夏の伝統行事といえば“七夕”。「短冊に願いを書くと叶う」「織姫と彦星が会える、年に1度の日」というロマンチックな伝承もあり、毎年テレビで特集が組まれるほどの人気行事です。最近では“映えそうめん”という新たな一面もうまれ、老若男女多くの方に親しまれています。そんな七夕行事ですが、あの「青森ねぶた祭」の、華やかな山車とも関連があること、ご存知でしたか??
青森ねぶた祭の起源は、“眠り流し” ??穢れと共に灯籠を流す、古来の風習
そもそも七夕とは、五節供の行事の一つ。古代の日本では、奇数が重なる日は縁起が良い反面、悪霊がつきやすい日である、とされてきました。悪霊をつくのを防ぐため、それらの日付に、川の水で身を清め自然の供物をささげて平穏を祈る、節句行事が盛んとなったのです。また東北地方などでは、川の水に浸かるのではなく、人形を代わりに流すといった独自の文化が存在していました。
秋の収穫時期を目前に控えた7月7日・七夕においては、収穫の妨げになる眠気も悪霊の仕業とし、稲作が盛んだった東北地方では、眠気という悪霊をを流す「眠り流し」風習として浸透していきます。やがて人形は、神の依代とされる“竹”や、神聖とされた火を灯す“ローソク”・“紙”を用いて作られた、“灯籠”へ変化、また地域によっては手軽な“提灯”へと変化していきました。
それらがより華やかに、巨大化し続けた結果「青森ねぶた祭」の山車へと発展していった、といわれています。フィナーレで山車を海に流すのは、眠り流しの名残とも。また「ねぶた」は「眠たし」が語源とされ、名称からも眠り流しとの関連性をうかがい知ることができます。また似たような風習として、ご先祖の霊をあの世へ送り届ける「灯籠流し」という風習も存在。七夕は、お盆が近いこともあり、しばしば共同で行われることもあるようです。
灯籠が主題 全国の七夕祭りを紹介
「青森ねぶた祭」同様、全国には“灯籠”や“火”を重要視したお祭りが数多く開催されています。なかには“火”にフォーカスした特徴的なものお祭りも存在。今回は興味深い5つのお祭りをご紹介していきます!
ローソクもらい(北海道)
“ローソクもらい”は、ちょっと変わった北海道における七夕の風習。“日本版ハロウィーン”ともいわれています。毎年8月7日(7月7日の地域も)になると、子どもたちが提灯を持ち「ローソク出せーローソク出せー 出さないとかっちゃくぞ おまけに噛みつくぞ」と歌いながら、地域を練り歩く光景を今でも見ることができます。(歌の内容は地域によって差異があります。)現在では、提灯がLEDにかわったり、遠く赴かなくなったりなど細部に変化があるようです。
大人は歌が聞こえると、ローソクと共に大量に買い込んでいたお菓子を少しづつ子どもたちに渡していくとのこと。まれにお菓子がない家からお小遣いをもらったり、風習を理解していない家だとローソクだけを渡され、子どもたちはがっかりしてしまうそう。
かつて「青森ねぶた祭」では、光源に多くののローソクを用いており、季節になると近隣の家々にローソクと寄付を募っていました。ローソクをもらう、という部分のみが北海道に伝わり変形した結果、「ローソクもらい」という風習が誕生した、といわれています。
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日付・8月7日(地域によっては7月7日)
会場・北海道全域(防犯の面から現在は中止している地域もあるとのこと。事前にご確認ください。)
大船渡夏祭り(岩手県)
岩手県大船渡市の海上で行われる、伝統的な七夕祭り。電飾できらびやかに飾り付けられた漁船が湾内をパレードします。短冊やぼんぼり、吹き流しなど、飾りつけの種類はさまざま。なかには、3万枚の短冊をつけた竹竿をたてる“バレン船”という役割もあるそう。3万人もの願いを背負うと思うと、誇らしく思うと同時に足がすくんでしまいそうですね……。
水中花火など約5千発、港をおおう約80基もの“かがり火”、そして会場で揺らめく“漁火”が幻想的に調和し、圧巻の光景を生み出します。
2019年には、もともとの開催地である、被災の大きかった大船渡中央へ会場を戻したことでも話題となりました。
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日付・毎年8月上旬
アクセス・岩手県大船渡駅BRT(バス高速輸送システム)「大船渡駅停留所」から徒歩3分
東北自動車道「一関IC」から県道18号・国道345号・45号経由で、約1時間40分
会場・岩手県大船渡市 大船渡湾内
七夕岩まつり(岐阜県)
高山市松之木町で行われる、一風変わった七夕まつり。高山市の民族文化遺産にも制定されている、五穀豊穣を祈る伝統的な行事です。町内を流れる大八川の両岸に、“男岩”と“女岩”が存在。二つを合わせて“七夕岩”と呼称されています。出店やステージなどが楽しめるほか、お祭りの終盤には、両岸の七夕岩を約250メートルにも及ぶ大しめ縄で結びます。20分ほどかけ地上約25メートルまで持ち上げられた大締め縄、その大迫力は想像に難くありません。
大しめ縄は、町内で収穫されたわらで作られ直径は10センチほど。行燈のほか、わらで編まれた馬と糸車により装飾されます。馬は男の子、糸車は女の子、をそれぞれ表し、町内で生まれた子どもの数だけ製作・飾り付けられ子孫繁栄を願います。
日付・毎年8月上旬
アクセス・高山駅よりタクシーなど
会場・岐阜県高山市松之木町
北野七夕祭(京都府)
8月7日に行われる御手洗祭り。作物の順調な生育や、民衆の無病息災を願う、古来節句の意味合いを樹脂下伝統的な行事です。祭神・菅原道真公へ、松風の硯や、夏野菜、そうめん、御手洗団子などが供えられます。境内のライトアップや、国宝・御手洗殿石撮通り抜け神事など、北野天満宮ならではの魅力がたくさん。なかでも御手洗川足付け燈明神事は、明治時代に簡略化されてしまったもの復刻した、由緒ある風習ものとなっています。
内容は、入り口でろうそくをもらい、御手洗川を素足で渡り川の中腹にある種火をつけ、奉納台に奉納する、というもの。奉納台としてかかる料金は300円。ろうそくは5色あり、それぞれ、芸道上達・縁結び・商売繁盛・真願成就・健康回復、の意味を持っています。
2027年には道真公没後1125年を迎え、半萬燈祭が行われる予定。道真公の「和魂漢才」や「誠の心」を伝える大切な行事であり、その行事に向けて、古来の風習の復刻が進められているとのことです。
日付・毎年8月上旬〜中旬
アクセス・京福電車白梅町駅より徒歩5分
名神高速道路南インターまたは、東インターより約30分
会場・京都府北野天満宮
山口七夕ちょうちん祭り(山口県)
山口県、夏の風物詩ともいわれる代表的なお祭り。期間中、山口市の商店街や、パークロード、亀山公園などが、合わせて10万個ほどもの提灯で彩られます。500個もの提灯でできた“提灯山笠”や、アーケード内をぼんやり照らす“ちょうちん笹飾り”など、幻想的なちょうちんのイベントは必見。
始まりは、約450年前。山口一帯を治めていた大名・大内盛見が父母の冥福を祈るために、笹竹に高灯籠をともしたことから、“山口七夕ちょうちん祭り”の歴史が始まりました。やがて時が経ち、高灯籠は手軽な提灯へと姿を変え、現在の形となっていったのです。大内盛見の影響はとても大きく、“ちょうちんツリー”と呼ばれる催し物は、大内盛見がフランシスコ・ザビエルのキリスト教苦境を許し、山口県で日本初のクリスマスミサが行われた史実にちなんでいます。とても懐がおおきく、情け深い大名様だった頃が想像できますね。ここまで大きなお祭りに拡大したことから、民衆からも親愛されていたのでしょう。
日付・毎年8月上旬
アクセス・JR山口駅より徒歩5分
中国自動車道小群ICから20分
会場・山口県山口市中心商店街・パークロードなど
ほかにも全国各地で、七夕と灯籠・提灯を結びつけたお祭りや、現在ではスカイランタン祭りとして新しい取り組みを始めている地域もあります。今年の七夕は、様々な想いを込めて幻想的な“燈り”を楽しんでみてはいかがでしょうか?