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「遠山郷の霜月祭り」神楽歌がこだまする秘境の祭|観光経済新聞

2020/6/20
2020/7/7
「遠山郷の霜月祭り」神楽歌がこだまする秘境の祭|観光経済新聞

2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)

神楽歌がこだまする秘境の祭

カメラに染みついた燻煙(くんえん)の香り。それを嗅ぐたびに楽しかった祭りの熱気を思い出す。

信州の最南端に位置する遠山郷は、毎年12月になると地区のあちこちから神楽歌が聞こえてくる。集落ごとに祭られた小さな神社。その社殿の中で竃(かまど)に薪(まき)をくべてお湯を沸かし、八百万の神々を迎え、神楽を舞ってもてなす。薄暗い社殿の中、夜を徹して行われる祭りは、「遠山郷の霜月祭り」と呼ばれ、「寒い、眠い、煙い」という祭りの特徴から、「3むい祭り」とも称されている。

旧暦の11月、太陽の力が最も弱くなる時期に生命の復活を祈って行われる祭りであり、しかも国指定の無形民俗文化財に指定されていると聞いて高尚なイメージを抱いていた。が、実際に足を運んでみると、そのイメージは見事に覆されることになる。

JR飯田駅から車で約1時間。祭り会場に近づくにつれ、神楽歌の声が大きくなり、薪をたく煙の匂いも強くなってくる。締め切られた社殿。おそるおそる中をのぞくと、そこには老若男女が祭りに参加するにぎやかな光景が広がっていた。

ある人は舞を舞い、ある人は笛を吹き、またある人は太鼓を叩いている。神事の厳粛さはありながらも、思いのほかリズミカルな神楽歌と祝詞に親しみやすさを感じた。何よりも祭りに参加している人が、皆それぞれの立場で楽しんでいる様子にワクワクする。

祭りのクライマックス、仮面神が登場し、煮えたぎった湯を素手で払う「湯切り」が行われる頃になると、次第に見ている側の人までもが、声を出して祭りに参加し始める。12月の深夜の遠山郷は極寒であるはずなのに、いつのまにか寒さを忘れ、私も皆に倣って声を出していた。

「ヨッセー!ヨッセー!!」

掛け声を合図に法被をまとった青年がダイブすると、あちこちから歓声が上がる。会場のボルテージは最高潮。さながらライブハウスである。

高揚感に包まれ、燻煙の香りを土産に帰路につく。この熱はしばらく冷めそうにない。

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