2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
ユニセックスな和の仮面舞踏
今回は、赤い着物に全員仮面という斬新な見た目とユーモラスな踊りで人気の宮崎の「日向ひょっとこ夏祭り」を紹介しよう。日向ひょっとこ夏祭りとは、宮崎に伝わるひょっとこ踊りを競い合う祭りだ。前夜祭で個人戦、本祭で団体戦を開催。ひょっとこ面のほかにも、おかめやきつねの面をかぶって踊る。それにはこんな由来が関係している。
昔、ひょう助とおかめという夫婦がいたが、子宝に恵まれず、毎朝お稲荷様にお参りしていた。ある日、きつねの姿で現れたお稲荷様がおかめの美貌に目を奪われ、気を引くために踊り出す。つられておかめも踊り出し、心配で見ていたひょう助と村の若者たちもいっしょに動き出したという。
踊りの振り付けは、明治時代の眼科医・橘公行が伝授。江戸時代の里神楽がベースともいわれる踊りのリズムはいたってシンプルだ。テンテコテン、テンテコテン、テンテコテンテコテンテコテン。繰り返されるこのリズムに応じて首と手と腰をくいくいっと動かし、ステップを踏んで踊る。単純な動きだが、なかなか奥が深い。手つきに、腰つき。シンプルな振り付けでも名人級の踊り手はキレが抜群だ。それが赤で統一された衣装による群舞となると不思議な倒錯感も出てくる。
この踊りが紛れもない仮面舞踏である点も興味深い。しかも、きつね・おかめ・ひょっとこ面の下は老若男女関係がないのだ。実際、私が見学した際の個人戦、おかめの部の優勝者はうら若き男の子だった。そろいの真紅の衣装に身をつつみ、老いも若きも性別も関係なく、素顔を隠して祭りで踊り狂う。そこには確かに祭りの根源的な魅力があるではないか。
伝統継承と観光振興を目指して、1984年から始まった「日向ひょっとこ夏祭り」は、例年8月初旬に開催。宮崎以外でも出張公演として見られる機会もあるだろうが、やはり本場は規模と熱気が桁違いだ。ぜひ一生に一度は本場、宮崎で体感していただきたい。