関西地方の空の玄関口、関西国際空港。
海上の人口島へ続く連絡橋のたもとで、毎年秋に「泉州YOSAKOIゑぇじゃないか祭り」が開催されています。今年で19回目の開催、参加チームは95チームと大阪でも最大級のよさこいイベントです。
京阪神の都心部から一見遠いこの地になぜこれだけのチームが集まるのでしょうか。
取材を通して見えてきたものがありました。
「第19回 泉州YOSAKOIゑぇじゃないか祭り」のレポートをお届けします。
目次
泉州YOSAKOIゑぇじゃないか祭りとは？
まず、泉州YOSAKOIゑぇじゃないか祭り（以下、ゑぇじゃないか祭り）の基本情報はこちら。
開催日：2023年10月15日（日）10時～18時
開催場所：大阪府泉佐野市りんくうタウン近郊
参加チーム：約100チーム、踊り子2,500人
2004年に始まったこのお祭り、当時泉佐野市は財政難に苦しんでいました。そんな地元に活気と元気を取り戻そうと泉佐野市のよさこいチームが呼びかけ、「にぎわい夢創りプロジェクト実行委員会」を設立。民衆が世直しを求めて発生したという「ええじゃないか」に象徴される踊りのパワーにあやかり「ゑぇじゃないか祭り」を旗揚げしました。大阪の人情溢れる良いお祭りと評価され、年々参加チーム数も増加し、秋の大阪を代表する笑顔と活気にあふれたお祭りへと成長しています。
そんなゑぇじゃないか祭りの最寄駅は、「JR・南海りんくうタウン駅」。周辺にはアウトレットやショッピングモール、人気ホテルやレストランが並び、多くの家族連れや外国人観光客が訪れる人気のエリアです。イベント当日も大変賑わっていました。
演舞会場は、りんくうタウン近郊に6箇所設けられており、全ての会場は徒歩圏内で移動することができます。ショッピングモールで休憩するのも良いですが、メイン会場である「りんくう野外文化音楽堂」にはたくさんのキッチンカーが並んでいて、よさこい演舞を見ながらB級グルメなどを楽しむことができます。
また、りんくうタウン駅の構内やショッピングモールの観覧車広場にも会場があり、多くの通りすがりの方々も演舞を観覧していました。
観覧車前の広場も演舞会場に。2階からも多くの方が顔を覗かせています。
抜群のロケーション、観客にも踊り子にも人気の舞台
ゑぇじゃないか祭りの特徴として、大阪では珍しく、本格的なよさこい流し踊りができる会場があることが挙げられます。というのも大阪都心部では広々としたイベントスペースが少ないか、2車線ほどの幅の道を100メートル以上確保して踊りの会場にしてしまうというのは難しいのかも知れません。しかしゑぇじゃないか祭りには2つもパレード会場が設けられています。
その１つがりんくうタウン駅から海岸へ面したりんくうパークへ向かう途中の大通りに設けられた「海への道会場」。ここで演舞を見れたチームは「よさ朗」さん。高知のよさこい祭り、全国大会にも参加しているチームです。
よさ朗は同志社大学の学生で構成されているチームですが、関西で高知系の学生チームといえば？と言われると最初に名前が挙がる歴史も実力もあるチームです。よく揃った踊り、鳴子の音、素敵な笑顔、どれをとっても魅力的で会場の両サイドのお客さんを楽しませてくれました。
しっかり揃った隊列が、より演舞をキリッと締めているなと感じます
鳴子隊の後ろには4本の旗隊、こちらは迫力ある踊りで鳴子隊を後押し
もうひとつのパレード会場はりんくうパークの2つの緑地を結ぶ海岸沿いの連絡通路を踊り抜ける「SEA SIDE会場」、会場からは関西国際空港を望むことができます。
この会場で印象に残ったチームが「Daisy」さん。このチームは気軽に地域の子どもたちが参加できるようにと、ゑぇじゃないか祭りが企画した公式キッズチームです。よさこい未経験の子どもたちを対象にしており、なんと衣装などは全てレンタルで対応できます。
デビューということですが、堂々とした踊りを披露してくれました。フレッシュな気持ちでよさこいを楽しんでいるんだなと可愛らしい笑顔からそんな想いが伝わってきます。
来年以降、Daisyで踊った多くの子どもたちが地元のよさこいチームに参加すると嬉しいですね！
大旗の「ゑ」の文字がゑぇじゃないか祭り公式チームの証！来年もぜひよさこいを踊ってほしいですね！
他にもゑぇじゃないか祭りならではの特徴的な会場があります。それは特に人気が高い「石舞台会場」です。「海への道会場」を超えた先、海を見渡せる展望広場に舞台が用意されています。奥にはりんくうパークのシンボル「LOVE RINKu」のモニュメント、さらにその背後には関西国際空港を望むことができる抜群のロケーション観客席は、階段状になっているため観客としてもゆっくりと演舞を楽しむことができるのでオススメの会場です。
ステージの背後に広がる海に陽の光が反射、ステージをより一層輝かせます
ここでご紹介するチームは「なるたか」さん。東京都を本拠地とするよさこいチームで、そのコンセプトは”伝統と流行の融合”。10年も前にいち早くよさこい楽曲にEDMを取り入れるなど、よさこい界隈に新しい風を吹かせ続けています。また踊り自体の高いパフォーマンス性が高く評価されており、よさこい全国大会を2連覇するなど素晴らしい成績を残し続けています。また数年前からは関西支部も立ち上げたこともあり、このゑぇじゃないか祭りに参加しています。
衣装と背景の色合いが美しい。ノリのいい楽曲に観客も心を掴まれていました
観客側から見てもお客さん一人一人の顔が見える。自然と笑顔で踊れます。
このようにどの会場もたくさんの観客が集まっていましたが、メイン会場も魅力的。
ライトアップ効果も相まって、各チーム素晴らしい踊りを披露してくれました。
大人数の参加でお祭りに花を添えたのは地元大阪の夢源風人(むげんかじぴとぅ)のみなさん。
3色展開のカラフルな衣装がライトに照らされて非常に美しい。迫力ある演舞で会場を大いに賑わせていました。
独特なフォーメーションや整った踊り、そして笑顔が魅力のよさこいチーム。今後も注目していきたいと思います。
地元大阪の夢源風人。おそらく参加チームで最多人数！
観客の上を通る大きな旗。ついつい「おぉ〜」と声が出てしまいます
そして今回もっともメイン会場を沸かせたのがよさこいの本場、高知県から参加したTACYON。
今年のよさこい祭りでも銀賞を受賞し、全国的にも人気のあるチームです。
今年のテーマは「鍵屋・玉屋」と花火を題材にしており、高知のよさこい祭りでは途中全員が提灯を持つパートで照明を消し、提灯のみを光らせ、花火を表現するシーンが話題になりました。
そんなこともあり、日が完全に暮れたタイミングでメイン会場に登場したTACYONにゑぇじゃないか祭り側が粋な演出。
点火の瞬間にステージの照明を消し、見事ステージ上で花火を見せることに成功。
観客のボルテージも最高潮に達しました。
魅力的な会場、そして踊り子・ファンに寄り添う運営側の姿勢がゑぇじゃないか祭りに人が集う理由の一つかもしれません。
遠方からでも参加しやすい。だからこそたくさんの地域からチームが集う
ここ数年のゑぇじゃないか祭りの傾向として、参加チームが増えるだけでなく、参加地域のバリエーションも広がっているなと感じます。今回も兵庫県や山口県、さらには本場高知県からも魅力的なチームが初参加し、お祭りを盛り上げていました。
東京からの初参加のチーム”藍なり”で踊っていたお兄さんにお話しを伺うと「お祭りの前日に飛行機で来阪した」とのこと。
「最初は大阪の南の方で行きづらいかなと思っていましたが、空港からだとアクセス抜群。ホテルも大阪市内より比較的空いていたので安心しました。東京からでも参加しやすいイベントだなと思います」
と、遠方からでも参加しやすいメリットを教えてくれました。
また同じく東京のよさこいチーム”なるたか”でMCをしているお兄さんは、お祭りの後に飛行機で帰るのだそう。
「会場に近くに温泉もあるので、しっかり汗を流して気持ちよく帰れます。お祭りの最後までいると19時近くなので、新幹線だと急がないと東京に帰れませんが、空港が近いおかげでお祭りの後もゆったりと過ごすことができて良いです」と笑顔。
とても良い笑顔ありがとうございます。「また来年も来ます！」とのこと。
また、ゑぇじゃないか祭りではホテルとの連携にも力を入れていて、イベント期間中、近隣のホテルに少しお得に宿泊できる”ゑぇじゃないか祭り宿泊プラン”が用意されていました。空港周辺でホテルが多いこの地域ならではの施策です。観客・踊り子にも嬉しい配慮ですが、宿泊してもらえることで地元にも貢献している素敵な企画ではないでしょうか。
また、観客席には海外の方もチラホラいて、日本だけじゃなく世界中からも参加しやすいお祭りなんじゃないのかなと思います。
海外の方もスマホでパシャリ。良い旅の1ページになれば嬉しいです。
近くに空港があるということ自体がゑぇじゃないか祭りのひとつの特徴であり、魅力になっているのだなと感じました。
「毎年新しく、面白いことがしたい」 進化を続けるゑぇじゃないか祭り！
このゑぇじゃないか祭りは、2004年に地域のよさこいチームが「地元を元気にしたい！」という想いを込めて始まったよさこい祭りです。そのため地元によさこいをどのように根ざしていくか？を軸に様々なアイディアを企画・実行し、19回目まで紡いできました。
今年はYouTube生ライブも初開催。よさこい界隈で実績のある動画クリエイターとタッグを組み、リアルタイムで多角的な演舞配信を実施し、全国にゑぇじゃないか祭りの魅力を発信していました。
リアルタイムでも好評とのことでしたが、イベント後のSNSでは、参加していた踊り子たちが改めてアーカイブを見て自分たちや”推しチーム”の演舞をチェックする声などで溢れ、従来のイベントとは異なる盛り上がりを垣間見ることができました。
イベントの直後に演舞映像を見れるというのは。参加者たちの心に「参加してよかった！」という想いがより一層残るのではないかと思います。
来年は第20回の記念大会。ゑぇじゃないか祭り公式SNSアカウントでは、来年についての匂わせが投稿されています。
どんなことになるのか、今から楽しみでいっぱいです。
第19回ゑぇじゃないか祭りにご参加いただいたすべての皆様、ありがとうございました！
無事に終わってホッとしております。
ゆっくりお風呂に入って
筋肉痛を癒しております。来年の第20回は！！
ぜひとも、ご参加ください。なんでも、凄いことになるらしい！
知らんけど。
明日から考えるけど。 pic.twitter.com/vOTRxKYcao— 泉州YOSAKOIゑぇじゃないか祭り（公式） (@ematuri_yosakoi) October 16, 2023
2025年には万博を控える大阪、盛り上がりの機運が高まっています。
来年の泉州YOSAKOIゑぇじゃないか祭りは大盛り上がり間違いなし！いつもの地域のお祭りとは少し違った刺激を求めて来年参加してみるのはいかがでしょうか？
お祭り最後は総踊りで盛り上がってフィニッシュ!!また来年！