「とちぎ秋まつり」では、巴波川を中心に豊かな旅情で溢れる栃木市内を巡行する絢爛豪華な江戸型人形山車を眺め、「小江戸」文化の粋に触れることができます。
(この記事は2019年に公開されたものを再編集しています。2020年11月6日 編集部更新)
目次
・栃木市を流れる巴波川の水運が産み出した「小江戸」の蔵の街並み
栃木県栃木市は、江戸時代から市街地の中心を南北に流れる巴波川を利用した舟運によって発展してきました。巴波川は江戸の木場まで材木を運ぶための重要な交通ルートとなり、両岸に数多くの蔵が建ち並び商人の街として栄えたのです。蔵の街遊覧船に乗れば、水路から蔵が立ち並ぶ「小江戸」の街並みを眺めることができ、歴史的な風情が漂っています。栃木市は戦災に見舞われなかったため、市街地に江戸時代から明治時代にかけての蔵や商家などが数多く残り「美しいまちなみ大賞」を受賞しています。
・蔵の街並みが熱気で溢れる「とちぎ秋まつり」開催日
栃木市の蔵の街並みが熱気で溢れるのが「とちぎ秋まつり」の日です。「とちぎ秋まつり」は、1874年に市内の商人が、「静御前」や「諫鼓鶏」の山車を調達し神武祭で披露したことに始まります。かつては5年毎に行われていましたが、現在は隔年11月の上旬に開催され、次回の予定は、2020年11月6日(金)~8日(日)です。初日の「子供山車まつり」に始まり、土日に「本まつり」が行われます。メインストリートの「蔵の街大通り」を中心に絢爛豪華な江戸型人形山車が巡行します。
・「蔵の街大通り」を中心として市内を巡行する絢爛豪華な江戸型人形山車
「とちぎ秋まつり」で巡行される山車の最上部には、空に向かって人形が掲げられています。古事記や日本書紀に描かれた神々、伝説に因んだ人物、中国の偉人など多彩な顔ぶれが、市内を歩くという趣向です。日によって巡行する山車は変わりますが、全日で13台が市街地を練り歩きます。その中の6台は栃木県、4台は栃木市の有形民俗文化財に指定されており、市内は数々の歴史絵巻で折り重ねられます。
山車が近づいてくると最上部に視線を向けてしまうものですが、山車の構造にも注目したいものです。人形の足元には上下可動式の2層の空間が設けられています。これは山王祭などで山車より低い江戸城の門を潜る際に、スライドして山車の高さを調整する江戸型山車の流れを汲んだものなのです。各々、繊細な彫刻や、金糸、銀糸で花や鳥、龍、鳳凰などが刺繍された上段幕、見送り幕で囲まれています。
山車の前面にせり出した舞台でお囃子が奏でられると巡行に出発です。力強く山車を引く人の前には、艶やかな衣装の手古舞が長い列を作って先導します。
・まつりの醍醐味はお囃子の競演が行われる「ぶっつけ」
「蔵の街大通り」では絶え間なく山車の巡行が行われていますが、例幣使街道、日ノ出町、栃木駅前、巴波川沿いなどでも山車に遭遇します。突然山車を目にするのは人間だけではなく、山車も他の山車と向い合せとなることがあります。複数の山車がぶつかりそうになる「ぶっつけ」の時は、山車の引き手は提燈を高く振りかざし、大きな掛け声をかけながら、お囃子のボリュームを上げます。あたり一面に響き渡るお囃子の競演は、「とちぎ秋まつり」の最大の魅力です。勢い余ってお囃子の調子を外してしまった山車が、道を譲ることがルールとなっています。
山車の巡行が「とちぎ秋まつり」の魅力ですが、期間中には神明宮では神楽の上演、うずま公園などでは和太鼓の実演などのイベントが行われます。また、とちぎ山車会館に行って展示物を見ると、まつりや栃木市の歴史についての理解を深めることができます。