2023年、山形県酒田市の花火大会が4年ぶりに復活!しかも、2019年まで親しまれた「酒田花火ショー」から、新たに「全国二尺玉花火競技大会」に転換して開催されます。
「酒田花火ショー」は全編音楽つきスターマインで構成された、幅広い年代に楽しめる花火大会でした。それをあえて「二尺玉花火競技大会」へと変貌させたその理由は? 新しい「酒田の花火」はどんな花火大会になるの? 実際に酒田市に伺って、酒田の花火実行委員会の方に直接教えていただきました!
目次
2023年、国内唯一の「二尺玉花火競技大会」が誕生
2023年の「酒田の花火」開催概要は以下のようになっています。
「酒田の花火 全国二尺玉花火競技大会」
開催日時:2023年8月5日(土)19:30~21:00
※荒天の場合、翌6日(日)に順延。
会場:最上川河川敷特設会場
そもそも二尺玉花火とは?
直径が約2尺=60cm、重量約70kgもある大型の花火玉で、20号玉とも呼ばれます。下の図にあるように、打ち上げたときの到達高度は約500m、開いた花火の直径は約480m!
実際に打ち上げたときには、夜空にゆっくりと伸びていく光跡、ズシンとお腹に響く開発音(花火が開くときの音)など、大きく華やかで、引き込まれるような迫力があります。
尺玉(10号玉)までは比較的多くの花火大会で打ち上げられますが、二尺玉となるとぐっと数が減ります。まして、花火の質や美しさを競う花火競技を二尺玉で行うのは、現在みられる花火競技大会では「酒田の花火」が国内唯一となります。
「酒田花火ショー」から「二尺玉花火競技大会」への歩みについて、酒田の花火実行委員で、酒田市交流観光課の大井庄栄さんにお話を伺いました。
「花火ショー」から競技花火に転換した理由とは?
――なぜ「酒田花火ショー」から「二尺玉競技花火大会」に移行することになったのでしょうか?
「酒田花火ショー」として長年続いてきましたが、その中で、市民の団体から二尺玉花火競技大会の開催について提案がありました。
「酒田花火ショー」が開催される最上川河川敷は広大で、これまでも二尺玉3発同時上げなどの実績があります。でも酒田市で2つの大きな花火大会をする、ということは難しい。検討した結果、二尺玉花火競技大会としての開催を選択することになりました。
酒田市の花火大会は、昭和4年の酒田港の第2種重要港湾指定を記念した花火打上げ以降、夏祭りのイベントとして定着してきました。特に近年の音楽に合わせた「花火ショー」はみなさんから評価をいただいていたし、この内容でもたくさんのファンがいらっしゃいました。
一方で、「市民花火」として、打上げ経費は市内の企業を中心とした協賛金と市民募金で賄っていましたが、経済環境や人口の減少等から、この方法でやりきるのは難しくなってきたというのが背景にあります。
その中でも、花火で人を呼ぶことができ、開催経費を賄える花火大会を作っていくにはどうしたらいいか、という話を重ねてこの結論に至りました。
――いつごろからそういう話が出ていたのでしょうか?
令和元年(2019年)の「酒田花火ショー」のあと、令和2年はコロナ禍で中止となったなかで、二尺玉花火競技大会のプランが出てきました。
コロナ禍での中止をはさんで、令和3年にプレ大会を開催、令和4年から本大会に移行、という予定でした。
ですが令和3年もやはりコロナの影響で中止になりました。
そして令和4年にプレ大会として、最後の「酒田花火ショー」を企画しましたが、開催日前々日の豪雨による最上川の水量増が影響して、予備日まで含めても開催できるという見通しが立たなかったので、中止に。
そのため、プレ大会を経ず、令和5年に「全国二尺玉花火競技大会」本大会を実施する運びになりました。
――あえて二尺玉競技を選択した理由は?
単純な競技大会では他の花火大会と差別化を図れません。そこで「二尺玉の競技という、今、全国でほかにやっているところがない競技を実施しよう」という話になりました。
二尺玉の競技ができるのは、最上川があり、広大な打ち上げ場所が確保できる酒田ならではだろうと。
――保安距離の関係で、二尺玉は他の花火より離れたところから上げることが多く、意外に小さく見えることがありますよね。酒田の場合はそうはならないということでしょうか?
そうですね。酒田では、スターマインと同じ場所から二尺玉を上げることができます。これだけ町に近く、なおかつこれだけの広い展開幅で、スターマインと二尺玉の競技大会を一緒に見られる場所は全国探しても他にないと思います。
酒田に活きる進取の気性が「酒田の花火」の新展開を生んだ
――個人的に、「酒田花火ショー」のあの幅広い年代が楽しめる感じが好きだったのですが、「酒田の花火」に引き継がれる部分はあるのでしょうか?
二尺玉競技の前後や合間に、音楽つきスターマインを入れるので、今までの花火ショーの要素を期待されるお客様にも楽しんでいただけるのではないかと思います。
二尺玉の競技大会で、最上川の川幅、酒田の地形を活かしたダイナミックな花火を体感していただく一方で、港町酒田としてこれまで培ってきた、酒田市民の気風を引き継ぐようなところも残しながらやっていければと思っています。
――酒田市民の気風とはどんなところでしょう?
進取の気性、先端のものを取り入れる気概を、酒田の商人の気質としてもっています。新しいものを取り込んでやっていくというのは、港町酒田ならではの気質なのかなと。
――それが、二尺玉競技という他でやっていない形式をやるという原動力になっているのでしょうか。
そうですね。よそと違うもので、見る人の印象に強く残るようなものをつくろうという気概が酒田にはあります。
去年中止になった悔しさもバネにして今年なんとか成功させたいので、ぜひ多くの方に来ていただき、全国唯一の二尺玉競技を見ていただきたいです。
画像提供:酒田の花火実行委員会
二尺玉花火競技の見どころは?
ここまで酒田の花火実行委員会の大井さんに、花火競技大会への転換の経緯や酒田市民の花火への思いを伺いました。
ここからは、「酒田の花火」の具体的な見どころについてご紹介していきますね。
まずは二尺玉花火競技大会について。
二尺玉=直径約60cmの花火玉と言われてもピンとこない方は、下の写真をご覧ください。山形県唯一の花火製造業者で、酒田市を拠点としている安藤煙火店で製造中の二尺玉です。
二尺玉花火競技には全8社が出品し、各社1発ずつを打ち上げます。
そもそも二尺玉を打ち上げることができる煙火店は全国でも十数社と限られています。それらの煙火店に実行委員会側から声をかけ、スケジュールなどの都合もあり参加を決めたのが、下記の8社。
・アルプス煙火工業株式会社(長野)
・阿部煙火工業株式会社(新潟)
・伊那火工堀内煙火店(長野)
・響屋大曲煙火株式会社(秋田)
・株式会社紅屋青木煙火店(長野)
・根岸火工有限会社(埼玉)
・新潟煙火工業株式会社(新潟)
・有限会社菊屋小幡花火店(群馬)
あら? 地元酒田の安藤煙火店の名前が入っていませんね?
安藤煙火店は、標準審査玉(※)を担当されるそうです。
※花火競技大会で競技の最初に上げる、審査の基準となる玉。
つまり、8社+安藤煙火店で合計9社の二尺玉を見ることができるのです。
一度に9社の二尺玉が見られるというのは、まさに日本で唯一の機会。
審査員は、酒田市の丸山至市長をはじめ、酒田の花火実行委員長など酒田市の方3名と、花火評論家の奥村純さん(審査委員長)、花火プロデューサーの穂戸田勇一さんの計5名。
そしてその審査結果は、花火大会当日、「ゲストスターマイン」の後に公表されるそうです!
え?「ゲストスターマイン」って?
はい、それはこれから説明していきますね!
期待が膨らむ競技以外のプログラム!
競技以外のプログラムはどうなるでしょう?
オープニングやグランドフィナーレには、もちろん安藤煙火店によるスターマインが上がります。これまでの「酒田花火ショー」を担い、新生「酒田の花火」に誰よりも力を入れておられる煙火店だから、そのプログラムには期待しかありません!
そのほか、スペシャルスターマイン「酒田市民花火 酒田の夜」は、秋田県の北日本花火興業と小松煙火工業が担当。
北日本花火興業と小松煙火工業は、「酒田花火ショー」時代から参加しておられました。
競技に参加されない煙火店さんの花火が見られるのも、花火ファンにとっては嬉しい要素。ここでは二尺玉はありませんが、尺玉10発を含むスターマインになるそうです。
さらに「ゲストスターマイン」があるのですが、こちらも凄い。紅屋青木煙火店、伊那火工堀内煙火店に加え、競技には参加していない齊木煙火本店(山梨)がコラボレーション!
このスターマインは紅屋青木煙火店と伊那火工堀内煙火店の二尺玉各2発(計4発)を含む、超豪華なプログラムになる予定です!
生まれ変わった「酒田の花火」を見に行こう
「酒田花火ショー」として確立していたスタイルをあえて転換し、国内唯一の花火競技大会を目指した思い切りのよさが、「酒田」がもつ気風。
新しい挑戦を始めた「酒田の花火」、その渾身の第一歩をぜひ現地で体感してみてください!
観覧席について
「酒田の花火」は両羽橋~最上川河川公園付近までを有料観覧会場とし、スワンパーク付近から下流側河川敷を無料エリアとしています。
有料観覧席はかなり広いエリアを占めており、見やすい席なので、やはり有料観覧席の方が落ち着いてゆっくり楽しめます。
チケットは「チケットぴあ」で販売中です。すでに多くの席種が完売しているので、ぜひ早めにご購入を!
アクセスについて
車の場合:日本海東北自動車道 酒田ICから車で約10分。当日は交通規制があり、混雑も予想されるので注意してください。
有料観覧席購入者には個別に駐車場が割り当てられます。
公共交通機関の場合:JR酒田駅から徒歩約40~50分。行きは市営バス「るんるんバス」の利用が可能(最寄バス停:両羽町〈りょううちょう〉)。
帰路は会場から酒田駅まで臨時シャトルバスの運行予定あり。