2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
山車が魅せる総本社の秋まつり
愛知県津島市。名古屋から電車に乗り30分弱で来ることができるこの街は、あの織田信長が重要視していた土地である。「信長の台所」との呼び名が付いており、尾張時代の織田家の経済基盤を支えてきたことで知られている。尾張と伊勢を木曽三川(木曽川、長良川、揖斐川)を通して結ぶ「津島湊」が置かれ、古くから舟運によって栄えてきた街だ。
この街はまた、全国の津島神社の総本社があることで有名だ。明治の神仏分離令の前までは「津島牛頭天王社」と呼ばれ、祭神の牛頭天王(スサノオ)を祭る「津島信仰」の中心地としてにぎわってきた。この津島神社を舞台にした秋祭り「尾張津島秋まつり」に、今でも当時の繁栄ぶりを感じることができる。
まだ残暑の残る10月はじめの土・日曜に、尾張津島秋まつりは行われる。本祭りが実施される日曜日、津島駅にお昼過ぎに降り立つと、まず駅前に連なるカラフルな山車に目を引かれるだろう。各町の山車の上にはカラクリが置かれていて、随所で披露される動きは見どころだ。もう一つ注目すべきパフォーマンスがある。前輪を浮かせ、山車が傾いたまま回る「車切」だ。女衆がお囃子(はやし)を奏で、男衆が勇壮に山車を回転させている様子には目を引き付けられる。
駅前での見せ場を終えた山車は、各町を練りながら津島神社へと進んでいく。午後3時ごろ、再び境内に集合した山車は、各町一斉にカラクリの奉納を行い見応えがある。また大太鼓を積んだ石採祭車(いしどりまつりぐるま)にも関心を寄せたい。津島神社の桜門前に立ち並び、互いに音を奏でている姿が美しい。鉦(かね)が打ち鳴らされ、どこかエスニックな情景が醸し出されるのもおもしろい。
帰り際、門前町を歩いていると変わったお菓子が売られているのが目に入ってくる。「くつわ」と「あかだ」と名の付く米粉でできたお菓子で、厄除けや無病息災のご利益があるらしい。お祭りを見て、縁起物を持って帰路に就くのも良いかもしれない。