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インタビュー

阿波踊り界の異端児 東京三鷹 寶船 米澤渉氏インタビュー <その2>「興味を持ってくれる人がいなければ文化は終わる」

阿波踊り界の異端児 東京三鷹 寶船 米澤渉氏インタビュー <その2>「興味を持ってくれる人がいなければ文化は終わる」

徳島を発祥の地とし、全国に広がる阿波踊り。その中でも赤い法被、派手なメイク、激しい踊りでひときわ異彩を放つ「寶船」。その活動は年間200公演にのぼり、これまで20か国38都市でパフォーマンスをしてきました。このインタビュー第2部では、東京高円寺で阿波踊りを踊る一人でもある私が、寶船の海外に向けた動きと、阿波踊りの今後について伺いました。

前編:阿波踊り界の異端児 東京三鷹 寶船(宝船)米澤渉氏 インタビュー <その1>「踊りだしたら命懸け」

1.阿波踊りが国籍を越えて繋ぐ縁。寶船流のコミュニケーションとは

-数多くの海外公演をされていますが、現地でのコミュニケーションはどうとっていらっしゃいますか?

米澤氏:
丸暗記です(笑)。MCは何とかなるのですが、ステージを降りて質問をされると答えられなくて大変ですね。

でもなぜか、行った先々で現地の人仲良くなってホームステイさせてもらっています。一度英語の分からないフランス人の家で、フランス語の分からない寶船が滞在させてもらいました。どうやってコミュニケーションを取っていたのか、いまだに思い出せないですね。

でも、そうやって例えばフランスで出会ったイタリア人のイベンターの方が呼んで下さったり、ゲリラ的に踊らせていただいたバーやレストランで毎年イベントとして企画してくださるようになったり。そこからつながる縁がすごいですね。

公演を見てファンになってくれたアメリカ人の女性が作ってくれた刺繍。制作に4か月かかったという

2.弾丸!2018年春アメリカ横断ツアー

-2018年春に行かれたアメリカ横断ツアーのことを教えてください。

米澤氏:
サンフランシスコ、ロサンジェルスにしばらく滞在。その後途中テキサスに寄ったので縦断を含む横断を10日かけて行い、ニューヨークに滞在という計3週間の行程でした。資金はクラウドファンディングで作りました。その10日の間、朝5時にホテルを出て車で移動、夕方4時ごろ会場入りし着替え、公演、先方が用意してくださるパーティがあって12時ごろホテルに帰って、朝日とともに出発、という感じでした。

洗濯は大変でしたね。2着持ってるんですが、乾燥機回して何とかやっていました(お祭りが続く夏の時期、私たち踊り手にとっては洗濯とアイロンは死活問題。踊る阿呆同士、洗濯話で盛り上がりました)。

アメリカ大陸横断ツアー『ACROSS AMERICA 2018』ダイジェスト

3.ストリートゲリラライブも!寶船の海外公演

-海外ではどんなところで公演をされるのですか?

米澤氏:
ホールはもちろんですが、バーなどで直接交渉して突発的に踊ることもあります。すると食事を出してくれることが多いので、本当に助かるんですよね(笑)。

ニューヨークではセントラルパークでゲリラライブをし、投げ銭で昼食と夕食を稼ぐ、という企画もしました。修行ですね。警察に止められる、ということはもちろんありますが、人寄せと思って大きな音を出しすぎてもダメなんですよね。遠巻きに見られて寄ってこないんです。まずは自分たちに一番近い1列目の人垣を作り、そうすると次が寄ってくる。そうすると1列目が動けなくなる(笑)。そういう大道芸の人のテクニックを研究したりしましたね。

食費が稼げたかどうか、Youtubeをチェックしてみてください。

ニューヨークゲリラライブの様子。これはまさに修行。

4.2020年までは種まきの時期。文化発信の最高のタイミングを活かして

-2020年オリンピックもあり、インバウンド効果が叫ばれていますが。

米澤氏:
2020年まではあくまで種まきの時期だと思います。今はある意味バブルなので、これをいかに利用して、次に残していくか、です。

今年の夏はダンシングヒーローや盆Joviなど、新しい形での盆踊りが脚光を浴びました。寶船もパリのジャパンエキスポでオープニングをさせていいただき、ピコ太郎さんやDJ KOOさん率いるTOKYO BONとも共演しました。TOKYO BONは日舞の家元が本気でやっているプロジェクトです。なんで家元がこんな一見ふざけたことをやっているか、というと、寶船の思いと一緒なんです。文化は興味を持つ人がいなくなったら死んでしまう。今の息吹を感じて、異端なことをやって、興味を持ってもらう。その上で、本家に興味を持ってもらえればそれでいいんです。

フラダンスやヨガに興味を持った日本人がハワイやインドに行ったり、カリフォルニアロールを食べた外国人が日本で本物の寿司を食べたいと思ったりしますよね。「あんなのは偽物だ」と言われるかもしれませんが、それに触れた人が日常に取り入れ、現地に赴く。そこで経済効果が生まれ、持続されていってこそ、です。2020年を目標としていてはダメで、大事なのはせっかくある文化発信の最高のタイミングを活かし、その先をどうするか考えていくことです。

パリで行われたジャパンエキスポ。毎年7月の四日間、20万人以上が訪れる世界最大規模の日本ポップカルチャーイベント

5.文化はオープンイノベーション。これからは阿波踊りもシェアする時代に

-これからの阿波踊りはどうなっていくと思われますか。

米澤氏:
もっと自由になっていくと思います。これまでの伝統芸能は自分のやり方を囲い込むような形で存在していましたが、今はインターネットで発信すれば自分たちのPRができます。いろいろなことがオープンソースになり、シェアリングエコノミーや横のつながりを大切にする価値観に変わってきています。「やってみた」動画で阿波踊りがバンバン投稿され、みんながPPAPや恋ダンスを踊れるように、阿波踊りもみんなができるようになればいいですよね。

2018年神楽坂阿波踊り。寶船は、観客が参加できる「にわか連」を率いることが多い。これも自由でオープンな寶船ならでは

6.アフリカ横断に、シリコンバレー進出、EDMフェス?「世界中を躍らせる」寶船のこれから

-寶船としてはこれからどんなことをしていきたいですか?

米澤氏:
アメリカ横断をしたので、今度はアフリカ横断がしたいですね。アメリカはクラウドファンディングで行きましたが、アフリカに進出したい企業と組んで僕たちがPRして回るというビジネスモデルです。

それからシリコンバレーでペットボトルのお茶が流行ったのはスティーブジョブスが日本好きで、Googleでお茶を飲むようになったからなんです。それと同じように阿波踊りをシリコンバレーに持ち込みたいですね。ヨガのようにエクササイズにしたり、チームビルディングのアクティビティにしたり。

EDMフェスなんかにもどんどん参加していきたい。従来の小さなパイを取り合うのではなく、パイを広げ、日本文化を広めていきたいですね。それが寶船の役割だと思っています。

2011年ホノルル公演以降、訪れた国は20を超える。そのすべての公演で、観客を躍らせてきている

 

「異端」と呼ばれる寶船。常に新しいフィールドを開拓するのは、未来を見越した俯瞰的な目線からでした。こういった「切り込み隊長」がいるからこそ、文化は続き、発展していくのでしょう。

阿波踊りの形は様々でも、祭りを愛する思いは同じ。それぞれのスタイルを持った連が思いをぶつける祭りはやっぱり最高です。次の夏はそんな目で、それぞれの連の特徴を楽しんでくださいね。ヤットサー!

米澤 渉

一般社団法人アプチーズ・エンタープライズ プロデューサー
寶船 BONVOリーダー/山形県米沢市おしょうしな観光大使 。

1985年生まれ。東京都出身。
1995年の「寶船」設立より所属し、その激しいパフォーマンスで幾多の観客を魅了。
アメリカ横断ツアー、インド・フランス・NY・香港での公演など、海外での活動も積極的に行なっている。

寶船オフィシャルサイトはこちら

前編:阿波踊り界の異端児 東京三鷹 寶船(宝船)米澤渉氏 インタビュー <その1>「踊りだしたら命懸け」

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