催できなかった期間を経て、2022年5月13日(金)〜15日(日)の日程で3年ぶりに開催されることになりました!

担い手問題など、伝統あるお祭りを持続的に継承していくための課題はどこの地域でも山積しているものと思いますが、小松も例外ではありません。

私は3年前から夫の地元である小松市に住まいを移した移住者ライターなのですが、お旅まつりが今年、コロナ禍を経てさまざまな課題を乗り越えお祭りを持続的に継続していくために新たなチャレンジをしていると聞いたので、お祭り直前の準備の様子と併せて取材してきました!

どこの地域でも大なり小なり課題はあるもの。お旅まつりのチャレンジがみなさんの地域のお祭りのヒントとなれば幸いです。

↓当日のレポート記事はこちら!

まちをあげて子供役者をプロデュース!お旅まつりの真髄とは

そもそもお旅まつりとは?という方もいらっしゃると思うので、簡単にご紹介できたらと思います。

小松市の街中にある莵橋神社(うはしじんじゃ)と本折日吉神社(もとおりひよしじんじゃ)の春の祭礼として350年続くお祭りで、御神輿や子供獅子、曳山の上で上演する子供歌舞伎などを供として各町内を渡御して回ります。

元々は御神輿や子供獅子だけだったのが、子供歌舞伎が演じられるようになって250年余り、曳山をもつ町内ではその町の女子を役者に稽古に励み、例年5月中旬の金曜日から日曜日にかけてのお祭り期間中、3日間で9回の上演を行います(2022年現在)。

また、子供たちが表舞台で歌舞伎を演じるために、五人衆や若衆と呼ばれるまちの大人たちは、稽古をつける師匠や三味線、義太夫、衣装、大道具を手配し、黒子を担い、3日間、子供たちが演じる舞台になる曳山をそれぞれの上演場所まで動かすという、まちをあげて子供役者をプロデュースするお祭りなのです。

現在、曳山を持っているのは小松市の八つのまち。そのうち毎年二つのまちがその年の当番町として子供役者を集めて歌舞伎を上演します。

今年の当番町は八日市町と寺町。当日は歌舞伎役者も顔負けの華やかな衣装に身を包み、しっかりとお化粧した子供役者たちが一番の見ものです。

▼お旅まつりの詳細についてはこちらの記事もどうぞ

250年続くお旅まつりの仕組みが風前の灯…!?次代に続く新たな担い手現る

子供役者を大勢の大人でプロデュースするのがひとつの大仕事でもあるお旅まつりですが、子供役者として舞台に立てるのは、「2年生から6年生までのそのまちに育っている女子のみ」と、これまで決まっていました。

しかし近年では、通りひとつ変われば違うまちとなるこの地域では役者を集めるのも難しくなっており、当番町に縁のある他のまち出身の小学生が舞台に立つ姿も見られるようになりました。

今年の八日市町曳山子供歌舞伎の子供役者

また、大人たちにも「五人衆」や「若衆」といった各世代で担う役割があります。

祭りの担い手となる適齢期の若い世代がまちを離れていることも多く、年齢と役割がうまく噛み合わないことも出てきています。

2018年 八日市町曳山子供歌舞伎世話人

そんな中、今年の当番町、八日市町ではコロナ禍で舞台に立つことが叶わなかった昨年や一昨年の当番町の子供たちも含めて今年の子供役者を構成したり、町外の若者や市立小松大学の学生として小松に住んでいる若手から希望者を若衆として迎え入れたりして、少しずつこれまでの担い手の仕組みを変えながらお祭りを存続させようとしています。

他地域のお祭りでもそうかもしれませんが、他のまちから担い手を迎え入れることに関して議論があることはお旅まつりも例外ではありません。しかし、こうした考え方は曳山を持っている各町ごとにも違っている模様。

八日市町の世話人、鵜川瞬也さんは、

「担い手不足で役者を立てられなかったり曳山を組み立てられなくなってしまうことはどこのまちでも課題となっています。担い手の仕事は口伝えで伝承されていく部分も大きいので曳山の組み立てひとつとっても、やらない年が続けば誰もできなくなってしまうことだってありえます。各町ごとにスタンスも様々ですが、まずは今年のような取り組みを自分たちのまちからやっていくことでそれが前例となり、お旅まつりに関わる他のまちでも続けるための議論がどんどん活発になればいいなと思いますね。」

と、課題がありながらもできることから前向きに取り組んでいるとのこと。

また、鵜川さんとお旅まつりのことを話すと

「続けるのは大変だけど、辞めちゃうのは簡単。」

という言葉をよく聞くのが印象的で、時代とともに何を変化させながら何を守っていくのか、自分たちのアイデンティティでもあるお祭りを継承していくためにはこうした議論が活発になることこそ大切なのだと考えさせられました。

本番まであとわずか!お稽古や曳山の組み立てで賑やかになってきた現地の様子は?

そんなお旅まつりも本番まであと数日…!
まちではいよいよ準備も佳境に入ってきました。

子供役者たちは師匠を迎えて4月中旬からほぼ毎日、学校の後にお稽古に取り組んでいます。
駅前にある「曳山交流館みよっさ」にお邪魔したところ、ちょうど八日市町の子供たちが稽古の真っ最中でした。

なかなか普段使うことのない難しい言葉を、師匠のお手本に合わせながら何度も練習し、身体で覚えていきます。

また、毎年バラしては組み直すことができる曳山の組み立ても始まっています。

装飾もたくさんあって荘厳な曳山が、釘を一本も使うことなく全て木を組むことで作られているなんてすごいですよね!

毎年、お祭りに向けて組み立てているこの風景を見ると、いよいよお祭りも近いなあ…!とワクワクしてきます。

予習してこそ楽しめる!今年のお旅まつりの演目は?

すでにご紹介しましたが、今年のお旅まつりで子供歌舞伎を上演するのは寺町と八日市町の二町。

お旅まつりの子供歌舞伎はそのストーリーも去ることながら、幼い小学生の台詞回しやそれぞれのまちごとに少しずつ異なる装飾が施された曳山そのもの、曳山という狭い舞台を駆使した演出や華やかな衣装など、鑑賞ポイントも盛りだくさん。

そのため、もし観に行く機会があるのなら、ある程度あらすじを予習してから行くと100%楽しむことができるのでおすすめです。お旅まつりの詳細を掲載しているこまつ観光物産ネットワーク「まるごと・こまつ・旅ナビ」には今年の演目のあらすじの他、役者さんの紹介や上演日程も掲載されているのでぜひチェックしてみてください!

2022年お旅まつり曳山子供歌舞伎演目

寺町 『男の花道』
八日市町 『絵本太功記十段目 尼ヶ崎閑居の場』
※詳細:こまつ観光物産ネットワーク「まるごと・こまつ・旅ナビ」

まちの企業が支えてきたお旅まつり。新たな仕組みで支援を募る

お旅まつりの話題で小松の文化的側面ばかりご紹介してきましたが、小松市は建設機械のコマツで有名な小松製作所を筆頭に、鉄工業や窯業、繊維産業など世界に誇る「ものづくりのまち」でもあります。
実は、小松の文化的側面は、歴史的に財を成してきた町人の旦那衆や、現代ではこうしたものづくり企業に大いに支えられてきました。

しかし、そうした小松全体をあげた支援の受け皿としてさまざまな役回りを担ってきた五人衆や若衆などのまちの大人が減ってしまった今、今年の当番町である八日市町ではこれまでのような各社を回って上演プログラムの裏に広告を載せるスポンサーの募り方ではなく、クラウドファンディングを使った新たな仕組みで支援を募り始めています。

クラウドファンディングの返礼品としては、商店が多いこのまちならではの和菓子やお米、ジャムなどのセットにはじまり、歌舞伎上演の前座的にまちの若衆などが行う「口上」で企業名を読み上げコマーシャルをするという画期的なリターンも…!

観光客としてお祭りの表面的な部分だけを見たのでは、ただただ子供たちの歌舞伎がすごいな、というくらいで終わってしまうかもしれませんが、お祭りを存続させるためのまちをあげての取り組みを知ったり、支援したりする中でお旅まつりに訪れてもらうことができたら、より一層、面白みも増すのではないかと思います。

クラウドファンディングのページではより詳しいお旅まつりの現状を読むことができるので、興味のある方は覗いてみてはいかがでしょうか。

▼READY FOR クラウドファンディングページ

『石川県小松市お旅まつりの伝統文化「曳山子供歌舞伎」を成功させたい!』

今年のお旅まつりは5月13日(金)〜15日(日)の3日間。すでに直前ではありますが、本記事がこれからお旅まつりに行こうという方や、今回のお旅まつりに来れないとしても、伝統あるお祭りを継承しようとする現地の様子を知って遠くから応援したいと思っていただいたり、また別の地域のお祭りに携わる方にとってもひとつの参考となったら嬉しいです。

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
生まれも育ちも神奈川県川崎市。元来はチャキチャキした神輿激しめのお祭り大好きっ子でしたが、結婚・出産とともに夫の地元である石川県小松市に移住。気候も地理も歴史も文化も全く異なる加賀百万石の地で、今やおっとりと風流な曳山舞台で行われる子供歌舞伎の虜になりました。

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