2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
熱気あふれる近江商人の町
「三方よし」で知られる近江商人発祥の地、滋賀県近江八幡市。毎年3月中旬、同地の日牟禮八幡宮(ひむれはちまんぐう)を舞台に催されているのが「左義長まつり」だ。その始まりは戦国大名、織田信長のお膝元である安土。信長自身もこの祭りを大層気に入っており、町衆に交じって踊り楽しんでいたとされる。彼の死後、この地に移り住んできた人々によって新たに始められた催しが、現在でも毎年続けられている。
この祭りの見どころは、なんといっても「ダシ(乾物で作られた装飾)」やたいまつ、色紙などで構成された「左義長」。他の祭りでいう神輿(みこし)に近いこの巨大な造形物が、近江八幡の町を練り歩く。それを担ぐのは、町に住む若者たち。屈強な青年からあどけない少女、子どもたちまでが「チョウヤレ、チョウヤレ」の掛け声で力を合わせ、数時間に及ぶ「渡御出発」に取り組む。
しかし、これがなかなか一筋縄ではいかない。広い車道を悠々と歩いていたかと思いきや、今度は狭い古民家街を進むことになったりする。大人数十人でやっと運べるほど大きな左義長にとって、決して楽な道のりではない。その際は左義長が倒れないよう、担ぎ手や周辺の支持者たちが一丸となって支え合う。その熱気はすさまじく、まだ肌寒い3月だというのに担ぎ手たちの体からはうっすら湯気が出るほどだ。
そのようにして2~3時間近く、左義長は近江八幡を行く。終り頃になると、青々とした空の色が暗くなり、そこからまぶしい夕日が差し込んできて左義長を照らす。その非日常で神秘的な光景は見事なもので、なかなかお目にかかれない。誰もが写真に収めたいとすら思えるだろう。
そうしたさまざまなドラマを描き、それぞれの左義長は神社へ帰っていく。とはいってもそれで終わりではなく、その後も「ダシコンクール」や「自由げい歩」「ケンカ」などのイベントが目白押し。最終日に「奉火」を行い、左義長を業火に捧げることによって、この祭りは終わりを迎える。