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コロナ禍、宮崎の夜神楽は今……

2021/2/16
2021/2/16
コロナ禍、宮崎の夜神楽は今……

2020年の夜神楽

こんにちは。どんぐり圭子です。

2020年には、covid19の信じられないようなパンデミックが起きてしまいました。悲しみ、辛さ、やるせなさを抱えてしまった方が大勢いらっしゃることとお察しします。何とか、一日も早くこの暗く長いトンネルを抜け出ることができるよう願ってやみません。

過去に九州山地の東側・宮崎県に位置する地域の夜神楽のレポート〈秘境にて舞う、宮崎県の冬神楽をご紹介。神楽の習わし、楽しみかた、2018年冬に注目の神楽の日程も。〉をしましたが、今回は、令和2年(2020年)のコロナ禍での神楽が神事だけになったり形を変えたりして行われたことについてレポートします。

山村は少子高齢化が進み継承者不足もあって、関係者の多大な努力なしには近年の祭りは開催自体が困難を極めています。そんな中、すべての神楽が開催についてぎりぎりまで悩み、現地に人が集まらないように原則一般には非公開とし、各市町村観光協会も日程の公表をしなかったところがほとんどでした。

祭り当日は、いつもの五穀豊穣への感謝や願いや無病息災などに加え、コロナの終息を願ったことは言うまでもありません。

天岩戸開きで世界に光を(高千穂町)

高千穂町観光協会提供

「天岩戸神話」から、天照大神(アマテラスオオミカミ)が洞窟(天岩戸)にお隠れになり世界が真っ暗闇になったというお話に基づいた演目が有名な高千穂の夜神楽では、物語では最終的には岩の扉を手力男命(タヂカラヲノミコト)が開け放ち、世界に光が戻ります。

コロナで暗く光が感じられない世の中が早く「天岩戸開き」になりますようにと、社人一同願いました。

訪れる人を一夜氏子〈「高千穂の夜神楽」一夜氏子になりませんか|観光経済新聞〉として受け入れる高千穂の夜神楽ですが、Zoom配信で一夜氏子を受け入れた地区がありました。関係者だけで33番を舞いましたが、その中の一番の盛り上がりを見せる夜中の午後11時から翌日早朝午前1時までの限定で配信されました。

事前申し込みが必要でしたが、多くの方に楽しんでいただけたことは、とても喜ばしいことです。

高千穂町観光協会(http://takachiho-kanko.info/)の丹波さんは、「昨年、神楽の一般公開をしないと決まり、夜神楽日程表が作成されないと知った時は寂しさを感じました。神様と一緒に氏子たちが楽しむ ― これまで当たり前に行ってきたことができないことを深く考えさせられました」とおっしゃっています。

 

今年もやった! ただし無観客。(高原町)

高原町写真コンテスト入賞作品「つなぐ」坂元 将之氏(高原町観光協会提供)

高原町の神舞(かんめ)は、勇壮な真剣を持った舞いや神様との問答がユニークですが、無観客で行ったのでいつもの賑わいが無く、観客から合いの手やヤジが飛ばないので神様も少し寂しかったことと思われます。でも、換気のために開け放たった窓の外側にはいつの間にか人の顔がチラホラ……。太鼓の音を聞きつけて、神楽に足が向いた人たちでした。やはり神舞がないと年が越せません。2021年は、コロナも終息し、いつも通り神様と一緒に神楽を楽しみたいものだと思います。

高原町観光協会(http://takaharu-tourism.jp/)の有馬さんは、

「例年通りすべての神舞(かんめ)が奉納され、同時に次の世代に伝統を継承することができてほっとしています。でも、降臨された神様と観客が一緒にいての神舞ですね。去年は寂しかったです」とおっしゃっています。

 

山村留学がYouTube配信に繋がった銀鏡(しろみ)神楽(西都市)

そんな2020年の神楽事情の中でドラマのあった神楽がありました。

NPO法人東米良創生会提供

銀鏡神楽は、NPO法人東米良創生会を窓口にして、ライブ配信が行われました。三十三番ある舞いのうち、一番は前日に舞われるので、二番から三十三番までを配信1日目の16時30分から配信2日目の昼前までが完全中継されたのです。

銀鏡地区では、少子化による廃校を防ぐために1995年から地区住民を里親として域外の子どもたちを受け入れ、地元の小中一貫校に通わせる山村留学が行われていました。山や川で遊び自然を身近に感じながら、地域住民全員で子育てを見守る古き良き時代の生活があるのです。

銀鏡神社と神楽保存会は、神楽は神事なのですべてこれまで通り行うと決めていましたが、コロナ禍にあって神社には人を招かない方針を固めていました。

そんな中、無観客神楽のことを知った山村留学1期生で、現在福岡県で映像関係の仕事をしている卒業生が、ぜひオンライン配信をしようと提案。オンラインならということで実施されることに。

ライブ配信は、カメラ4台により見どころを熟知した卒業生のカメラワークで本格中継されました。9894回の視聴回数を記録した中にはカナダの視聴者もいました。ライブチャットは盛り上がり、北海道からは、おばあちゃんが銀鏡出身ということで、懐かしい神楽を見て若いころの思い出話に花が咲いたという嬉しい知らせもありました。企画は想像をはるかに超える成果をもたらしました。

NPO法人東米良創生会(http://www.higasimerasouseikai.com/)の石川さんは、

「私たちは、東米良を応援、サポートする団体です。今回のYouTubeライブ中継は、銀鏡地区が長年力を注いできた山村留学のおかげです。いつもまかないをして接待に回っていた地元の方々は『初めて神楽を全部見た、しかも温かい部屋で』と大変喜ばれていました。YouTubeサイトは、しばらくの間視聴可能にしていたので、舞手も自身の舞いを初めて家族と一緒にご覧になられていましたよ。しかし、舞手は、『途切れなく舞いをライブ配信されたので、これまでで一番緊張しましたよ』と苦笑いしていました」と大成功のライブ中継を語ってくださいました。

最後に

インタビューにご協力くださった皆様、ありがとうございました。2021年の神楽は、これまで通りに戻りますように心よりお祈りしています。

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