幕末の絵師・弘瀬金蔵の絵を中心としたアートフェス「土佐赤岡絵金祭り」が、2023年7月15日・16日の日程で開催されます!
孤高の天才が描いたインパクト大の芝居屏風絵が、夜の間だけ展示されるという催しです。
この記事では、奇祭ハンターまっくさんの2022年の開催レポートとともに、2023年の開催情報をお届けします。
3年ぶりの開催となった2022年の「絵金祭り」
奇祭は歴史のタイムカプセル。どうも。奇祭ハンターのまっくです。今回の奇祭旅は、高知編(第21県目)。
去る7月、早めの夏休みを取って令和元年以来、3年ぶりの開催となる高知の奇祭、絵金祭りに行ってきました。早速、行ってみよう!
「奇祭の聖地」高知県赤岡町へ
赤岡町は、江戸時代には塩田や廻船問屋が並ぶ商都として栄え、その証左と言うべきかどろめ祭りと絵金祭りという珍しい奇祭を二つも抱える奇祭の聖地。これこそ、かつての赤岡町が高知の城下から離れた武士の力も及ばぬ商人自治区として破天荒にブイブイ言わせていた証ということで、歴史ロマンを感じずにはいられません。
ロック過ぎる幕末絵師・絵金とは?
絵金祭りとは、幕末の絵師である弘瀬金蔵(通称・絵金)の芝居絵屏風をたったの2日間、1日2時間(夜7~9時)だけ商店街に飾り、屋台などが並ぶ祭り。絵が主体の祭りは珍しく、言わば天然もののご当地アートフェス!
なぜ祭りに芝居屏風絵なのか?というと、神前に芝居(歌舞伎)を奉納する代わりに、歌舞伎の名シーンを活写した芝居屛風絵を奉納するから。
幕末の絵師、弘瀬金蔵は、髪結いの子として幕末の高知城下に誕生。 小さい頃から画才に秀で、当時の最大画派である名門・狩野派に属して腕を磨き、21歳の若さで土佐藩の家老のお抱え絵師にまで抜擢(この時、武士階級である「士分」もゲットする大出世)。ここまではエリート街道まっしぐら。
ところが、頼まれて署名なしで「模写」を描いたはずが贋作を制作したと疑われ、城下を追放(クビ)。失意の中、放浪の旅を10年重ねた後に、叔母を頼って赤岡町に定住。それからは町絵師「絵金」として町の旦那衆(パトロン)の求めに応じて芝居絵屏風を描きまくりました。
当時の無残絵(血みどろ絵)という流行を取り入れ、極彩色で鮮血ほとばしる完全にホラー(スプラッター)に振り切った芝居絵を数多く手がけ、作風も一変させました。クラシック奏者がパンク・ロッカーになるぐらいの転向。覚悟を決めた天才ほど恐ろしいものはない。もうね、生き方が完全にロック!
エリートから転落し、一介の町絵師へ。そこで腐らず、庶民のために攻めた絵をガンガン残しまくった結果、今でも商店街に屏風絵が残され、令和の世まで語り継がれているわけで。
ちなみにその昔、絵金の絵が神社などに奉納される際、そのあまりにR指定で凄惨な描写に「子どもと妊婦は見てはならない」とされた時代もあったそうです。先生、やり過ぎ。
祭りの前に済ませたい3つのこととは?
絵金祭りは7月の第3土・日曜の18~21時まで、しかも屏風絵(アート)の展示時間は19~21時のわずか2時間だけ! ここでは「祭りの前に済ませたい3つのこと」をザっと紹介しよう。
➀絵金蔵を見学しよう!
まず1つ目は、絵金蔵の見学。ここで絵金の波乱万丈の人生や作品情報について予備知識をゲットしておこう。
もちろん極彩色のド派手スプラッターな絵金の絵は知識がなくても楽しめるし、町の方も丁寧に解説してくれる。だが、絵のネタ元となっている歌舞伎のストーリーを事前に知っておくことで、作品への解像度がより深まるというものだ。
➁名産のしらす丼を実食しよう!
次は腹ごしらえ。どろめ(=生のイワシシラスのこと)祭りでも知られる赤岡なのだから、しらすは実食しておきたい。
町内にある高木酒造のとなりにあった食堂で、赤岡町の名物であるしらす丼と中日ラーメンを完食。祭りでは屋台フード中心になりがちだから、一足先にご当地グルメを味わっておこう。
➂地酒を試飲しよう!
腹ごしらえが済んだら、高木酒造で日本酒を試飲。話によると高知の方は、さっぱりと飲めて食事と合わせやすい辛口タイプの日本酒が好みなのだとか。
絵金祭りにちなんだお酒や蔵元直販のみのお酒もあるし、そもそも高木酒造の酒の7割は県内で流通しており、都市部でもあまり出回らないから要チェック!
絵金祭りの3つの見所とは?
知識と胃袋と肝臓の蓄えを済ませたら、いざ祭りへ出陣! 絵金祭りの魅力を3つの視点で掘り下げてみよう。
➀絵金歌舞伎を無料で見学!
元は銭湯だった建物を一部使用した歌舞伎座で行われる、地元の方による絵金歌舞伎ももう早30年。今回は18~19時半までの第二部の演目を見学。プロの歌舞伎役者ではなく、地元の方による演技とはいえ、絵金の芝居絵に描かれた物語を芝居として再現するもので、これが無料とはありがたい。
それにしても改めて感じたのは、芝居では当然といえば当然だが、刀で斬られても生首や腕がとぶことはなく、流れる血は赤い布で表現されます(観客の想像力に委ねているともいえる)。
逆にいえば庶民の想像力に挑戦するかのように、生首や腕がとんで鮮血ほとばしる惨劇シーンを容赦なくバンバン描いてしまう絵金先生、改めてハンパないです。画が芝居を超越しています。
➁ロックな展示法+解説付きという超ぜいたくな鑑賞体験!
芝居絵の展示は、ガラスケース超しに蛍光灯で照らすという美術館でよくある展示方法とは一線を画しています。それは何と、当時と同じように屏風を折り曲げて立て、本物のろうそくの炎で照らすという大胆過ぎる展示方法。
ろうそくが照らす陰影がゆらめき、幻想的な風情を醸し出すのに一役買っています。展示方法もロック過ぎる!
ちなみにこれが、作品の一つを部分拡大したもの。幼子を抱える色白の美人妻の姿はいっそう可憐で切なく、彼女を襲う悪漢のエロ野郎っぷり(銀座のクラブとかで大暴れしそう)との対比がバッキバキに効いてます。ユーモアすらも織り交ぜた、誇張オブ誇張。これぞ絵金の超絶技巧。
また絵金祭りでは、その絵を保存している地元の方が自ら解説してくれます。現代では縁遠い歌舞伎のストーリーも解説つきなら楽しめる!(大体が血みどろホラーな惨劇ですが)。もうね、武士の家に生まれて親ガチャ外れたらエライ目(血みどろの死闘)に遭います。
高知県の奇祭、絵金祭りに行って来たゾ。幕末の絵師、絵金が描く血赤には邪気を祓う力があるとも言われておる。街の方の解説付き。例年7月の第三土日に開催じゃ。 pic.twitter.com/QMOxeV0GgU
— 奇祭ハンター まっく (@Mac40626899) July 16, 2022
➂幻想的なインスタレーションがエモ過ぎる!
絵金が描く赤は、血赤と呼ばれ、一説によると海から来る死者の邪気を祓うとされています。
ろうそくの炎の怪しいゆらめきも手伝い、民家や商店街の軒先で展示される絵金の芝居絵は、まるでありし日の真夏の夜の夢。インスタレーションとしても一級でしょう。
てか、単純に展示風景ごと写真に撮るのが楽しい。あんなに鮮血ヒャッハー!で攻めた内容なのに、俯瞰で見ると何故か幻想的な風情がバキバキでエモい。ギャップがたまらん。
いかがでしたか? インス映え間違いなしの野外アートフェス、絵金祭り。もし絵金が順調に出世街道を歩んでいたら、奇祭として現代まで語り継がれることもなかったでしょう。いわば奇祭がタイムカプセルの役割を果たしたわけです。まさに人の想いこそが永遠。
かつて絵金は、署名なしの模写を描いたがために贋作疑惑でクビになった際、「それならいっそ署名なしの絵をバンバン描いて残してやらぁ。すると後世の連中には狩野派本家の名品とも見分けがつくまい!」と、気勢を吐いたと言われます。その目論見こそ外れたものの、絵金祭りの現代まで続く趨勢ぶりに、絵金も草葉の陰でニヤリと満足しているのではないでしょうか。
今回のオヤドノジャパン
全集中、豚の呼吸。高知のサブラダファミリア、沢田マンションに泊まったぞ。5階より上は家庭菜園があって豚や兎もいるのじゃ。クレーンもあるぞ。 pic.twitter.com/Kz2jp1UZLX
— 奇祭ハンター まっく (@Mac40626899) July 14, 2022
お祭り当日は赤岡町のお祭り会場から歩いて20分の距離にある旅館かとりさんに泊まりましたが、前泊では高知のサグラダファミリアとして最近人気の沢田マンション(最寄り駅:薊野駅)に宿泊。お祭りは21時にはほぼ終わるので、さらに夜飲みやグルメを堪能するなら高知駅に宿を取るのもアリかもしれません。
高知駅周辺のグルメ情報としては、やはりひろめ市場でオーダーする新鮮で肉厚の鰹のたたきは絶対のマストとして、高知市民のソウルフードである安兵衛の餃子(500円)も要チェック! 小ぶりながらも皮がサクサクの中身ジューシーでたまりません。
2023年の開催情報!
【開催日時】
2023年7月15(土)・16日(日) 18時から21時(少雨決行)
※ただし、雨量によっては、屏風絵が展示できない場合あり。
※荒天中止の場合は、当日9:00に判断し、HPに掲載。
【場所】
高知県香南市赤岡町本町・横町商店街
【芝居絵屏風展示】
19時から21時
【芝居絵屏風展示点数】
23点展示
※23点の内、5点はレプリカ作品。
<イベント>
・絵金蔵 夜間開館「夏の特別展」
【時間】19時から21時
【場所】絵金蔵(高知県香南市赤岡町538)
・弁天座「土佐絵金歌舞伎」
【上演】17時〜
【場所】弁天座(高知県香南市赤岡町本町795)
・その他、ビアガーデン、ステージイベントなど