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奇天烈斎様は本当にいた?! あの日見た龍の名前を僕達はまだ知らない。秩父の龍勢祭り

奇天烈斎様は本当にいた?! あの日見た龍の名前を僕達はまだ知らない。秩父の龍勢祭り

いよいよ秋も深まって参りました。
秋空と言えば?
そう!
ロケットですよね!(異論は受けつけません)

どうも。奇祭ハンターのMacです。
今回は秩父の手作りロケット祭り、「龍勢祭」(りゅうせいまつり)を紹介。

龍勢(りゅうせい)とは、10月の第二日曜日に椋神社に奉納する神事として、
代々伝承されてきた農民による手作りロケットのこと。
何でも「吉田龍勢保存会」の公式ホームページによると……。

NHKの取材班がアメリカ航空宇宙博物館の局員に龍勢の資料を見せたところ、非常な関心を寄せ、
もしも世界中の物理学者が吉田の龍勢を知っていたら、宇宙ロケットの歴史はもう10年早く始まっていただろう」と語ったそうです。

もしも世界中の物理学者が吉田の龍勢を知っていたら、
宇宙ロケットの歴史はもう10年早く始まっていただろう
」(!!!)

何やら早速、Xファイルめいて来ました。

また、この吉田の「龍勢」は、アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(通称「あの花」)の中でも、
物語を象徴する大事な場面で取り上げられ、それをきっかけに全国的にも有名になりました。

(1分9秒あたりのシーンです)

これは早速、行ってみるほかありません。
いざ!
池袋駅から特急レッドアロー号で約90分、西部秩父駅へ到着。


秩父駅はこんな感じ。駅の向こうにたなびく白煙はもしや……?! 急がねば!


オマツリ当日は「龍勢会館」までの直行便が出ています。


「龍勢会館」から会場までは歩いて15分ほどです。


道中でついに第一村人発見!

「ちょ、そ、その傷は? 誰に殺られた?」と思いきや、
ただの案山子でした。それにしてもその血糊……、バイオハザードかよ!
のどかな田園風景に何てものを仕込みやがる(こ、これが秩父!)。

ちょっとした小ボケも無事済んだところで、会場に到着。


なかなか予想以上に混んでます。

「〇〇流」と勘亭流で書かれたのぼり旗の風情、「これからやったるで!」感がたまりません。
どうやら旗は、「龍勢師」と呼ばれる職人の流派を示しているようです。
飛天御剣流を探してしまったアナタ、「るろうに剣心」の読み過ぎです。


会場である椋神社は神話の時代から続く由緒正しい神社。鳥居も大きいです。

そもそも「龍勢祭り」の起源は諸説あるのですが……。

その昔、日本武尊(ヤマトタケル)がこの辺りで道に迷っていたところ、
日本武尊が持っていた鉾(ほこ)から椋神社のほうへと光が発せられ、道標となったのだとか。
日本武尊を救ったこの光の故事にちなみ……、いつしか、時は下って江戸時代、
天正3年(1575年)には、手作りロケットである「龍勢」を打ち上げるようになったのだとか。

つまり、光を発した鉾の神話がいつしか……、手作りロケットを飛ばす神事へと変わり……。
って、いやいやいやいやいやいやいや。
どう考えても、飛躍あり過ぎ!!!

どうやら、江戸時代に革新を起こした天才がいたとしか思えません。
そう。あの男。
「キテレツ大百科」における奇天烈斎様のような……。
何故、彼の地に限ってこのような独特なイノベーションを遂げたのか、
この奇祭のガラパゴス的進化が何とも神秘的ですよね。


境内では神楽「釣り場」も披露されていました。


神社の本殿。赤と白のカラーリングがなかなかにインスタジェニックです。


神社の境内には「龍勢」の模型も展示されていました。


絵馬もポップでにぎやかです。「あの花」絵馬は800円で販売されていました。

さて、どうやらいよいよ「龍勢」が発射される模様です。


「龍勢」を担いで現場へと向かう「龍勢師」の方々。
この日のために一年を賭してきた、熱い男たちの背中には哀愁すら漂います。
脳内に「アルマゲドン」のテーマが流れて止まりませんが、
それではどうぞ!

別の「龍勢」ですが、もう一度、静画で細かく見てみましょう。


祝いの口上の後、爆音とともに「龍勢」が発射されました。行っけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


大体、300メートルぐらい上空まで上がった後、パラシュートが分離します。


そして放物線を描くように落下するタイミングで、煙を上げて落下傘が開きました。

この形状が首を垂れる龍に似ていることから、「龍勢」と名付けられたとか。
「龍勢」によって仕込まれる落下傘の数、煙の色、散らす火花の様子が変わったり、
様々のバリエーションの「龍」を楽しむことができます。


会場では「あの花」や吉田龍勢保存会のオリジナルグッズも販売されています。


「龍勢」の模型とともに、「龍勢サポーターズ」のお兄さんが懇切丁寧に解説してくれます。

何でも「龍勢」の制作費は約20万円。
予想より安いですが、龍勢師に人気が殺到しているため、むしろ予約が大変とのこと。

また、週末を利用して実質的な制作期間は約2カ月程度。
ただし、良い「龍勢」を作るための素材探しはオマツリ翌日から始まるのだとか。
そう考えると1年がかりの一大プロジェクトです。ああ、良い。このオマツリ感。

さて、それではお兄さんからの受け売りを恥ずかしげもなくそのまま披露しつつ、
オマツリジャパン的「龍勢」の見所を3つ挙げましょう。

●ポイント1 成功するとは限らない?!

火薬を使って竹筒にガスを充満させ、一気に放射することによって、発射する「龍勢」。
しかし、現在では法律によって試射を行うことは禁止されており、
発射が許されるのは「龍勢祭り」本番のみ。つまり、ぶっつけ本番!!

火薬の量の配合や天候の影響など、不具合で発射が失敗に終わることも普通にあります。
ロケットが理想通り飛ぶかどうかは、龍勢師たちの経験と熟練の腕にかかっているわけです。


最も理想的な成功パターンとされる「チョウナッ首」。


逆に打ち上がる前に爆発してしまった場合は「筒ッパネ」と呼ばれます。

こんな感じです。

もっともサポーターのお兄さんの解説によると、そこはあくまでお祭りの奉納神事。
例え打ちあがらなかったとしても、それもまた奉納ということで「成功」なのだとか。

●ポイント2 龍勢師の「技」を堪能せよ!

さて、「龍勢」はただ、竹筒を火薬で打ち上げるだけという単純なものではありません。
「龍勢師」の流派、その数は何と27流派
白煙を上げて、いかに勢いよく「龍勢」を発射するかまでが第一段階だとしたら、
頂点に達して分離し、落下傘を開くところが第二段階(いわば龍の「顔」に当たる部分)。

この第二段階でも、落下傘がふたつ開いたり、色煙が上がったり、花火が煌めいたりと、
流派によって多種多様な演出が施されるのです。

技名も「本もやし」「付けもやし」「分離」「唐傘」「花傘
グライダー」「パラグライダー」「ナイアガラ」……と多彩です。
プログラムを確認して、次の「龍勢」にはどういう技が仕込まれているかを
チェックしてみるのもいいでしょう。

「龍勢」を見る際には、ぜひこの「龍勢師」たちによる華麗な技にも注目してください。

●ポイント3 「ロケット見」を楽しむべし!

会場で有料の桟敷席は1000円ですが、無料スペースでも十分楽しむことができます。
ご当地ならではの出店もたくさん出ているので、
オマツリグルメに舌鼓を打ち、日本酒をかっくらいながら、

「すごい。今の、高くまで飛んだね」
「かぁぁぁ、惜しい。ちょっと、勢いが足りなかったかな~」
「お姉さん、かわいいね。どこから来たの?」
などと、野次を飛ばしながら、「ロケット見」と洒落こみましょう。


上州名物「焼きまんじゅう」は1本200円と、とってもリーズナブル。


ガッツリ派のアナタには栃木名物、猪鍋(+うどん)を。


締めのデザートは音楽フェスでも人気の「イチゴけずり」で(何と全部いちごのカキ氷!)

いかがでしたでしょうか。
「龍勢祭り」は毎年、朝8時~5時半ごろまで行われ、十数分おきに30数本のロケットが打ち上げられます。
お弁当と御座を用意して、いざ「ロケット見」に出かけてみては?

日時:10月第2日曜日
場所:埼玉県秩父椋神社
http://www.ryusei.biz/
(文・写真/Mac)

(オマケ)
旅の窓口となる秩父駅は、土産物コーナー、日本酒のカウンター、フードコート、
そして、何と温泉までもが整備されており、おすすめです。
もちろん、秩父名物「わらじカツ」だって食べれます。


秩父駅の建物内には、土産物コーナーにお酒の試飲カウンターまであり、シャレオツです。


秩父駅のフードコートと直結(画期的!)の温泉「祭の湯」。


秩父名物「わらじかつ丼」。並盛でも2枚ついてきます!(飯テロか!)
ふつうに食べた後は出汁をかけてお召し上がりください。

 

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この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
奇祭ハンター、美酒ナビゲーター。「毎月奇祭」を目標に奇祭旅を行い、お祭りやお酒の情報を挙げています。今までに50以上の奇祭を巡り、600種類以上の日本酒を飲酒。祭りがないときは大体、酒飲んでます。

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