山形県酒田市で長く親しまれてきた「酒田花火ショー」。それを「二尺玉花火競技大会」に転換すると決まって初めての「酒田の花火」が2023年8月5日(土)に実施されました。果たしてその内容、実際の花火大会の様子は? 実行委員会に事前取材もした筆者がレポートします。
目次
2023年から二尺玉花火競技大会へ転換
なぜ人気のあった「酒田花火ショー」から、あえて二尺玉花火競技大会に転換したのか? それについては、ぜひ下記の記事をご覧ください。
並々ならぬ決意をもって、「酒田だからこそできる」国内唯一の二尺玉花火競技大会に舵を切った「酒田の花火」。
※二尺玉=直径約60cmの花火玉で、打ち上げ高約500m、上空で開花した時の直径は約480mの大型花火。
上げるのも難しいと言われる二尺玉はすべて無事に上がるのか?
そしてその内容は?
観客の反応は?
さまざまな思いを抱えつつ迎えた8月5日は、第1回開催を祝うかのような、完璧なまでの好天に恵まれました。
いよいよ「酒田の花火」の幕が開く!
観覧会場の最上川河川敷は緑が美しく、花火会場にうってつけの広さ。
見事な晴天で暑さは厳しかったですが、ひとまず天候には問題なさそうです。
日もほどよく落ちてきました。立ち並ぶ露店が色を添えるのが、酒田独特の風景。
そして19:30。いよいよ「酒田の花火」がスタート。
カウントダウンのあとに流れたのは津軽三味線の響き。MONKEY MAJIKと津軽三味線の吉田兄弟のコラボ曲「CHANGE」にのせて、オープニングスターマインが始まりました。
「復活」をテーマに、800m超のワイドスターマインを展開。担当は、地元・酒田の安藤煙火店です。
オープニングとしてはなかなか渋い選曲だと思いましたが、そのタイトルや和洋入り混じった独特のテイスト、津軽三味線の音色などが、そこに込められた想いを感じさせます。
粒のそろった美しい花火がワイドさを活かして整列!
注目の二尺玉競技開催!全作品をご紹介
続いてはいよいよ二尺玉花火競技大会に突入です。
4年ぶりの開催の成功と、直前で中止となった昨年の無念が払しょくされることを願い、私も緊張してきます。
最初に打ち上げるのは、安藤煙火店による標準審査玉。この標準審査玉の点数を基準に、競技玉の点数を決めていきます。得点は74点と出ました。
競技に参加した煙火店は8社。以下、「煙火店名/花火師名/玉名」の順に記載していきます(敬称略)。
■標準審査玉:安藤煙火店(山形)/安藤孝二/昇曲導付 三度変化芯菊先五度変化菊
花火玉の玉名はまるで漢文のようですが、玉の変化や特徴をそのまま示したものが多いので、玉名で大体どんな玉が上がるのかがわかります。
この玉の場合は、芯入(真ん中に小さな円があり、全体で二重円になっている花火)で、内側の芯の部分が3回変化し、親星(花火の外側の星)の先端が5回変化するということ。写真だと変化がまったくわからないのですが(泣)
以下、競技順に掲載します。
1.新潟煙火工業(新潟)/小泉欽一/錦冠千輪
2.アルプス煙火工業(長野)/矢沢武彦/昇り曲導付 八重芯虹入り万華鏡
3.根岸火工(埼玉)/根岸大夢/昇銀龍大輪五色千輪牡丹
4.伊那火工堀内煙火店(長野)/柴田武晴/昇り曲導付 三重芯金閃大冠先黄点滅
煙が溜まることもなく、見え方もとてもクリア。迫力ある二尺玉が開くたび、観客席からも驚きの声や歓声が上がりました。
5.紅屋青木煙火店(長野)/青木昭夫/八重芯錦冠菊花模様咲き
6.阿部煙火工業(新潟)/阿部友希/昇曲導小花咲八重芯金閃冠
7.響屋大曲煙火(秋田)/齋藤健太郎/昇小花十五段付 八重芯光のウェーブ
8.菊屋小幡花火店(群馬)/小幡知明/里山の忘れ柿
どれも失敗のない、迫力ある美しい二尺玉でした。
また、二尺玉というとまだバリエーションが少ないように思っていたのですが、芯入あり、千輪あり、錦冠に時差式と、それぞれ個性的な花火を楽しませていただきました。
審査結果は大会中に発表されましたが、優勝は一番手の新潟煙火「錦冠千輪」、準優勝は最後の菊屋小幡花火店「里山の忘れ柿」。はからずも千輪花火がツートップとなりました。
できれば、後日HPなどで、審査理由などが公開されるとなお嬉しいです。どれも素晴らしい作品だったので、おそらく僅差だったのではないかと想像します。
現在、二尺玉を製造している煙火店は十数社(一説では14社とも)と言われていますが、この競技会を機にさらに多彩な二尺玉が生まれたり、二尺玉を製造する煙火店が増えたりすることを期待したくなります。
伝説になる!?人気煙火店のコラボスターマイン
まずは競技花火をご紹介しましたが、もちろん競技だけでなく、かつての「酒田花火ショー」を思わせる音楽つきのスターマインも披露されました。
酒田市民花火「酒田の夜」
競技8社を前半と後半に分け、間にスペシャルスターマイン「酒田の夜」を打ち上げました。
「大曲の花火」が開催される秋田県大仙市に拠点を置く、小松煙火工業と北日本花火興業の担当です。
ちなみに「酒田の夜」とは曲名で、レトロな演歌調(昭和歌謡?)の曲。
ゆったりした曲調に合わせ、余韻を残すように花火もゆっくりしたテンポで上がりました。
「酒田花火ショー」でも定番だった水中花火も上がります!
手前の屋台の灯りに負けないカラフルさ!
奇跡のコラボレーション2023 Change!!
花火大会のスターマインは、各煙火店ごとに打ち上げられることが多いのですが、今回は県外の人気煙火店3社のコラボスターマインが披露されました。
齊木煙火本店(山梨)は、「聖礼花」に代表される美しい形状と、繊細で独特のパステルカラーの発色が人気の煙火店。
二尺玉競技にも参加している伊那火工堀内煙火店(長野)は、ドラマチックなスターマインの構成で、各地の大型花火大会のクライマックスを任されています。
同じく二尺玉競技にも参加の紅屋青木煙火店(長野)は、花火の進化に大きく寄与した「花火の神様」青木儀作氏の流れを汲み、全国の花火競技大会でも受賞多数。花火による繊細な音楽表現(いわゆる音ハメ)も見事です。
その3社がコラボするというのですから、これはもう伝説級!
曲は、ゆずの「翔」。
恥ずかしながら、私はどの煙火店の玉か即座に判別できるほどの目利きではないのですが、わかる人にはどういう組み合わせで上がっていたのかもわかると思うので、コアなファンにとってはそういう楽しみ方もできるプログラムだったと思います。
伊那火工堀内煙火店と紅屋青木煙火店による二尺玉も各2発、計4発上がりました。
最後は三重芯の二尺という豪華な対打ちで締めくくりました。
フィナーレは地元安藤煙火店の二尺玉が轟いた
そして最後を飾ったのは、やはり地元の安藤煙火店でした。ラストは約1.5kmという、全国でも有数のワイドさを誇るスターマイン。
流れる曲は「虹」(菅田将暉)。そして夜空に花火が虹を描きました。
2曲目はインストゥルメンタル曲に移行。
ゆったりしたリズムの雄大な曲に乗せて、横幅をめいっぱい活かしたワイドな打ち上げの連続!
視界がこれでもかというほど鮮やかな花火に埋め尽くされ、圧巻。
最後は眩しいほど金色の花火の連打。そして、雲のような光跡が薄れたところに、すーっと3筋の光が昇り…
広い打ち上げエリアを誇る酒田だからこその、二尺玉3発同時打ち。
一呼吸遅れて響く開発音が、すべてのプログラムの終わりを告げます。
大きな拍手と歓声が響く中、「酒田の花火」は終了しました。
アクセス・会場の様子など
アクセスについて
今回は、有料席にはすべて駐車場が割り当てられており、また車以外の人には酒田駅発着の無料バスが運行されるなど、観覧者のアクセスに配慮されていました。
花火大会終了は20:45頃でしたが、帰りのシャトルバスにもほどなく乗ることができ、酒田駅発21:40の鼠ヶ関行きに乗車できました。なお、最終便は鶴岡行き22:25発の臨時列車でした。
有料観覧席について
有料観覧席は、河川敷と堤防斜面を広く利用して設置。堤防上段にはカメラマン席があり、今回はこちらで撮影させていただきました。
最後に
天候が良かったうえに、程よく風も吹き、煙の滞留もほとんどないという最良のコンディション。最初から最後まで素晴らしい花火を堪能することができました。
気になったことと言えば、1つ1つのプログラムの間が若干長かったかな?(安全上の理由かもしれません)ということと、花火を見慣れている人にとっては興味深い内容でしたが、単純に花火を楽しむために来た人にこの特殊性が伝わったのかな?ということ。
そこは、酒田の市民の方々のお声から、必要なところは改善されていくのだろうと思います。
他にない、新しい花火大会に舵を切った「酒田の花火」。今後のさらなる発展を期待します!