2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2022年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
奇祭の新星
「きえええ!」「あああ!」。赤や青の布をつなぎ合わせた幕の向こう側から、おどろおどろしい叫び声が聞こえてくる。通天閣のふもと、新世界市場で毎年9月に行われる「セルフ祭」の成功を祈願する儀式の一幕である。祭りには「奇祭」と呼ばれるジャンルがあるが、セルフ祭はことさら奇妙で刺激的な祭りだろう。
会場となる商店街の入り口には、手書きの看板とともに巨大で真っ白な腕のモニュメントが飾られている。祭りの始まりは昼過ぎ。「トン、トン、トン」と太鼓の音が聞こえると、ボロボロの和傘を手にした女装のマーメイドや白塗りで頭にティッシュを乗せた男、鐘を持ってジーパンを履いた犬など、あっという間に仮装した30人ほどが集まり、一瞬にしてそこは異世界に変わる。
「己を祭れ」というコンセプトに合わせて誰でも参加できるのが特徴で、美容師による路上ヘアカットやニートによる占いなど、参加者が思い思いの自己表現をするユニークなお店が会場に並んでいる。
「一緒に風呂に入らんか?」という声に目を向けると、頭にタオルを乗せたおじいちゃんがブリキの浴槽に入っている。筆者は促されるまま浴槽に入り、一緒に写真を撮ってもらった。いつの間にかセルフ祭の空気に飲まれてしまった。
この他にも「ふんどしカットの儀式」「えのぐ男」「インド相撲」など、タイトルだけで怪奇極まりない演目が目白押しだ。祭りの最後を飾るのは「UFOの儀」。会場が一体となり謎の呪文を繰り返し叫ぶ。こんな光景を見たらUFOの方から逃げ出すだろう。
実はセルフ祭は10年前、とある芸術家が地域の活性化とアーティストの表現の場を求めて始めたものだそうだ。2021年はコロナの影響で「神事のみ」を開催したという。表面上の奇抜さだけでなく、肩をすかされるような真面目さやこだわりが垣間見えるのもまた魅力である。
今回は文字だけで魅力を伝えられた自信が全くないが、ぜひ一度現地に足を運んでほしい。