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強力パワースポットで夜通し燃え盛る松明!修験道の聖地の年越し行事「松例祭」とは?

2022/11/17
2023/10/16
強力パワースポットで夜通し燃え盛る松明!修験道の聖地の年越し行事「松例祭」とは?

修験道の聖地ともいわれる山形県の出羽三山神社。ここで毎年行われている年越しの伝統行事「松例祭(しょうれいさい)」をご存じでしょうか。

神社の門前町から選ばれし2人が、9月から100日間にもわたる修行を行い、どちらが神意にかなったかをいくつもの神事で競い合うという独特な行事です。また、クライマックスでは若者たちが火のついた大松明の綱を全速力で引き、焼き払うという勇壮で豪快な火のお祭りでもあります。

今回はこの「大松明引き」が国の重要無形民俗文化財にもなっている「松例祭」についてご紹介します。

東北屈指のパワースポット!出羽三山神社とは?

松例祭の解説の前に、その舞台となる出羽三山神社とはどんな場所なのかご紹介しましょう。

出羽三山とは、山形県の中央に位置する羽黒山、月山、湯殿山の3つの霊山の総称です。中世以降、山岳を神と崇拝する神道と密教(仏教)が一体化した「修験道」を極めようと、山伏たちが修行する場として栄えました。そのため、奈良県の熊野大峰山、福岡県の英彦山(ひこさん)と並び、日本の「三大修験道場」にも数えられています。

羽黒山は現世の幸せを祈る「現在」の山、月山は死後の安楽と往生を祈る「過去」を表す山、湯殿山は生まれかわりを祈る「未来」の山とされ、江戸時代にはこの順で出羽三山を巡り、三山に祀られた三社に参拝することが「生まれかわりの旅」として流行しました。

 

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羽黒山の出羽三山神社には、樹齢300年超えの杉並木に包まれた2446段の石段や五重塔、静謐な水を湛えた鏡池などがあり、そこかしこに霊気とパワーが満ち溢れているようです。

山頂には出羽三山の神様をすべて祀っている「三神合祭殿」があり、三山巡りの時間がなくても、こちらをお参りするだけですべてのご利益がいただけます。また、月山と湯殿山は降雪が多く冬は閉ざされてしまいますが、羽黒山だけは通年お参りができますので、そこも嬉しいポイントです。

松例祭の準備は夏から始まる!?

松例祭が行われるのは大晦日から元旦にかけてですが、その準備はかなり前から始まります。
8月中旬、門前町の手向(とうげ)集落の人々の中から、位上(いじょう)と先途(せんど)と呼ばれる、その年の羽黒山伏の最高位、「松聖(まつひじり)」を2名選出します。希望者2名が氏子会に申し出て、承認されると神社に推挙され決定するながれです。

松聖の2名は、9月24日から百日の行に励み、五穀豊穣と天下泰平を祈願します。前半50日を自宅、後半50日を出羽三山神社の斎館で行い、100日目の満願の日が大晦日です。その間、手向集落の10町は大松明作りのための講習会を開いたり、祭りで使う各種の引綱を作ったりします。

そして11月中旬~12月初めには、松聖をはじめ羽黒山伏たちが庄内地方一円を回り、祭の費用を得るため「松の勧進」を行います。ほら貝の音とともに松の勧進の一団がやってくると、地元の方たちは冬の訪れを実感する風物詩となっているそうです。

当日は独特な行事が次々と

前日までに、祭りに使う祭具はもちろん、大松明も位上方と先途方用に1本ずつ準備されます。また、祭りに参加する山伏や若者も含め全員、位上方か先途方のどちらかに分かれます。
大晦日当日、2人の松聖が参籠していた斎館から補屋へ移ったら松例祭の開始です。15時頃から特徴的な行事が続々と行われますが、ここでは主なものを紹介しましょう。

◎綱まき行事

前日までに用意した2本の大松明が、何と若者衆によって一部の節が切り刻まれます。
というのも、大松明は悪霊を模しているとも、山で苦しめられる害虫「ツツガムシ」をかたどっているともいわれ、切り刻んだ後に一度再生させて、最後に焼き払うことで完全に退治できるとされているからです。

切り刻んだ節は、神聖な切綱として参拝者に向かって投げられます。切綱は、家の軒先にかけると家内繁栄が約束されるといわれており、邪気が家に近づくと綱のように切り刻まれてしまうため近づかないようにという厄払いの意味も込められています。
縁起物である切綱を奪い合う境内は、ほとばしる熱気が充満。奪い合いで決着がつかないときは、相撲を取って決めるのだとか。

◎大松明まるき直し

綱まき行事で解体した大松明を、笹やヨシなどを補って元の半分程度くらいの大きさに復元します。一度切り刻んで退治したツツガムシが再生したことを表し、この後に焼き払って完全に退治するための準備となります。

◎験競べ(げんくらべ)

位上方と先途方の験者6名ずつ(計12名)が東西に並び、5番目には松聖の代役である小聖が座ります。神殿に向かって1人ずつの飛び上がる様を模し、どちらの山伏が神意にかなったかを競う神事です。

5人目の山伏が呼ばれた際に五番法螺(ほら)と呼ばれる法螺貝が吹かれると、大松明を引き出す合図になります。

クライマックスは「大松明引き」

法螺貝の合図で庭上に待機している若者衆が、一斉に大松明を走って引き出し、雪穴に立てて焼き捨てます。
若者衆は引き綱を担いだまま後ろを振り向かないで補屋へ走り去り、そのまま引き綱を担いで下山します。

この場面では、再生したツツガムシを焼き払って退治することを意味しており、大松明を立てる速さと燃え具合で翌年の豊作と大漁を占います。国の重要無形民俗文化財に指定されている行事で、振り返ることなく山を走り下る様は圧巻です。

年が明け、元日になっても行事は続く

◎国分神事

大松明が燃え尽きる頃、新年を迎えた庭上に「鏡松明」が立てられます。そこに火がつけられ、大歳神の来臨を待つ神事が始まるのです。

 

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これは、羽黒権現を表す所司前と4名の役者がそれぞれの領地を確定したことを示します。
4名の役者のうち3名は熊野(新宮・本宮・那智)、1名は英彦山の権現を務めます。ここで確定する領土というのは、日本66ヶ国のうち東33ヶ国が羽黒、西24ヶ国が熊野、九州9ヶ国が英彦山の領土という故事に由来するものです。

◎火の打替神事

国分神事で羽黒の領土が確定後、新たな火をきり出す神事です。4人の役者が2人ずつ向かい合い、鏡松明の周りを3周回ります。

反対側にある火薬を乗せた火皿を持ち、稜持(かどもち)に向かって走りだし、火打ち金と火打ち石で新たな火を切り出すのです。早く火を切り出した方が勝ちとなり、遅速を基準として明くる年の豊作と豊漁を占います。

おわりに

山形県の羽黒山頂上で行われる、出羽三山神社の「松例祭」。大晦日から元日にかけて、国の重要無形民俗文化財に指定された「大松明引き」なども行われる伝統行事です。

ここ数年は型コロナウイルスの影響で、例年どおりとはならずとも規模を縮小して伝統を絶やさず開催されてきました。今年の松例祭も同様に規模縮小の可能性はありますが、詳細や最新情報については、出羽三山神社の公式サイト松例祭保存会の公式サイトにてご確認ください。