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鹿児島県甑島トシドン ユネスコ登録来訪神と島で年越し

2020/11/30
2024/3/5
鹿児島県甑島トシドン ユネスコ登録来訪神と島で年越し

ユネスコ無形文化遺産登録来訪神トシドンとは

鹿児島県薩摩川内市下甑町。東シナ海に浮かぶ下甑島に、ユネスコ無形文化遺産に登録された民俗芸能、トシドンがあります。大晦日の夜に訪れる来訪神で、子供のいる家々を訪れ1年間を振り返り、悪い行いを戒めます。

来訪神とは、年に一度決まった時期に人間の世界を訪れる神様のことで、2018年秋田県男鹿のナマハゲや鹿児島県薩摩硫黄島のメンドンなど全10種の来訪神がユネスコ無形文化遺産に登録されたことで話題になりました。(鹿児島県甑島トシドンは2009年にユネスコ無形文化遺産に登録)

(この記事は2019年に公開されたものを再編集しています。2020年11月30日 編集部更新)

鹿児島県の来訪神メンドンの詳しい情報はこちら

トシドンの特徴

トシドンはソテツの葉やシュロというヤシ科植物の皮などで飾られた面をつけ、ミノで身体を覆っています。

子供が一目見ただけで大泣きしてしまう程、奇怪な外見のトシドンは、子供を怖がらせる恐ろしい存在に思えますが優しい一面もあり、家庭に幸福をもたらす神様として島の人々から愛され親しまれています。
甑島のトシドンは3〜8歳の子供がいる家を訪れると、子供の良い行いや優れたところを褒めて励まし、子供と対話をしながら欠点を見つけ、悪い行いを戒めます。そして子供ともう二度と悪いことはしないと約束し、新年の目標を立てます。最後にトシドンと約束した褒美として「年餅」を子供に授け去っていきます。
この行事は、神様が訪れると年が改まるという信仰が元になっており、祝福神であるトシドンからもらう「年餅」を食べることで無事に歳をとることができると言われています。

当日の様子

大晦日の夜、トシドンは「悪い子はいないか〜」と唸るような声をあげ、子供のいる家を探し歩きます。街灯も少なく、ひっそりと静かな真夜中、トシドンが子供を探す低い声とゆっくりと歩く下駄の音が鳴り響いていました。子供だけでなく、大人も身構えるような緊張感が走ります。

子供がいる家までたどり着くと、「おるか、おるか〜、ここに来て扉を開けえ」と不気味な声を出し家の壁や窓を激しく叩きます。親に外の様子を見てくるよう頼まれた子供は恐る恐る音のする方へ近付いていきます。音が静まり、何事もないかと安心すると突然大きな声をあげてトシドンが窓から顔を出します。驚いた子供は即座に泣き出し、大慌てで家族のいる所へ逃げ込んだり、母親の陰に隠れたりしていました。

トシドンが家の中まで入り込んでしまうと、子供は観念してトシドンと話をしなければなりません。良いところを褒められたり、悪いところを叱られたり、真剣にトシドンと向き合う子供を家族は暖かく見守ります。

しっかりと自分と向き合った子供は、トシドンから褒美に「年餅」を授かり、背にのせて運びます。トシドンは、子供が家族の元へ戻るのを最後まで見届け帰っていきました。いつも見守っているぞ、そう念じているように見える暖かい光景です。

 

道中では青瀬地区会長さんが「怖がらせてばかりでなく、子供に隙を与えてやれ、ちゃんと考え反省ができる時間をつくろう」と声をかけていました。
健全に育っていけますように、そう島の人々全員が願っています。
子供達が愛され大切に育てられていることが心から伝わる年越しの行事でした。

 

 

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