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小玉川熊祭りに行ってみたら、究極のジビエと秘境温泉が最高過ぎるクマフェスだった件

小玉川熊祭りに行ってみたら、究極のジビエと秘境温泉が最高過ぎるクマフェスだった件

所さんの番組「笑ってこらえて!」に日本全国ダーツの旅というのがある。日本全国、無作為にダーツが突き刺さった町を実際に訪れるというやつだ。奇祭旅というのもこれに似ている。それまで考えもしなかった町を訪れることになるという意味ではね。

どうも。奇祭ハンターのMacです。今回の奇祭旅は「銀牙 流れ星 銀」や「ゴールデンカムイ」など「熊と闘うオトコが好き」女子にもオススメな秘境祭「小玉川 熊祭り」をご紹介します。

「熊祭り」ってどんな祭り?


山形県・米沢駅からローカル線に乗ること、1時間半。小国駅に着きました。出迎えてくれたクマ駅長のおぐたんにホッコリするのも束の間、すでにバスはなく、タクシーで30分ほど、小玉川地区にある前泊先の「民宿 奥川入」へと向かいました。結構な出費です(泣)。

山形県のハッキリ言ってすんげー奥地にある小国町の小玉川地区は、標高2105メートルの飯豊山(いいでさん)を盟主する飯豊連峰が連なり、人呼んで東北アルプスの異名を持つ山岳地帯。着いた際、雪がまだ残っていることに衝撃を受けました。だって、訪れたのは春真っ盛りのゴールデン・ウィーク期間なんだぜ!

中でもその土地の90%が森林を占め、現在はわずか110人ほどの集落である小玉川地区は、古くからマタギが多く住む土地柄。ね、なかなかの秘境感でしょ。思えば遠くまで来たもんだ。

同地区では春の狩猟が終わると、熊の供養と山の神への感謝を捧げる神事「熊祭り」がマタギ衆のみの間で300余年もの間続けられてきましたが、30年ほど前から一般公開され、毎年5月4日に行われるようになりました。熊祭りというと、北海道のアイヌが行う熊送りの儀「イオマンテ」が想い起こされますが、こうした熊を崇める神事は、世界的にも山の狩猟民族に共通したものだそう。熊を「山の王」として捉える感覚は人類共通なんでしょうね。


さあ、それでは早速「小玉川 熊祭り」の魅力を3つに絞って紹介して参りましょう。「熊祭り」の会場は国民宿舎である「飯豊梅花皮荘」(いいでかいらぎそう)の隣の駐車場スペースです。宿舎の顔ハメ板が醸すブラック・ユーモア。うん、嫌いじゃない。

➀熊のリアル・ハントを体感!



午前10時。祭壇に熊の毛皮と頭蓋がおもむろに飾り付けられ、会場の準備が整いました。そしてこの後、10時半から祭りのメイン・アトラクションである「熊狩り模擬」が始まります。


「熊狩り模擬」とは、小玉川に伝わる熊狩りの様子を実際の山を使って再現するというもの。写真は望遠レンズで撮影したものですが、残念ながらこれが限界。見物の際はオペラグラスか望遠レンズ必須です。ちなみに「熊狩り模擬」における猟師のロールプレイは下記のようになります。

【向立 ムカダテ】全体の指揮者。下から全体を見渡し、やまことばや動作で熊の動静を知らせる。新入りが担当し、狩りの方法を学ぶ。
鉄砲 ブッパ】追われてきた熊を撃つ役。技術の高い順に一鉄砲、二鉄砲、三鉄砲と分かれる。熊が逃げて来る可能性の最も高い位置に一鉄砲が陣取る。
勢子 セコ】やぶ原を踏み分けながら大声を挙げ、鉄砲の方へ熊を追いやる役。掛け声は「ホーリャー」。
踏切 フンギリ】鉄砲の側に補助としてつき、熊が狩場の外へ逃走した場合、その行方を見極める。
受 ウケ】熊を狩り場の外へ逃走させないように峰の下に位置する。
熊 クマ】熊の毛皮を着た人間が熊役を担当。さすがに本物を使うわけにいかないのでね。今回はたまたま泊まった民宿のご主人(現役のマタギ)が熊役でした。


ここで賢明なる読者諸君はお気づきでしょう。マンガだと、1人の猟師が命がけで熊と戦う場面が定番。しかし、実際の狩猟、リアル・ハントは個人戦ではなく、チーム・プレイ。当然と言えば当然だが、一回一回が命がけのような馬鹿な真似はしないのである。

なお今回のように、獲物を四方から囲む大規模な狩りの仕方を巻狩りと言います(ここ、街コンでライバルと差がつく重要な蘊蓄ですよ)。


森の熊さん(仮称)(※写真はイメージ。早朝に体を張って撮影)

「え~やだ。熊に食べられちゃったらどうしよう?」
「はは。その心配はないよ」
「どうしてそう言い切れるのよ?」
「本州に生息するのはツキノワグマだからさ。彼らは基本、草食だからね」
「そういうことか」
「ちなみに北海道に生息するのはヒグマ。こっちは基本、肉食。もっとも彼らも明治以降、急速に草食化しているらしいけどね。『ゴールデンカムイ』に出てくるのはこっちだ。もっともツキノワグマだって、人間に驚いて襲ってくることもあるから油断は禁物さ」
「うふふ。あなたって物知りね。ところで……」
「ところで?」
「あなたはどちらのタイプなのかしら?」
……。

(以上、妄想終わり)


そんなこんなで「熊狩り大・成・功!」。かくして無事「熊狩り模擬」も終わり、その後の熊祭りは、11時頃からマタギの勢子になりきって大声を出し合う「勢子大会」、11時半から熊が獲れたことや山の恵みを山の神に感謝する「神事」、12時半からは地元の特産品や宿泊券が当たる「抽選会」が行われました。


神事の様子。ホラ貝を持った神主によるオコゼ奉納、勝ちどき、祝詞奉納、お湯立てなど各種の厳粛なる神事が行われます。


「抽選会」では一等賞として一家に一枚、熊の毛皮が当たります。普通に買うと100万円以上するとか。

②究極のジビエ「熊汁」のお味は?

「熊祭り」の魅力二つ目。アトラクションの次はご当地グルメ。せっかく遠路はるばる秘境まで来たのだから、「熊祭り」の目玉である「熊汁」はぜひとも味わっておきたいところです。


しかし「熊汁」はご覧の通り朝から整理券が配られ、それでも長蛇の列ができるほどの人気ぶり。ただし、民宿によっては熊汁を出してくれる宿もあるので、ここは前泊する宿でしっかり熊汁を食しておくことを強く勧めます。


これが前日に私が実際に食べた「熊汁」。熊肉は流通量が少なく、基本的に地元でのみ消費されるレア食材。まさに究極のご当地ジビエと言っていいでしょう。

正直、獣肉だから「臭みが強い硬い肉なんだろう」と思っていました。しかし、実際に熊肉を食してみたところ、まったく臭みがなく、トロトロで甘味と旨味が強く、コラーゲンたっぷり。自然と何杯もおかわりしてしまいました。

どうやら臭みは、調理法や熊の収穫時期によっても異なるんだとか。夏のやせた熊は脂がのっておらず、臭みが強くマズいらしい。冬眠前に木の実をたくさん食べてブクブク太った熊か、冬眠明けの熊が旬なのだとか。つまり、5月に開催される「熊祭り」の熊汁はまさにベスト・タイミング! 最高過ぎかよっ!

③祭りの締めは絶景温泉!


三つ目の魅力は、何と言っても秘境感あふれるロケーション。飯豊連峰には万年雪が残り、なおかつ会場付近には桜も咲き乱れるというナゾの季節感。もう、何のスタンド攻撃だよ!

さらに清流をのぞみながらの露天風呂まであるのですから、これはたまりません。控え目に言っても「熊祭り」改め「熊桜雪景色絶景温泉秘境祭り」と、朽木白哉隊長の斬魄刀卍解ばりに改称したほうがいいレベルです。

なお温泉は、500円で日帰り利用もできる川入荘の露天風呂がロケーション的にもイチオシです。清流が目の前でマイナスイオン効果もたっぷり。秘境で入る温泉は最高ですわい。熊祭りの前後で利用するといいでしょう。

今回のお泊りジャパン


今回は朝早くからのオマツリだっため、「民宿 奥川入」さんに前泊させていただきました。マタギの主人と奥さんで経営するアットホームな宿です。


歴史ある古民家の趣ある民宿で、夕食時は家族・宿泊客一同でクイズ番組を見ながら団らん(「サマー・ウォーズ」かよ!)。こ、これが山の民宿の温もりか。


宿にはバッチリ熊の毛皮も飾られていました。

夕食には、お代わりし放題(!)の熊汁はもちろん、山形地鶏や自家製ピザ、山菜を堪能させていただきました。ゲストハウス好きの方なら、普通のホテルよりこういった民宿のほうがむしろ好みかもしれませんね。

こうしたほっこり心温まる出会いがあるから、日本全国の奇祭旅はやめられません。現場からは以上です。それでは、次の奇祭旅でお会いしましょう。

■日時:毎年5月4日
■会場:国民宿舎「飯豊梅花皮荘」脇
■交通:米沢駅からJR米坂線小国駅まで1時間30分、小国駅から車(または町営バス「飯豊梅花皮荘」行き)で45分
http://www.town.oguni.yamagata.jp/tourist/event/kuma/kuma.html

この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
奇祭ハンター、美酒ナビゲーター。「毎月奇祭」を目標に奇祭旅を行い、お祭りやお酒の情報を挙げています。今までに50以上の奇祭を巡り、600種類以上の日本酒を飲酒。祭りがないときは大体、酒飲んでます。

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