写真 伏見万灯流し
お盆!…とは、いったいどういう意味?
行事がいろいろある京都に住んでいてもそういえば、きちんとは知らない。
んー…。それなら、お坊さんに聴いてみよう!
今回は京都・愛宕念仏寺(おたぎ ねんぶつじ)のミュージシャンでもある西村公栄和尚と、奈良・長谷寺のインスタの撮影も行う広報担当の僧侶・瀧口さんという楽しいお二人にお盆についてお話を伺いました!
目次
◆ 地蔵盆の起源「モクレン尊者」
お盆について京都愛宕念仏寺住職 西村公栄さんにお尋ねしたところ、「私がBGMを担当した朗読劇の録音があります」とお盆のお話を聴かせていただきました。
目連尊者 ( 西村公朝 画…多くの仏像を修復した仏師/愛宕念仏寺先代住職)
お釈迦さま お諭しの物語「モクレン尊者」
お釈迦様の代表的なお弟子さんの一人、「目連尊者(もくれん そんじゃ)」のお話です。
祇園精舎でモクレンさんが瞑想しておりますと、亡くなった優しい母の姿を思い出しました。
一目、母に会いたいと願い、神通力を使ってお母さんに会いに行きました。
どういうことか、お母さんは地獄におり、物を食べようとすると、口を開ける度に何度もごはんは燃えてしまうのでした。
みじめな母の姿を見て深く悲しんでいるモクレンさんに閻魔様が言いました。
「あなたの母は立派な家にいたのに、一度も人に施しをしたことがなかった。今は地獄でその罪の償いをしているのだ。」
モクレンさんは急いでお釈迦様に助けを求めに行き、お母さんを救うにはどうすればよいのかを教わりました。
こうしてモクレンさんはお釈迦様の教え通りに7日の間お経を唱え続けて、道行く全ての人々に食べ物を施しました。これによって、お母さんをはじめ大勢の地獄で苦しむ亡者たちを救い、極楽へと導きました。
お釈迦様 (仏師 西村公朝 画)
◆地蔵盆は夏休み最後の行事
西村和尚
地蔵とは「地に蔵する仏」という名前で「地面」そのものを言います。大きく言えば「地球」ですね。
国や信仰の違いに関係なく、地球人であれば全ての人が、この大地によって守られているのです。
ですから、地蔵縁日である8月24日には全ての人が、この地球の御加護に感謝しなければならないのです。
地蔵盆は「子供がお菓子を食べて遊ぶ行事」というイメージで、町内でブルーシートやゴザをひいて駄菓子を食べたり、ゲームをしたりという京都生まれの風習。主に今も関西で行われています。
お地蔵様にお供えをしたり、新しい前掛けやお化粧(彩色)をしたりする行事です。
これは昔は小さな子供の生存率が低かったことから始まっています。
水子となった胎児・・生まれて間もなく亡くなった新生児・・幼児期に病気で亡くなった子供たち・・など、病院の無かった時代は子供が大人になること、それ自体奇跡のようなものでした。
この死んでしまった子供を供養したいという親心から地蔵盆があります。
お地蔵さまは地獄で子供たちが鬼にいじめられないように見守り役に巡回されています。
西村公朝 画 地蔵菩薩 ( 西村公栄・一口法話より )
なぜ罪もない幼子が地獄にいるかというと、親よりも先に子供が死んだとなると親の悲しみは計り知れないものになるのです。このことがとても大罪なわけですね・・・。
そこで子供が掛けていたヨダレカケに子供の名前を書いてお地蔵様に奉納するわけです。
そうするとその匂いと名前を探してお地蔵さまが地獄で見つけて救い出してくれる・・というストーリーです。
この風習がお地蔵さんは子供を守ってくれる有り難い仏様・・というイメージに発展したのです。
一つ積んでは父の為 二つ積んでは母の為・・ と泣きながら子供たちは地獄の河原で小石を積みます。これは何も罪滅ぼしができない子たちにとって遊びながらできる唯一の親への感謝の気持ちを表しています。このせっかく頑張って積み上げた小石の灯篭を横から鬼が意地悪をして崩してしまうのです。これを見張っているのが地獄のお地蔵さんの見守り隊なんですね・・。
京都「地蔵盆」参考資料:
京都をつなぐ無形文化遺産「京 の 地 蔵 盆」~地域と世代をつなぐまちの伝統行事~
ー親の愛に泣ける…!
西村和尚、やさしい演奏とお話、お父様の素敵な絵をご提供いただきありがとうございました!
写真:愛宕念仏寺提供
◆お坊さんに聞いてみた「子供にお盆の風習をどう説明したらいいの?」
ーここからは奈良・長谷寺の僧侶・瀧口さんにお盆についてのお話を伺います。
奈良 長谷寺 瀧口さん(以下、瀧口さん)
お盆ですが、実はこの風習は日本古来の祖先信仰と道教の旧暦の7月に地獄の蓋が開くという慣しと仏教の拝む事が合わさった習慣です。
一言で言うなら「ご先祖さまが帰ってくる一週間」。ディズニー映画の「リメンバーミー」の”死者の日”のような感じです。
◆お坊さんに聞いてみた「コロナで帰省出来ないかも!どうしたらいい?」
瀧口さん
帰省が出来ない場合、もしお墓のあるお寺があるのなら、いくらかお布施を送って「御供養してください」と相談するのも一つの方法だと思います。
しかし今回は前例がないのでケースバイケース。それぞれの状況で最善策が違いますね。ご自宅に拝む対象を設けて拝むのも良いでしょう。
いずれにせよ、ご縁のあるお寺さんと相談したいところです。
写真:壬生寺 盂蘭盆 万燈供養会
◆地獄の蓋が開く!二十四節気とお盆
瀧口さん
お盆は地獄の蓋が開くのです。
二十四節気「節分」は災厄の象徴を”鬼”として厄を払いますが、「お盆」は死んだ人の魂を亡者”鬼”として、目連尊者の故事に倣い”施餓鬼(せがき)”をしています。
ちなみにお盆(盂蘭盆)の語源がウランバーナという、地獄の概念が初めて取り入れられた、古代ペルシャの宗教、ゾロアスター教の儀式から来てると言う説もあるそうです。
節分は季節の変わり目の事で「体調が崩れやすいのでそれに気をつけて」という意味があるとか。
豆まきをする2月3日の立春の前日の他に、立夏、立秋、立冬のそれぞれの前日があります。
お盆は地域により7月だったり8月だったりします。
◆「ご先祖さまを大切に」の意味は家族愛!
瀧口さん
実際、ご先祖さまを大切にと言われても意味がわからないのではないでしょうか。
ご先祖の価値は昔の封建的な社会ではすごく重要だったのです。
ご先祖はその家の歴史そのもので、家父長制とか封建社会とか「家」を大切にしてた時代にはご先祖は言われなくても皆、大切だとわかってたのです。
写真:宵弘法 嵯峨の送り火 旧嵯峨御所 大覚寺門跡
瀧口さん
お盆は先祖供養をする週間には間違い無いのですが、その方法が沢山ある感じですね。
先祖供養の方法が「こんな故事があるからこっちの方がより功徳がある」「いやいやこう言う話もある」と、地域や宗派で供養の方法は千差万別。(例/京都であれば五山の送り火や地蔵盆など)
花火も元は先祖供養で、熊野の花火は今でも施主の名前をアナウンスしています。
ーなるほど…!瀧口さん、今回もわかりやすい解説ありがとうございます!
今と昔の価値観の違いや、難しい宗教用語の壁もあるため、仏教の世界はお坊さんに解説していただくと非常にわかりやすい!!と実感いたしました。
ご先祖=家族愛…❤お坊さんは現世との通訳者ですね。
そしてオマツリジャパンで花火といえばもちろん、花火専門ライター蛭田さん!
お盆と花火の関係について伺ってみました。
蛭田さん
「熊野の花火は慰霊の花火です。また周辺の花火大会は大なり小なり、慰霊の花火ですね。
先祖も勿論あると思いますが、追善供養と言って身内で亡くなった方へが多いです。
花火大会は基本的にお盆のためです。」
なるほど!花火が夏に多いのはお盆との関係もあるのですね。
蛭田さん、ありがとうございました!また花火会場でお会いしましょう!
写真:五山の送り火
◆京都のお盆
京都在住の筆者の感覚は7月の祇園祭が終わると、次はお盆がやってくる。
お精霊(おしょうらい)さんを迎える「六道まいり」が始まり、「灯籠流し」や「松上げ」、「五山の送り火」で冥途へ送り届け、子供のお盆「地蔵盆」で締めくくるという感じです。
また盆踊りの元は一遍上人発祥の踊り念仏と言われており、京都では六歳念仏踊りが行われます。
お盆を迎えると「夏が終わる」と感じます。
京都の最後の夏祭りは松尾大社の八朔祭。これから秋がはじまります。