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平均年齢55歳以上のお祭りオヤジたちがクラファンに初挑戦! 南大阪の祭りに根付くDIY精神とは!?

平均年齢55歳以上のお祭りオヤジたちがクラファンに初挑戦! 南大阪の祭りに根付くDIY精神とは!?

皆さんは、大阪南西部に伝わる「泉州音頭」というハードコアな盆踊り文化をご存知でしょうか。大阪南西部、堺市、高石市、泉大津市、和泉市、忠岡町、岸和田市、貝塚市、熊取町、泉佐野市、田尻町、泉南市、阪南市、岬町の13市町(9市4町)からなる泉州地域、俗にいう”ディープサウス”エリアは、激しいやり回しでお馴染みの「岸和田だんじり祭り」、超巨大なふとんを逆三角形に積み上げて担ぐ「ふとん太鼓」など、熱狂的なリアル祭り文化が残る地帯です。

そして泉州は盆踊りも盛んな地域。民謡研究家の右田伊佐雄氏は『大阪府の民謡 民謡緊急調査報告書』の中で、「摂津・河内の凌ぐのが泉州で、”盆踊りの宝庫”と呼びたいほど(盆踊りの)数が豊富である」(原文ママ、カッコ内筆者)と述べています。そんな、数ある盆踊りの中でも現在主流を占めているのが「泉州音頭」。滋賀県発祥の「江州音頭」をルーツに持ち、泉州地域に定着して独自発展、府内の「河内音頭」といった有名な盆踊りとも違う、昔ながらの音頭の味わいを残した、独自の盆踊り文化を形成しています。

オマツリジャパンでも、泉州音頭の音頭会(地域の盆踊りの会場に呼ばれて音頭を演奏するグループ)の一つである「泉州音頭 宝龍会」に何度か取材を試みてきました。

東京イベント開催記念! 大阪のディープサウスで人々を熱狂させる盆踊り「泉州音頭」とは何なのか!? 実際の音頭取りに聞いてみた【前編】

東京イベント開催記念! 大阪のディープサウスで人々を熱狂させる盆踊り「泉州音頭」とは何なのか!? 実際の音頭取りに聞いてみた【後編】

普段は、夏の盆踊り期間に、地域の盆踊り会場で音頭を演奏することを主の活動としている彼らですが、2019年には関東での泉州音頭の知名度ゼロという状況で出張公演を成功させたり、コロナ禍になってからは、オンラインでの盆踊りイベントや、感染対策をほどこした横浜での公演を試みるなど、意欲的な挑戦を続けている音頭会でもあります。

あの泉州音頭がまた関東に襲来! 「センシュウ・ナイト・ヨコハマ」イベントレポート

宝龍会の音頭の様子。

そんな「泉州音頭 宝龍会」が、2021年10月からなんとクラウドファンディングをスタート。コロナ禍で資金難になっている状況の中(会の運営費は夏の盆踊り大会のギャランティでまかなわれるため、コロナで盆踊り大会がなくなると、収入がゼロになってしまう)、2022年の会発足20周年記念イベント開催に向けて、クラファンに乗り出したようです。

画像:Motion-Gallery

盆踊り大会が開催されてないことは、一つの音頭会の運営を揺さぶるだけでなく、ひいては泉州地域での盆踊り文化の消滅という危険性にも直結する大問題です。泉州に限らず、全国各地の盆踊り主催者の皆さんが試行錯誤を繰り返す中、今回のクラウドファンディングの試みは、祭り文化復興のヒントになるのではないか? そう思った筆者は、さっそく「泉州音頭 宝龍会」でクラウドファンディングを企画した、宝龍弘丸(ひろまる)さんにインタビューを行いました。

聞き手=オマツリジャパン編集部 小野和哉

誰もクラファンを理解していない状態からのスタート

小野
小野:
今回「クラウドファンディング」に挑戦しようと思った理由やきっかけは何でしょうか?

弘丸
弘丸:
どっちにしろ寄付集めはするつもりでいました。泉州では祭や盆踊りを開催する時に寄付集めをする文化があります。

泉州音頭に限らず、お祭りは基本的に地域の人などの寄付(御花)によって成り立っていることが多い。また泉州音頭では、盆踊りの参加者がひいきの音頭とりにポチ袋で御花を寄付するという文化もある。さながら、少額クラウドファンディングといったところ。(画像:@signsshu)

弘丸
弘丸:
でも今回はコロナ禍という特殊で暗い世であるため、もっと大きな打ち上げ花火の様な方法は無いかと模索している最中にクラウドファンディングという物を知り、実行に踏み出しました。
話題性抜群、広範囲への広報にもなり、お金も集まるかも知れない、と今回のチャレンジにピッタリやと感じています。大阪音頭界で初めての試み、という事も重要な要素です。
宝龍会の軍隊並みの行動力を世に知らしめる効果もあります。

軍隊並みの統率力で、町中にクラファンのQRコードを印刷した看板を設置したり、会員の車にシールを貼ったり、宣伝活動を展開。

小野
小野:
ぐ、軍隊……(少しひるみながら)。初めてのクラウドファンディングで大変だったことは何でしょうか。

弘丸
弘丸:
まず自分自身を含めて、クラウドファンディングのシステムを理解する事が大変でした。
会員には年配者も多く、全員で動ける様にするまでの説明に大変苦労しました。自分のアカウントを作成するための説明文書を作り、それぞれが自分で操作をしてアカウントを作成してもらい、やり方を覚えさせました。私自身も全く理解してなかったので、その都度モーションギャラリー(今回利用したクラウドファンディングのサービス)とメールをやり取りして教えてもらいながらのスタートでした。会員には全てを説明せず、今やるべき事だけを理解して動いて貰うようにしています。

宝龍会の面々(一部を除く)。ご覧の通り、平均年齢はやや高め。大阪の音頭取り全体の高齢化も進んでいるという。

小野
小野:
新しいことに挑戦する際は、メンバー全員の合意を得ることが苦労しそうですね。日頃からの信頼関係を築いていくことが大事ですし、その上で少数精鋭で動くことで、スピード感のある動きができそうですね。クラウドファンティングによって実現したいこと。資金を稼ぐほかに、期待したいことはありますか?

弘丸
弘丸:
目標達成まで、まだまだ遠い道のりですが、今まで届く事のなかった人たちまで話題として広がってくれれば良いと考えています。成功できれば、お金が入るだけでなく、多くの人たちにも宝龍会の事を認知してもらえるメリットがある様に思います。ひょっとしたら、そっちの効果の方が後々に活きてくるのかも知れません。

小野
小野:
クラファンはやっぱり認知を広げるという効果が期待できそうですよね。

愚痴を言う前に自分たちで何ができるか考えたい

小野
小野:
昨年にはオンライン盆踊り大会にも挑戦していますが、新しいことに挑戦し続ける理由や原動力はなんでしょうか。

コロナでも音頭を止めるな! 南大阪の祭り好きオヤジたちがオンライン盆踊りに挑戦する理由(6/6にイベント開催)

弘丸
弘丸:
コロナ禍での不自由を愚痴っているのをよく見聞きしますが、私たちはその時々に出来るやり方で行動し続けることの方が重要と考えています。
使えないなら使える場で・演れないなら演れる方法を・出来る範囲で考案して実行に移します。
Keep on moving!
です。

小野
小野:
突然軽快なフレーズが踊りましたね。しかし、それもまた、地域の人たちが自らの自力で祭りを開催するというDIY精神が根付いている泉州ならではの発想かもしれませんね。コロナ禍が二年間続いていることで、南大阪の盆踊り大会はどのような状況になっていますか?

弘丸
弘丸:
もう丸2年、盆踊り大会が全く開催されていません。音頭会は資金難です。
2年間置きっぱなしにしている機材がこのタイミングで潰れてしまうと、買い直しが出来ず、辞めてしまう会もあるかも知れません。稽古場が確保出来なくなってる会もあるでしょうし、2年間も本番が無ければ、稽古も中断している会も有るかも知れません。
小さな自治会が主催している盆踊り大会ばかりですので、2年もの完全中断は、その自治会から盆踊り大会が無くなってしまうのに充分な年月です。多かれ少なかれ、何らかの悪影響があるでしょう。

ささやかな盆踊り大会の灯火が、来年には消えてしまう可能性もある。

 

小野
小野:
祭りの場を用意する自治会と、祭りの場を盛り上げる音頭会、それぞれに打撃があるということですね。その問題を打開するために、今回のクラファンをはじめ、宝龍会としては、どのような行動を起こしていますか?

弘丸
弘丸:
稽古場の確保費・音響機材の置き場費・機材のメンテナンス費・イベントの開催費など、継続する出費に関しては、会員一同でお金を出し合ってしのいでおります。稽古場は使える時間帯に制限が出てるので、使用できる範囲内で稽古しています。でも、10回の稽古よりも一回の舞台、と言われるほど、本番の櫓というのは音頭とりのスキルアップに大事な物です。コロナ禍で音頭とりのスキル低下が生じるのは確実です。
25年程前の『O-157騒動』での盆踊り中止をキッカケに、泉州の盆踊り大会は半減しました。今回の『コロナ騒動』でも、消滅してしまう盆踊り大会は確実にあるでしょう。

泉州の典型的な盆踊り大会の様子。

小野
小野:
いま、お祭り好きや、盆踊り好きの人たちに期待したいことは? どのような応援が求められていますか?

弘丸
弘丸:
とりあえず、宝龍会のクラウドファンディングを応援して下さい! そして、記念イベント(2022年6月26日)に参加して下さい! イベントで楽しんでもらえたなら、次は泉州の盆踊り大会に遊びに来て下さい。
同じ音頭だけで、同じ踊りを数時間ノンストップで踊る盆踊りです。泉州音頭を好きになってもらい、現地に遊びに来てもらうことが最大の支援です。

泉州の盆踊り大会の一幕。このような風景が早く戻ってきてもらいたい。

小野
小野:
あらためて、ズバリ「泉州音頭」の魅力とは?

弘丸
弘丸:
遥か昔から変わらない唄と踊り・櫓での所作などの形式美が、行政などの力を借りる事なく現代もそのまま受け継がれていることです。

小野
小野:
御花がヤグラに伸びる紐を伝って音頭取りの手に渡る泉州ならではのシステムはすごいですよね。さながら、人力スーパーチャット。そういう昔ながらの独自文化はぜひ残ってもらいたいものです。2022年の夏に向けての意気込みは。コロナがおさまったらやりたいことなど、最後に一言いたたけますか。

弘丸
弘丸:
『やったるで!』という気分です。
今年はだんじり祭が一部の地域で行われましたが、心配されていたクラスターも殆ど発生しませんでした。ですから来年は殆どの行事が通常通り開催されるのではないかと思います。宝龍会の予定は、TwitterFacebookページに必ず載せますので、皆様ぜひ遊びに来て下さい。
そして!
今回のクラウドファンディングへの応援を宜しくお願いします。ストレッチゴールも達成させて、関東公演を盛大に開催させましょう! ノンストップ4時間の盆踊りイベントを櫓をブッ立ててやりましょう!

泉州音頭 宝龍会のクラウドファンディングはこちら!

大阪の音頭取りたちを支援して、関東に再び召喚しよう!

2019年に墨田区で開催された『泉州ナイト』の模様。あの伝説を再び!

今回彼らが目的としているのは、開催を予定している2022年6月26日(日)『発会二十周年記念イベント』の資金を集めること。さらにストレッチゴールとして、2019年に実現した東京公演の再演を目指しているそうです。

各地のお祭り文化を脅かしている今回の新型コロナウイルス感染症。まずは現地のお祭りに参加して応援したいところですが、祭り開催が叶わない今、お祭り主催者が実施しているクラウドファンディングやオンラインイベントに参加するというのも、応援の第一歩として、いいかもしれませんね。

<泉州音頭 宝龍会 発会二十周年記念イベント>
日時:2022年6月26日の日曜日(正午開演17時頃終演予定)
場所:大阪府貝塚市のコスモスシアター中ホール。(無料大駐車場有り)
参加費:無料
※踊りの制約は全くありませんので、好きな衣装で好きな踊りを楽しんで頂ければ結構です
※公演日程もコロナの感染状況により変更される可能性があります。
※東京公演は開催日や規模などは未定です。

この記事を書いた人
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