石川県白山市にある浅野太鼓楽器店(以下、浅野太鼓)は、江戸時代創業で400年以上の歴史がある。石川県内で獅子舞を取材しているため、以前からよくお名前は伺っていた。多くの地域で獅子は太鼓とセットで祭りに登場する。獅子にとって太鼓は欠かせない存在で、太鼓ってどんな種類があるんだろう?どのようなルーツを持っているのだろう?と気になり始めた。そこで今回、太鼓作りやそのルーツを探るため、浅野太鼓に伺ってきた。
石川県・浅野太鼓を訪れた!
石川県白山市の浅野太鼓は、加賀笠間駅から徒歩で約25分の場所にある。駐車場もあるので、車でもアクセスできるようになっている。国道8号線沿いにある「浅野太鼓」と書かれた大きな看板が目印だ。それでは中に入って、早速太鼓を拝見させていただこう。
太鼓がずらり!ショールームを拝見
浅野太鼓の店内に入ると、まず出迎えてくれたのが様々な種類の太鼓たち。まず太鼓ってこんなに種類があったんだ!と驚いた。皮の大きさ、木の材質や色、置くのか持つのか、飾るのか鳴らすのかなど、違いを挙げればきりがないほどである。
大きくて目立つ太鼓となると、やはりこの長胴太鼓!中でも、革面の直径が90cm以上のものを「大太鼓」と呼ぶそうである。また、大きな太鼓であればあるほど制作に時間がかかり、都市部の大きな祭礼行事で使用されることも多いようだ。
中には普段あまり見る機会が少ない「チャッパ」という鉦もあった。太鼓演奏にアクセントを添える「鳴り物」として使われるようだ。このタイプのものは、身軽に動きながら演奏でき、高音で軽快感を演出することができる。
太鼓はどのような工程で作るの?
太鼓を作る工程の大まかな流れとしては、原木の伐り出しに始まり木材の内部を伐り出し、乾燥させ、塗装し、皮を張り、鋲(びょう)を留めて完成だ。今回は、切り出した木が運ばれてきて太鼓が作られていく過程を、浅野太鼓のショールームの隣にある工場にて見学させていただいた。
作業工程の写真は撮影が難しかったが、出荷前の最終工程の太鼓はこんな感じだ。台に乗せられ、太鼓の持ち手に紙がぶら下がっている。日本全国の太鼓を作っているそうで、これからどこに出荷されるのだろう?と想像を膨らませるのは楽しい。
浅野太鼓はここが違う!作り続けてきた商品力
今回、浅野太鼓の工場を案内してくださったのは、社長の浅野恭央(やすお)さん。制作されている太鼓の特徴について伺ったところ、「太鼓のバリエーションの豊富さ」がキーワードとして登場した。例えば胴づくりや革張り技術の豊富さ、内部の彫りの多様さ、厚みの違いなどが微妙に異なり、それらを調整して最適な音や耐久性などを追求されているのだ。昔はあまり音に対するこだわりがない人も多かったそうだが、最近はより高いレベルが求められることが多いという。そのような社会的なニーズもあり、浅野太鼓は進化を続けているのだ。
ここで、太鼓作りの裏話を1つご紹介したい。太鼓の外観は似ていても、内部の彫り方によって音の残響の仕方が大きく変わるらしい。今まで太鼓の裏側を見たことはなかったが、よく見ると以下の写真のように、六角形を組み合わせた「亀甲彫」や直線を平行に刻んだ「槍形綾彫(やりがたあやぼり)」など、太鼓の種類によって内部の掘り方は大きく異なる。また、音の反射率を高めるために、胴の内部に金箔を貼ることもある。このように、太鼓の裏側だけでも、音をよくするための細かな技術が集積している。
浅野太鼓で、奥深い太鼓の世界を知る
今回、実際に浅野太鼓のお店に伺ってみて、和太鼓の種類にまず圧倒された。ここまでの種類を揃えるのは、長い歴史の中で技術を駆使しながら作り続けてきた結果だろう。太鼓は表面だけでなく裏側の部分にも彫りがあって初めて素晴らしい音を出す楽器となる。改めてとても繊細な技術が必要であることを実感した。素晴らしい太鼓作りの世界を知りたい方、太鼓を作りたいと検討されている方など、ぜひ現地に足を運んでいただきたい。自分が今まで考えていた太鼓に対する視野がぐっと広がる体験ができるだろう。