「くんち」や「おくんち」という言葉を聞いたことがありますか?
秋になると、その年の収穫を神様に感謝し、山車(だし)を曳いて練り歩いたり踊りを奉納したりしますが、その秋祭りを九州北部では別名「くんち」と呼びます。地域性や歴史を重んじているお祭りで、どれも独自性があるものばかりですが、中でも有名なのが
◎長崎くんち(長崎県長崎市)
◎博多おくんち(福岡県福岡市博多区)
◎唐津くんち(佐賀県唐津市)
の3つで、「日本三大くんち」に数えられています。この記事では、それぞれのお祭りについて見所や由来などを紹介していきます!
(この記事は2022年に公開されたものを再編集しています。2023年10月4日 編集部更新)
「くんち」の言葉の由来は?
「くんち」という響きがちょっと不思議なこの言葉ですが、一体どこから来たのでしょう?
語源には諸説ありますが、最も有力なのは祭り開催日の「重陽(ちょうよう)の節句」の日付に由来するというもの。毎年9月9日は重陽の節句で、旧暦のこの日は邪気を祓って無病息災を祈り、秋の収穫に感謝するお祝いや祭りが各地で行われていました。開催日を方言で「九日(くんち)」「お九日(おくんち)」と呼んでいた九州北部では、それが祭りの名前として定着したという説です。
他には、収穫物を神様に供える日「供日(くにち)」が転じたという説もあります。
重陽の節句については下記で詳しく紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
では、3つの「くんち」をそれぞれ詳しくご紹介します。
長崎くんち
長崎くんちは、長崎市で「おすわさん」と呼ばれ親しまれる諏訪神社の秋季大祭です。例年10月7日~9日の3日間で開催されます。
祭りの始まりは、1634年に2人の遊女が諏訪神社で謡曲「小舞」を奉納したこととされています。以降、長崎奉行の援助によって年々盛大になり、出島に来航したポルトガルやオランダなどの西洋文化や、中国・ベトナムなどの文化の影響を受けた「奉納踊」と呼ばれる演し物(だしもの)を祭りに取り入れるようになり、現在の形に近づきました。
祭りの最大の見所は、やはりこの奉納踊。
代表格の「龍踊(じゃおどり)」をはじめ、「御朱印船」「鯨の潮吹き」といった曳き物や、屋根に大きな座布団を積み重ねた太鼓台を、太鼓の打ち手もろとも宙に放り上げる勇壮な「コッコデショ」、長崎に漂着した二人のオランダ人を模したユニークな「阿蘭陀万歳(おらんだまんざい)」など、魅力あふれる演し物が満載です。
これらの奉納踊は、1979年に国の重要無形民俗文化財にも指定されていて、祭りの期間中は諏訪神社や八坂神社のほか、中央公園くんち観覧場などでじっくり楽しめます。また、市内中心部の事業者や店先、家の玄関先で短い踊りやお囃子を演じる「庭先回り」は、誰でも無料で見ることができます。
現在、奉納踊を行う団体「踊町」は長崎市内に全部で58町。全町が7つの組に区分され、一年に一組ずつ当番となって奉納踊を披露します。ですので、毎年違う踊町の演し物が楽しめ、7年ですべての奉納踊が見られることも特徴の一つです。詳しくは下記の記事もぜひご覧ください!
◎2023年の開催は?
コロナ禍などの影響を受けて中止が続いていた長崎くんちですが、ついに4年ぶりに復活します!日程は例年どおり10月7日(土)~10月9日(月・祝)の3日間。出演する踊町と演し物は以下のとおりです。
桶屋町:傘鉾・本踊(ほんおどり)
船大工町:傘鉾・川船(かわふね)
丸山町:傘鉾・本踊(ほんおどり)
本石灰町:傘鉾・御朱印船(ごしゅいんせん)
栄町:傘鉾・阿蘭陀万歳(おらんだまんざい)
万屋町:傘鉾・鯨の潮吹き(くじらのしおふき)
演し物ごとの踊場での披露時刻や有料席観覧券、庭先回りの場所と時間など、詳細と最新情報は、長崎くんち公式サイトからご確認ください。
博多おくんち
福岡市博多の総鎮守で、博多っ子からは「お櫛田さん」の愛称で親しまれている櫛田神社。毎年7月に行われる奉納行事「博多祇園山笠」は、町中が熱狂する祭りとして有名ですが、毎年10月23日~24日に行われる秋季大祭が「博多おくんち」です。
祭りの歴史は古く、1200年以上前から始まったとされています。毎年11月23日に行われる、その年の新穀を神様にお供えして感謝する、新嘗祭(にいなめさい)が起源となっていますが、1953年から時期を前倒しにして、名称も現在の博多おくんちに変わりました。
期間中は様々な神事が執り行われますが、牛に曳かれた神輿を中心とした行列が約5kmにわたって町を巡行する24日の「御神幸」が最大の特徴にして見所です。
例年、牛車の後ろに獅子頭や稚児行列、ミス福岡が乗ったオープンカー、ブラスバンドが続き賑やかな「おくんちパレード」を繰り広げ、博多の秋の風物詩となっています。
また、櫛田神社の境内では、23日の昼間に新鮮な魚や野菜が揃う五穀豊穣市を開催。夕方からは2,000個以上の灯明を使って地上絵を描く「千灯明」が行われます。
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◎2023年の開催は?
今年は、例年どおり10月23日・24日の2日間で催行される予定です。
10月23日(月)は11時から秋季大祭、五穀豊穣市は終日開かれ、夕刻からは「千灯明」が神社境内で行われます。最大のみどころ「御神幸(おくんちパレード)」は、10月24日(火)の14時に櫛田神社を出発し、博多の街を巡ります。
また、10月23日の10時~16時には、櫛田神社の参拝者に「おくんち甘酒」が振る舞われる予定です(無くなり次第終了)。詳細は、福岡市公式シティガイド「YOKA NAVI よかなび」などでご確認ください。
唐津くんち
唐津くんちは、佐賀県唐津市で例年11月2日~4日に開催される、唐津神社の秋季例大祭です。1958年に佐賀県の重要有形民俗文化財、1980年に国の重要無形民俗文化財に指定されており、例年、唐津くんち目的の観光客が約50万人も訪れます。
最大の見どころが、江戸時代から続くお神輿の渡御と、お神輿にお供する個性豊かなヤマ(曳山)の数々。最古の曳山は、文政2年(1819)に氏子町の一つである刀町によって奉納された赤獅子といわれています。それ以後、明治9年までの57年間に15台の曳山が製作されました。そのうち14台が150年近く経った今も大切に受け継がれ現存しています。
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祭りは1日目の夜7時半の宵曳山(よいやま)から始まります。堤灯の灯りがともった曳山が、旧城下町を巡行しながら唐津神社に集合する光景はとても幻想的です。
2日目は「御旅所神幸(おたびしょしんこう)」が行われ、唐津くんちの最大の見どころである「曳き込み」を目当てに、県内外から大勢の見物客が訪れます。お神輿と曳山が目指すお旅所は西の浜にあるため、車輪が砂地に埋もれなかなか進みません。曳子たちの掛け声は最高潮に達し、豪快に曳き込む様子はまさに圧巻です。曳山は一番曳山の刀町・赤獅子から十四番曳山の江川町・七宝丸まで、制作年代順に並んで旧城下町を回ります。
3日目の翌日祭では、御神幸とほぼ同じ巡路で旧城下の東西約8kmを「エンヤ、エンヤ」「ヨイサ、ヨイサ」という威勢のよい掛け声とともに回ります。
◎2023年の開催は?
今年も例年どおり、11月2日~4日までの3日間に開催予定です。
曳山巡行の時間は、宵曳山が11月2日(木)の19:30~22:00、御旅所神幸は11月3日(金・祝)の9:30~16:30、翌日祭が11月4日(土)10:00~16:40の予定となっています。最大の見どころである明神台(西の浜お旅所)への曳き込みは11月3日の12:00~、曳き出しは15:00~行われる予定です。
詳細や最新情報は、唐津市公式サイトや唐津観光協会ホームページなどでご確認ください。
まとめ
日本三大くんちには、毎年多くの観光客が訪れます。それぞれ内容がだいぶ異なりますが、秋の風物詩としてどこも風土の魅力をたっぷりと感じられるお祭りばかりです。ぜひ一度訪れてみてください!