文京区湯島にあり、合格祈願や学問成就を願う参拝者で賑わう「湯島天満宮」。こちらでは2024年11月1日(金)~23日(土・祝)に「文京菊まつり」を開催します。境内にはさまざまな菊が飾られ、毎年人気の菊人形も展示!2023年には、友人同士やお一人様、親子などたくさんの人で賑わいました。この記事では、2023年のレポートとあわせて、2024年の開催情報をお届けします。
※本記事は2023年11月9日の記事に加筆・修正したものです。(2024年10月16日更新)
目次
湯島天満宮を彩る菊の数々
2023年11月4日は爽やかな秋晴れ。ちょっと暑いくらいの好天に恵まれました。
「文京菊まつり」では、湯島天満宮いっぱいに、さまざまな菊が展示されています。参道から御本殿前から渡り廊下にも、たくさんの菊・菊・菊!
この日の開花状況は、全体的にはまだこれからという感じでしたが、場所によっては綺麗に咲いているものも見られました。
「文京菊まつり」の間は、手水舎も菊でおめかし。
境内には、多彩な作品が展示されています。
こちらは「千輪咲」。
たくさんの花がひとまとめに植えられているように見えますが、根元をみるとたった1本の茎で立っているのがわかります。
2色以上の花がついているものは、色の違う苗を元の茎に挿し木をしています。
1つの茎から摘芯(芽先を摘むこと)を繰り返して、枝を増やしていくのだそう。途方もない時間と手間をかけた芸術品です。
菊が滴るように咲く「懸崖(けんがい)」。
名前の通り、崖から流れ落ちるような形に菊を整えます。これも1本の茎からこの形に育てるんですよ。
渡り廊下にあるのは「小懸崖」。咲きそろったら廊下が一気に華やかになりますね。
こちらは「盆庭」。様々な菊を組み合わせてテーマや風景を表現します。
残念ながらこの日はまだほとんど咲いていなかったのでほぼ緑一色ですが、蝶やうさぎ、孔雀がかたどられているのがわかります。これからどうカラフルに変化していくのか、楽しみです。
毎年人気!今年の菊人形は?
毎年大人気の菊人形はNHK大河ドラマをテーマに作成されており、2023年は「どうする家康」がテーマ。
家康、瀬名、信長の3体が展示されていました。
文字通り、菊の花を美しくまとっています。
色も形も異なる菊で表現した細かい着物の柄が見事!
さて、この菊の衣装、どのようになっているのか興味はありませんか?
菊人形の裏側を、特別に見せていただきましたので、少しお見せしますね。(通常は裏側を見ることはできません)
菊人形の菊は、咲いた花を人形に挿しているように思っている方が多いのではないでしょうか? 実は筆者がそうでした。
でも実際の裏側は…
表からは想像できない姿でした。
丸く茶色い塊は水苔。この水苔で根を守っているのです。つまり、花は切り花ではなく、根も茎もある状態。この水苔に水をやり、花を維持しています。
1つの水苔に6、7本の茎がつながっていて、それが1体につき60個くらい。そして1本につき花が4、5個ついているので、全部で1000輪くらいあるのでは、とのこと。肩のあたりの花もかなりの密度があります。
菊をたくさん育てている愛好家でもとても作ることができない、プロの職人による仕事です。
2024年のモチーフはもちろん「光る君へ」。どんな姿の菊人形が見れるのか楽しみですね!
菊人形は、「文京菊まつり」期間中に一度衣替えをするのだそう。予定では会期中盤とのことです。花の色を変えたりもするそうなので、前半に見た方も、ぜひ後半にまた見に行ってみるのもおすすめです。印象の変わった菊人形が見られますよ。
親子で楽しめるイベントも盛りだくさん
いろんな無料イベントも用意されている文京菊まつり。
無料ワークショップにフォトスポットも
御本殿裏側の広場では、親子で楽しめる無料イベントも開催!2023年は「花めぐりトートバッグ」制作の無料ワークショップが行われました。
無地のトートバッグに、菊やドングリなどのスタンプを思い思いに押していき、完成!
特設フォトパネルで記念撮影!
そしてトートバッグのブースの隣にあったのが、菊がいっぱいに描かれた特設フォトパネル。
地元文京区在住のアーティスト、新井友梨さんが描いた色とりどりの菊のチョークアート。このパネルの前で写真を撮ると、他では撮れない素敵な記念写真になります。
2人での参加でも、どちらかがカメラマンになることなく、一緒に撮影できるのがいいですね。
子どもたちに大人気の猿回しも
猿回しはやっぱり、子どもたちに大人気。かわいいお猿のサキちゃんの動きやしぐさに笑いが起きます。
露店には地元のお店も
おなじみの「あげまんじゅう」のお店や、定番の大判焼などの露店も出ていました。
地域のお店や、観光協会のブースもありました。
「文京菊まつり」の魅力やポイントを深掘り!
この「文京菊まつり」を支えているのは、地元の文京愛菊会のみなさんです。文京愛菊会の大和会長に、「文京菊まつり」をもっと楽しむポイントを教えていただきました。
―――2023年に45回目を迎える「文京菊まつり」ですが、簡単に歴史を教えていただけますか?
「文京菊まつりは昭和39年に始まりました。当初は湯島天満宮と後楽園の2カ所で開催されていましたが、昭和54年から湯島天満宮での開催に一本化されました。
菊人形は、第1回開催から出品され続けています。菊人形は、二本松(福島県)や枚方(大阪府)が有名ですが、実は菊人形の発祥の地はここ文京区なんです」
―――それは知りませんでした! いつ頃始まったんですか?
「江戸時代後期から明治にかけてで、文京区団子坂界隈の寺社の参道の出店で、菊の人形を出して競い合ったのが発端だったそうです。それを湯島天満宮の宮司さんが復活させようと考えて、第1回の菊まつりからずっと菊人形をやっています」
―――時代とともに変わってきているところはありますか?
「菊づくりの愛好家が減ってきていることでしょうか。以前は農家の方の娯楽として菊づくりが流行していましたが、最近では趣味の多様化で、手間のかかる菊づくりを始める人が減ってきてしまいました」
―――なるほど、都市部では特に育てるのは難しそうですものね。
「都内では畑を持っている人は少ないので、だいたいベランダで育てているんです。
今年の夏はかなり暑くて、ベランダがサウナ状態になってしまって。それで菊の成長が止まってしまったりしたので、理想的な生育が難しかったですね」
―――確かに、今年はまだ咲いていない菊が多いですね。
「今年はお盆を過ぎたころにもまだ暑かったでしょう? 通常は、8月25日前後に昼の時間が13時間以下になります。そして朝晩が涼しくなるので、菊が秋を感じて花芽をつけるんです。でも今年は残暑が厳しく、菊が花芽を作らなかったので、全体的に開花は遅れています。
ただその分、菊まつりの最後まできれいな花が咲き続けることになると思うので、長く楽しんでいただけると思います」
―――今年ぜひ見てほしい菊の展示はありますか?
「菊人形や千輪咲も見事ですが、『巴錦』にも力を入れているのでぜひ見ていただきたいです」
―――「巴錦」とはどんな菊ですか?
「約200年前から記録のある古い菊なんですが、近年はウイルスによる遺伝子老化で良い花が咲きませんでした。でもバイオ技術の発達でウイルスフリー栽培が可能になり、また咲き誇るようになったんです。
花弁の表が錦色(深紅)で裏が金色の珍しい花なので、ぜひ鑑賞してください」
他にもたくさんのお話を伺ったのですが、スペースの都合もありすべてお伝えできず残念です。菊の奥深さ、難しさ、そして面白さをたくさん教えていただきました。
ありがとうございました!
菊づくりが学びに繋がる、文京区の小中学校の取り組み
文京区では、地元の小中学校の生徒やPTAが菊づくりに参加しているそうです。大和会長に伺ったところ
「文京区立湯島小学校では、花や野菜を育てる『花育』に取り組んでおり、4年生の授業で菊の栽培を行っています。窪町小学校は菊が学校のシンボルで、小学校の歴史を学ぶ一環として、5年生が授業で菊を栽培しています。音羽中学校では、授業では行っていませんが、有志の生徒が菊を育てています」
とのお話でした。
境内には、窪町小学校、湯島小学校、音羽中学校の生徒さんが育てた菊も展示されていました。
こちら、菊の手入れをされていた東さん。窪町小学校で菊づくりのお手伝いをしておられるそうです。
東さんのお話によると、菊を育てるにしても、子供によって反応はさまざまで、女の子の方が先に積極的に取り組むようになることが多いそう。では男の子は興味を示さないかというとそうでもなく、後からとても大事にするようになる傾向があるのだとか。
育てるのが好きな子も、土いじりに慣れない子や虫を怖がる子も、それぞれの花との向き合い方があるようです。
あら?ちょうど女の子たちがやってきましたよ。
彼女たちは、この菊を育てた湯島小学校の生徒さん。何が楽しかった?と尋ねてみたら、「(余分な)花芽をとるのが楽しかった」という思いがけない答えが返ってきました。
大人目線だと、「きれいな花が咲いて嬉しかった」のような答えが返ってくるかと思うのに、やっぱり子供の感性は特別。
ただ花を育て、咲かせるだけでなく、形を整えて、人に見てもらうところまで完成させるというのは、時間をかけて様々な経験を重ねる貴重な機会になるんですね。
文京愛菊会の大和会長は、中学校の授業で菊を育てた経験があり、大人になってまた菊を育てたいと思われたのだそうです。今は菊づくりの担い手が少なくなってきているとのお話がありましたが、学校で菊づくりを経験した子供たちが、大人になって菊づくりを繋いでいってくれるかもしれませんね。
知ってから見ると面白い、菊のあれこれ
他にも、教えていただいた菊の豆知識を少しだけ。
3つの菊の花が並ぶ「ダルマ仕立て」は、一見3本の菊が咲いているように見えますが、これも1つの枝から3本に分岐しています。一番後ろ(天)が一番高く、手前(地・人)を低くしてバランスをとります。上級者向き。
品評会の菊は、審査の日に合わせて咲き具合を調整しなければなりません。美しく、元気に、かつ咲き具合も合わせるというのは、大変な技術と経験が必要です。そこが、菊づくりにハマる理由なのかも。
全部お伝えしたくてもとても書ききれないほど、奥深い世界でした。
なお、境内各所に下のような説明書きが掲示されているので、これを読めばかなり理解が深まります。こちらもぜひご覧になってみてください。
大人でもなかなか難しい、菊の世界。
でも、お子さんには
「巴錦は花びらの表と裏で色が違うんだよ」
「菊人形って、切った花を挿しているんじゃなくて、裏に根っこがあるんだよ」
「菊は、光を当てる時間や温度を工夫して、咲かせる日を調節しているんだよ」
と教えてあげると、文化や科学への新しい興味を開いてあげられるかもしれませんね。
文京菊まつり(湯島天神菊まつり)2024の開催概要
【開催期間】2024年11月1日(金)~11月23日(祝・土)※午前6時より日没まで。
【会場】湯島天満宮(文京区湯島3-30-1)
【入場料】無料
特別企画「クイズ&ミッション! 文京花まつり探検ラリー」
2024年は、文京区を代表する観光イベント「文京花の五大まつり」、「文京朝顔・ほおずき市」、「根津・千駄木下町まつり」の各まつりで、中学生以下を対象とした特別企画「クイズ&ミッション! 文京花まつり体験ラリー」を実施します。
根津・千駄木下町まつりに続き、文京菊まつりで5回目の開催となります。
まつりや神社仏閣、花、歴史に関するクイズ&ミッションに挑戦して、切り絵御華印(ごかいん)とお菓子をゲットしましょう!
【日時】2024年11月2日(土)・3(日)10:00~15:30 ※最終受付は15:00となります
【受付場所】文京花めぐり特設テント
詳細は、こちらからご確認ください。
交通至便!アクセス情報
■最寄りは東京メトロ 湯島駅
湯島天満宮は東京メトロ千代田線 湯島駅から徒歩約2分とアクセスしやすいところです。最寄りの3番出口にはエレベーターも設置されています。エスカレーターはありません。
ただ、湯島駅から最短距離で向かうと、男坂または女坂という階段を上る必要があります。男坂は38段の階段、女坂は数段ごとに長い平らな部分を設けている階段ですが33段あります。
子どもを抱く人とベビーカーを持つ人で分担できるなら女坂が利用しやすいと思いますが、一人の場合はそれも大変ですよね。
その場合、湯島駅3番出口を出てすぐ左の交差点を渡らずに左折して、春日通りを上っていきましょう。少し回り道になりますし、坂道ではありますが、段差はないので階段より歩きやすいと思います。(※こちらも厳しそうなら後述の本郷三丁目駅からのアクセスがおすすめです)
坂の途中の左手に、湯島天満宮につながる夫婦坂がありますが、こちらも階段。通り過ぎてそのまま進みます。このあたりから少し坂が急になります。
道なりに進むと、「湯島天満宮入口」の交差点に着きます。
ここを左折するとすぐに大きな石の鳥居が建っています。
鳥居の横を通ってさらに進むとこの表鳥居が見えてきます。
東京メトロ 上野広小路駅や都営地下鉄 上野御徒町駅(いずれも徒歩約5分)、JR御徒町駅(徒歩約8分)も徒歩圏内ですが、方向的には湯島駅と同じなので、階段か坂道かを通ることになります。
■アップダウンを避けるなら本郷三丁目駅
坂道もちょっと大変…という場合は、東京メトロ丸の内線・都営地下鉄大江戸線の本郷三丁目駅からなら、階段や坂道を避けて行くことができます。最寄り出口からの距離は約600mあり、大人の足で8分ほどかかるので、10~15分みておいたほうがよいでしょう。
湯島天満宮最寄りの5番出口には、エレベーター・エスカレーターが完備されています。
■都バスを利用する場合
都バスを利用する場合は、「湯島三丁目」バス停が最寄り(徒歩約2分)ですが、このバス停は湯島駅に近い春日通りにあるので、アップダウンは湯島駅利用の場合と変わりません。ベビーカーを利用される場合は、「湯島四丁目」バス停で降りた方がアップダウンがありませんし、距離も徒歩5分ほどです。
■文京区コミュニティバス「B-ぐる」を利用する場合
文京区のコミュニティバス「B-ぐる」を利用する場合は、「湯島天神入口」バス停で下車すると、平たんな道で湯島天満宮参道まで行くことができます。
詳細は文京区ホームページよりご確認ください。
https://www.city.bunkyo.lg.jp/tetsuzuki/bus/b-guru/map.html
「文京花めぐり」で1年を通じて花のまつりを楽しもう
文京区には、「文京菊まつり」の他にも魅力的なまつりがたくさんあることをご存知ですか?今回ご紹介した「文京菊まつり」、2月には「文京梅まつり」、3月には「文京さくらまつり」、4月には「文京つつじまつり」、6月には「文京あじさいまつり」が開催され、この5つの花のまつりは「文京花の5大まつり」として親しまれています。
この5つの花のまつりを中心に、1年を通じて文京区のまつりを親子で楽しめる特別企画が「文京花めぐり」。各まつりで、地域色があふれるさまざまな催し物や体験型イベントを実施します。
詳しくは特設WEBページをご覧ください!