今年、2022年の干支は壬寅(みずのえとら)で寅年です。寅(=虎)は、実は全国にある毘沙門天を祀っているお寺との縁が深かったり、そのほか寅や虎にまつわる神社は日本各地にあります。
そこでこの記事では、そんな寺社の中から5か所を厳選。いただける御朱印とともにご紹介します。
目次
虎は古くから縁起物や郷土玩具、虎舞、毘沙門天の使いに
虎は勇猛で力強く、武力や勇気の象徴。ゆえに魔除けの力もあるとされ、各家庭で張り子の虎を縁起物として端午の節句に飾ったり、お守りや子どもに与える郷土玩具としても全国各地で親しまれてきました。(詳しい記事は下記をご覧ください)
また、お正月の風物詩といえば獅子舞がありますが、岩手県を筆頭に全国各地の沿岸部には、獅子頭ではなく虎頭をかぶって虎の色柄の胴幕をまとい、ダイナミックに演舞する「虎舞(とらまい)」が行われている地域もあります。(詳しい記事は下記をご覧ください)
そして、武神として名高い毘沙門天が祀られている寺院では、本来の神の使いは百足(むかで)とされますが、狛犬ならぬ狛虎のような像が置かれ、毘沙門天の神使として扱われている光景がよくみられます。
これは今から1400余年の昔、聖徳太子が奈良県の信貴山(しぎさん)で朝敵を倒すため戦勝祈願をしたところ、毘沙門天が現れて必勝の秘法を授かったのが、寅の月・寅の日・寅の刻であったという逸話が元になっています。
ほかにも、鑑禎上人が京都の鞍馬山に上り、鬼女に襲われたところ毘沙門天が現れ助けられたのが、寅の月・寅の日・寅の刻であったという逸話もあります。こうして虎は毘沙門天とゆかりの深い動物となっています。
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ちなみに、寅の月とは旧暦の1月、つまり現在の2月です。寅の日は、日ごとに十二支を当てはめた呼び名で12日ごとに巡ってきます。虎は黄金色の縞模様を持つので金運アップの日、「虎は千里行って千里帰る」ということわざから旅立ちにも良い吉日とされています。そして、寅の刻は24時間を十二支に割り当てたうちの3番目で、現在の午前4時の前後2時間くらいを指す語です。
このことから、新年の最初の寅の日に毘沙門天をお参りして、武運長久や開運厄除、商売繁昌を祈ることを「初寅参り」と呼び、行っているところもあります。
では、ここから寅・虎にまつわる寺社と御朱印をご紹介しましょう。
「日本一の寅の寺」ともいわれる「信貴山 朝護孫子寺」
大阪府との境に近い標高437mの奈良県の山、信貴山。その中腹にあるのが信貴山 朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)です。前述の聖徳太子による戦勝祈願が行われた寺院で、全国の毘沙門天を祀る社の総本山として古来から親しまれてきました。
聖徳太子のエピソードにあやかって、寅の縁日に毘沙門天にお参りするとご利益があるといわれています。境内には大阪張り子の虎を原形として作られた全長約6m、高さ約3mと巨大な「世界一福寅」をはじめ、笑みを浮かべたような石像の「笑寅」、長い虎のトンネルのような「三寅の胎内くぐり」、狛犬のような「あうんの寅」など、様々な虎の像と出会うことができます。
寅の月である2月には「信貴山寅まつり」が開かれ、家内安全や厄除け祈願・心願成就など現世利益を祈る法要が盛大に営まれます。同時に、信貴山内に建立されている朝護孫子寺・玉蔵院・千手院・成福院の4つのお寺で寅の月限定の特別な御朱印もいただけます。
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寅の日には毘沙門天と虎の限定御朱印が!「正伝寺」
17世紀、第107代天皇である後陽成帝が晩年の一時期を過ごしたといわれる庵をもとに建立されたのが東京都港区にある正伝寺です。第7世の日榮上人が奉安した毘沙門天王は「江戸三大毘沙門」の一角に数えられ、勝運、商売繁盛、金運財運を祈願する人々が多く訪れるようになりました。
特に新年最初の寅の日には大変な賑わいをみせ、現在でもお正月・5月・9月の「初寅の日」には、毘沙門堂において御開帳と御祈祷が行われます。そして、寅の日に参拝すると、毘沙門天の猛々しい雄姿と虎と百足が描かれた見開きの限定御朱印(または御首題)もいただけます。
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寅といえば「寅さん」!映画の舞台にある「柴又帝釈天」
人気映画シリーズ「男はつらいよ」の主人公・寅さんの自己紹介といえば、「帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します」。ここに出てくる帝釈天とは、東京都葛飾区柴又にある日蓮宗の寺院で、正式名称を経栄山題経寺といいます。
映画の中では笠智衆さんが住職の御前様を演じていた題経寺のご本尊は帝釈天。仏教世界の中央にそびえる須弥山(しゅみせん)の山頂から命あるものすべてを見守っていて、国家安泰の高徳があり、災難から守られ立身出世や蓄財の御利益があるとされています。
また、須弥山中腹の四方を居所とし、山頂の帝釈天に仕える四天王も祀られています。南方を守護する増長天、西方の広目天は二天門の左右に安置され、東方を守護する持国天、北方の多聞天は帝釈堂のご本尊の両側におられます。多聞天は四天王として祀られる時の別名で毘沙門天のことですので、寅さんの舞台のお寺に寅と縁のある毘沙門天が祀られているのはとても興味深いですね。
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大河ドラマで有名に!井伊直虎ゆかりの「龍潭寺」
龍潭寺(りょうたんじ)は、風光明媚な奥浜名湖の北に位置し、平安時代から戦国時代まで600年に渡り当地方を治めた井伊家の菩提を弔う寺院です。2017年の大河ドラマ「おんな城主 直虎」の主人公が次郎法師として出家した寺であり、家督を継ぐ男子が幼い井伊虎松(のちの直政)しかいなくなったとき、その後見人となって井伊直虎と名乗り、女領主として井伊家受難の時代を救った舞台となった寺でもあります。
そんな直虎を支えたうちの一人は大叔父である南渓瑞聞(和尚)で、龍潭寺の二世住職だったことはドラマを見てご存じの方も多いでしょう。龍潭寺では、直虎と虎松が描かれた御朱印帳が購入できるなど、井伊家の歴史に思いを馳せることができます。
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阪神タイガースファンの聖地「甲子園素戔嗚神社」
甲子園素戔嗚(こうしえんすさのお)神社は、甲子園球場の南西に位置し、高校球児や阪神タイガースファンたちの多くが必勝を祈願しに参拝する神社です。祀られている神様は、猛々しく荒ぶる神様として知られるスサノオノミコト。ヤマタノオロチを征伐したエピソードにあやかって、暴れ川だった武庫川の治水を願って創建されたものといわれています。
大正13年に近くに甲子園球場が建設されて以来、野球ファンの聖地として、必勝祈願に訪れる人で賑わっています。スサノオノミコトらしく、力強い文字で書かれた御朱印がいただけるほか、野球のボール形やベース形のお守りや絵馬が購入できるのも嬉しいですね。
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まとめ
この記事では、今年が寅年であることにちなんで、寅や虎にまつわる寺社とそこでいただける御朱印をご紹介しました。
力強い「虎」は、古くから武運長久、商売繁盛、病魔退散などさまざまなご利益と重ねられてきました。特に、寅年の2022年には「寅の日参り」「寅の日詣で」をすることで、さらに大きなパワーがいただけそうですね。ご興味のある方は、ぜひ試してみてはいかがでしょう。