小正月にお正月飾りやお札・破魔矢などを燃やす火祭り行事。「どんど焼き」や「おんべ焼き」「左議長」・・・など、呼び方は地域でいろいろあります。今回は、神奈川県横須賀市鴨居地域の「さいと(どんど焼き)」の組立てから密着させていただき、昔の様子などのお話も伺いました。
さいと(どんど焼き)とは?
「さいと(どんど焼き)」とは、1月15日の小正月に行われる火祭り行事の事です。正月飾りや松飾り・しめ縄・ダルマ・書初めなどを、神社の境内や田んぼ・広場・海岸に集めてお焚き上げする伝統行事で、焚き上げの煙をあびたり、火で焼いたお餅を食べると無病息災で一年が過ごせると言われています。
横須賀市鴨居のさいと(どんど焼き)の歴史
鴨居は神奈川県横須賀市南東部にある地域です。鴨居地域では、どんど焼きのことを「さいと(齋燈)」と呼んでいて、「さいと」の意味は、お祓いやお清めをし、火を燈すと言う意味があるそうです。国の祝日法で成人の日が第二月曜日になり、他地域では土日に変更するところが多い中、鴨居地域では平日であっても小正月である1月15日にさいとを続けています。
今回、鴨居在住の高橋正一さんに貴重なお話を伺いました。高橋さんは現在81歳!高橋さんが子どものころは、この「さいと」の組立は小学校から中学校ぐらいの子どもたちの役目で、中学3年生がリーダーになり、取りまとめをしていたそうです。現在では、鴨居八幡神社の前の海岸のみで開催されていますが、昔は町内ごとに「さいと」が組まれていたとのこと。どの町内も美しく大きな「さいと」を組むことを目標にし、山に行って沢山のカヤを採り、乾燥させて「さいと」の中に入れ、大きく組立てていたそうです。
松の内が明けると、リーダーを中心に子供たちで集めた松飾やしめ縄などで5~6mの「さいと」を浜辺に組み、お焚き上げの前日である1月14日の夜に「ゆわっせ、ゆわっせ」と各家を練り歩き、祓い清めのお駄賃をもらいに行ったといいます。
その後、手ぬぐい一丁で真冬の夜の海に入り、「垢離(こり)」を採り、神社に奉納、無病息災・家内安全を祈願したそうです。裸で入る真冬の海は、とても寒かった!とおっしゃっていました。そのあとは、神社前にある銭湯に入れてもらったそうで、その時の銭湯は砂だらけだった!と話してくださいました。現在、銭湯は一軒もなくなってしまいましたが、昔は、各町内会ごとに銭湯があったそうで、時代の流れを感じました。
出来上がった「さいと」は、1月15日の午前8時に神社の境内で火付石を使って火を付け、お焚き上げをします。この流れを毎年先輩から受け継いできたそうです。
「いなむらさいと、もしつけたぞ、おらほら、は~え~ぞ、じぃじとばぁばと、もちやっこらせ!」と言う歌も教えてくださいました。
どうやって組立てるの??
さいとの組立は、お焚き上げの前、今年は1月10日(日)に行いました。現在は、子どもたちではなく、氏子会の方々が神社の境内の一角に集められた破魔矢・ダルマ・しめ縄・熊手・書初めなどを仕分けするところから始まります。
海岸では、5~6mほどの竹が円錐状に組まれて、その中にまとめたしめ縄などを芯として詰めていきます。カヤを回りに巻き、破魔矢を差し、正面にダルマ、頭に熊手を付けて飾り付けていきます。
2020年選ばれた漢字「密」も正面に貼り付け完成!出来上がった「さいと」は芸術的な仕上がりです。
海岸に燃え上がる「さいと」
1月15日、小正月の朝早く、鴨居の海岸はたくさんの人が集まってきます。浜には、松の内を過ぎ、お正月飾りなどもたくさん集まっていました。
午前8時。「さいと」の前に氏子の方々が並ぶと、海岸が少し緊張感に包まれます。
鴨居八幡神社の境内でたいまつに火がつけられると、宮司の永井さんを先頭にゆっくりと「さいと」に向かって歩いてきます。その後を、たいまつを持った高橋さんが続きます。地域の方々もこの場面を、カメラも収めようとシャッターを切っていました。
宮司の永井さんが、さいとの前で祝詞をささげます。そして、高橋さんがたいまつを持って、さいとに火を付けていきます。
炎はみるみるうちに燃え上がり、さいとが炎で包まれます。
この日は、薄曇り。さいとの後方には、対岸の房総半島が見え、雲の間から光の柱がたくさん立ってとても幻想的でした。
例年であれば、お神酒のふるまいがあるのですが、今年は新型コロナウイルス感染症感染対策の為、中止となりました。「さいと」のご利益は無病息災。新型コロナウイルス感染症が終息することを願いました。
まとめ
小さな漁港の町・鴨居の「さいと」を組立から密着させていただき、70年ほど前の貴重なお話を伺うことで、鴨居の方々がこの「さいと」や鴨居八幡神社の祭事をとても大切にされている事を知れました。時代は流れ、変わってしまった事もありますが、1月15日の小正月の午前8時に開催することを守り、町の歴史と伝統文化を後世に残そうとされていること、次世代の方にも伝えられるよう大切にしていきたい、そう感じた2日間の取材でした。今年の「さいと(どんど焼き)」は終了してしまいましたが、ぜひ、来年はお近くの「どんど焼き」の参加してみてはいかがでしょうか??
今回、密着に快く対応してくださいました、鴨居八幡神社宮司永井まさとさん、氏子会の高橋正一さん、本当にありがとうございました。
↓Facebookの「鴨居八幡神社」ページに2020年度の「さいと」の様子のドローン映像がありましたのでこちらもぜひご覧ください!
鴨居八幡神社
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