もうすぐ5月。潮の引きがいいこの時期、「ゴールデン・ウィークのレジャーは、家族で潮干狩り!」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ところで、皆さんは「潮干狩り」が日本人が大切にしてきた年中行事の一つだったとご存知でしょうか?この記事では、潮干狩りの元になった行事と関連するお祭りをご紹介します。
潮干狩りの起源とは?
現在では多くの人に親しまれている潮干狩りですが、いったいいつどのように始まったのでしょうか?そのヒントは「浜降り(はまおり)」という行事にありました。
浜辺でピクニック?「節供磯」と「ハマウリ」
「浜降り」は地域によって「磯遊び」や「浜出」などとも呼ばれ、旧暦3月ごろ(現在の暦で3月下旬から5月上旬ぐらい)になると、みんなで弁当を持って海岸に降りて一日中遊ぶ行事です。まるで浜辺でピクニックをしているようですね。ちょうどこの頃は大潮の時期で、アサリやハマグリなどの貝類がよく取れたことから、潮干狩りに打ってつけの時期でした。
こうした「磯遊び」「浜降り」は全国的に行われており、沖縄県では旧暦の3月3日は「ハマウリ(浜降り)」の日で、女性はハマウリの日に手足を塩水で濡らさないと、アカマター(沖縄に生息する大型のヘビ)の子を産むという言い伝えがあります。「ハマウリ」は女性だけで浜辺にでかける女性のお祭りだったそうで、いわば「ひな祭り」に相当する行事なのです。
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一方、東北の宮城県ではこの行事を「ご節供磯(せっくいそ)」と言って、蓬餅を持って浜辺に出かける風習があります。
農耕が始まる前に、潮水でけがれを払う?
この時期は本格的な農作業が始まる前で、「浜降り」には花見などと同じ趣旨で行われるようになったものだろうと考えられています。また、古くは農耕が始まる前に何らかの重要な神事が行われていたと考えられ、浜辺で一緒に飲食するのはその名残とされています。潮水には、清めの効果もあると考えられているので、「浜降り」には、神事の前に心身を清める意味があったと考えられています。
海水の力を崇める、祭礼としての「浜降り」
また、この潮水の持つ「浄化」の力を崇め、「浜降り」自体が神事になっているものもあります。こうした祭礼としての「浜降り」は、東北から関東にかけての太平洋沿岸に広く残されています。
例えば、茨城県久慈郡の東・西金砂神社では、73年に一度、磯出大祭礼が行われ、日立市の水木浜まで御神体を清めに向かう神輿渡御の行列が行われます。祭礼としての浜降りは、御神体の禊として蓄積したけがれを払拭したり、弱った霊力を再生させるために行われてきたと考えられています。
山車や神輿が海に突っ込むお祭り5選!
さて、この時期には他にも山車や神輿を潮水で洗ったり、はたまた海に飛び込むという、派手なお祭りがいくつも開催されます。ここでは5つのお祭りをピックアップし、それぞれの概要や見どころをご紹介します。
亀崎潮干祭(愛知県)
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愛知県半田市亀崎町で、毎年5月3日・4日に開催される神前(かみさき)神社の祭礼です。
正確な起源ははっきりしていないものの、少なくとも300年以上にわたって行われてきた歴史あるお祭りです。
見どころは、数々の名工画伯によって装飾された5つの山車。そして、大勢の男たちがその山車を波打ち際まで引き込む「海浜曳き下ろし」です。豪快で力強く、かつ美しさも感じるパフォーマンスは必見です。この曳き下ろしは、神社の祭神である神武天皇の東征の際、この地に上陸したという伝説にちなんでいます。
亀崎潮干祭は、2006年には国の重要無形民俗文化財に、2016 年にはユネスコ世界無形文化遺産に指定され、現在も伝統が守られ続けています。
沼島八幡神社春祭(兵庫県)
南あわじ市の沼島八幡神社で、毎年5月3日・4日に開催されます。この祭は、もともと8月15日に魚の供養として行われていた祭だそうです。
祭りでは、大漁を祈願するだんじり唄を歌いながら、だんじりが勇壮に練り歩きます。激しい太鼓の音が鳴り響き、会場のボルテージが上がったところで、一気に海へダイブ!大量の水飛沫をあげて突っ込みます。
だんじりが海に飛び込む具体的なタイミングは、もともと定められているわけではなくその場の流れで決まるため、見逃し厳禁です。
間違いなく離島の名祭のひとつ「沼島八幡神社春祭り」。
ですが、今年のGWも中止に…。
全国的に祭りは今年も自粛ムード。
このご時世とはいえ、次代を担う子どもたちに、伝統を経験させてあげられないことが残念。
ワクチン普及で、来年こそ。#離島#島旅#祭り#兵庫県 #南あわじ市 pic.twitter.com/vis9NI9UNi
— 箭内博行 (@Yanai_Hiroyuki) April 23, 2021
松原神社例大祭(神奈川県)
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小田原市の松原神社が開く例大祭は、毎年5月3日~5日にかけて行われます。
この大祭は、松原神社の本社神輿と町内神輿合わせて約30基が渡御する賑やかなもの。「小田原担ぎ」という、一気に駆けてピタッと止まる、独特の方法で神輿を担ぎ、街を駆けていきます。この担ぎ方は漁師の祭りが基となっているのだそう。掛け声もワッショイではなく「オイサー」「オリャサー」と勇壮です。
4日・5日には町内神輿が次々に海に向かってつっ駆ける「汐(しお)ふみ」という浜降りが行われます。その後行われる宮入りと合わせて必見です。
竹ヶ島神社本祭(徳島県)
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徳島県の最南端に位置し、海上安全・大漁祈願の神が祀られている竹ヶ島神社。例年、旧暦の4月16日、今年は6月4日に本祭が開催されます。
例年では、拝殿での神事の後、若者たちが神輿を担ぎ、広場を練り歩きます。神輿は浜まで運ばれ、そのまま海へ。時には海の中へ沈められることもあるそうです。
「浜入れ」と呼ばれるこの行事。神輿が陸に引き上げられると、神主が祝詞を読み上げるとともに、島民全員で神輿の下をくぐり抜けます。最後は再び拝殿まで担がれた神輿から、本殿に御霊代が移されて行事は終了です。
近年では担い手不足で神輿の「浜入れ」は開催が何度か中止されてしまっています。2023年についても島内外の期待を受けて、関係者の方々が担ぎ手を揃えるべく努力されているところだそうです。
荏原神社天王祭(東京都)
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最後にご紹介するのは、品川区・荏原神社の例大祭、別名「南の天王祭」です。江戸時代から続くお祭りで、5月最終週か6月初頭にかけて開催されます。
こちらは、東京で唯一の海中での神輿渡御が行われるお祭りです。
荏原神社では、御祭神の一人としてスサノオノミコトを祀っていますが、室町時代、スサノオの神面がこの近くの海から発見されたことがこのお祭りの始まりです。ちなみに、その海とは現在の天王洲アイル周辺地域だったらしく、天王洲という名前はこの出来事から名付けられたとのこと。
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最終日、スサノオの神面をつけた神輿が海に入ります。荏原神社を出た神輿は船で目黒川をわたり、港区のお台場海浜公園に運ばれます。神輿がつくなり、待ち構えていた担ぎ手たちは次々に海に飛び込み、神輿を担ぎ、しばらく海中を練り歩いたのち、再び神輿は船で神社へと戻ります。
まとめ
この記事では、潮干狩りの起源や、潮干狩りシーズンに行われる関連行事とお祭りをご紹介しました。山車や神輿を担ぎ、そのまま海に飛び込むお祭りがこんなにたくさんあるとは驚きですね。