時は春。野の花が綺麗な季節です。全国各地でフラワーフェスティバルも開催され、優しい風に誘われてお出かけしたくなりますね。その自然の美を心から観賞できるように、花々が咲く時期や花言葉などを解説します。
*梅
開花時期:1月~3月
分類:バラ科サクラ属
中国が原産地とされ、奈良時代以前に日本へ渡来し、現在は全国に分布しています。伝統ある見所は、茨城県水戸市の偕楽園、神奈川県小田原市の曽我梅林、石川県金沢市の兼六園、京都府京都市の北野天満宮などです。
花言葉は、「上品」「高潔」「忍耐」「忠実」。多くの花がまだ開かぬ早春から、厳寒に耐え、独り気高く咲く姿に由来します。また「忠実」の言葉は、学問の神様・菅原道真公が政敵の陰謀で大宰府に左遷されたとき、大切にしていた梅の木が後を追って飛んできたとの伝説に基づきます。
*ミモザ
開花時期:2月~4月
分類:マメ科アカシア属
オーストラリアが原産地で、日本へは明治時代に渡来し、暖かい地域に分布しています。鮮やかな黄色で小さな花姿から人気も高く、リースやドライフラワーとしても楽しまれます。街路樹としてもよく見られ、都内では夢の島公園熱帯植物館、関西では大阪府立花の文化園などで楽しめます。
花言葉には、「感謝」があります。イタリアで3月8日「国際女性デー」に、男性が妻や恋人、母親など身近な女性に感謝の心を込めて、ミモザの花を贈る習慣に由来します。他に「思いやり」「秘密の愛」「優雅」「堅実」「豊かな感受性」「神秘」などの言葉が捧げられます。
*桜
開花時期:3月~4月
分類:バラ科サクラ属
ヒマラヤ地方が原産地とされ、日本最古の和歌集である万葉集でも詠われているほど、日本でも馴染み深い花です。早い所では1月、沖縄県のカンヒザクラに始まり、カンザクラ、ヤマザクラ、ソメイヨシノ、ヤエザクラ、カスミザクラと続いて、5月上旬まで開花します。日本五大桜とされるものは、「福島県三春町・三春滝(みはるたき)桜」「埼玉県北本市・石戸蒲(いしとかば)ザクラ」「山梨県北杜市・神代(じんだい)桜」「岐阜県本巣市・淡墨(うすずみ)桜」「静岡県富士宮市・狩宿(かりやど)の下馬(げば)ザクラ」です。
花言葉は「精神の美」「優美な女性」。前者は、米国初代大統領ワシントンが幼少時、父の大切な桜の木を誤って切ってしまった際、正直に告白したとの説話に由来します。後者は、その雅な美しさを女性にたとえたものです。
*アンズ
開花時期:3月~4月
分類:バラ科サクラ属
原産地は中国北部、中央アジア、ヒマラヤ西部とされていて、日本には中国から渡来しました。欧米をはじめ世界各地で栽培されており、日本では青森県と長野県での生産が大半です。「日本一のあんずの里」長野県千曲(ちくま)市のあんずまつりが有名です。
花言葉は「乙女のはにかみ」。サクラよりも一足早く、恥じらうように花開くことに由来します。杏はもともと涼しい気候に適しているため、3~4月に白や淡紅の梅に似た花が咲き誇ります。
*花桃
開花時期:3月~4月
分類:バラ科サクラ属
花桃は、観賞用に改良された桃で、中国が原産地です。桃が日本に渡来したのは弥生時代ともいわれ、大変古くから親しまれてきましたが、観賞用として日本で花桃が栽培されるようになったのは江戸時代からといわれています。山梨県笛吹(ふえふき)市の笛吹桃源郷、長野県阿智(あち)村の花桃の里、福島県福島市の花見山公園などが人気です。
花言葉の「私はあなたのとりこ」は、桃が古代から女性の象徴とされたことに由来します。「天下無敵」は、桃は邪気を払う不老不死の霊薬と信じられたことによります。
*チューリップ
開花時期:3月~5月
分類:ユリ科チューリップ属
原産地は中央アジア・北アフリカとされ、約1,000種類もの品種が世界中で栽培されている人気が高い花です。都内では日比谷公園、関西では京都府立植物園のチューリップが綺麗です。国内有数の産地、富山県砺波市の砺波チューリップ公園では、4月下旬から5月初旬にかけて「となみチューリップフェア」が開催されます。北海道湧別町のかみゆうべつチューリップ公園なども美観です。
花言葉の「思いやり」は、オランダの古い物語に登場する、三人の騎士を思いやる美少女に由来します。
*つつじ
開花時期:4月~5月
分類:ツツジ科ツツジ属
日本や中国を中心とした東アジアが原産地です。日本でも古くから栽培され、大阪府泉南市の林昌寺や、東京都青梅市の塩船観音寺が有名です。また、宮城県南三陸町・気仙沼市の田束山(たつがねさん)や、毎年「館林つつじまつり」が行われている群馬県館林市のつつじが岡公園が名高いです。
赤ツツジの花言葉は、「恋の喜び」で、白ツツジの花言葉は「初恋」。赤い花の情熱的な姿と、白い花の清純な可憐さから、想像を膨らませたのでしょう。
*ネモフィラ
開花時期:4月~5月
分類:ムラサキ科ネモフィラ属
北アメリカが原産地で、鮮やかな青色や清廉な白色、濃い紫色の花を咲かせます。ネモフィラとはギリシア語のネモス(森)とフィレオ(愛する)からなる名前で、原種が森林周辺の陽だまりに自生することに由来します。中心が白い花姿から、英名では「Baby blue eyes(赤ちゃんの青い瞳)」とも呼ばれています。国内で有名な観賞スポットとしては国営ひたち海浜公園の「みはらしの丘」です。広大な丘を青色で染めるネモフィラの光景は圧巻です。
花言葉は「可憐」「あなたを許す」。可愛らしいその姿に由来します。
*ふじ
開花時期:4月~5月
分類:マメ科フジ属
原産地は日本とされ、古くから観賞用として楽しまれてきました。ふじは天然では自生できない植物で、他の木に巻きつくなどして咲きます。福岡県北九州市の河内藤園、栃木県足利市のあしかがフラワーパーク、兵庫県丹波市の白毫寺(びゃくごうじ)、東京都江東区の亀戸天満宮、兵庫県朝来(あさご)市の白井大町藤公園なで鑑賞できます。
花言葉の「優しさ」「歓迎」は、優しく迎え入れるようなイメージを表現します。
*芝桜
開花時期:4月~5月
分類:ハナシノブ科フロックス属
原産地は北アメリカで、茎が芝のように広がり地面を覆うほどの力強さを持つ一方、春に可愛らしい花を咲かせます。入学式や卒業式で飾られることも多く、おめでたい印象がある花でもあります。山梨県富士河口湖町の富士芝桜まつりが日本一の見どころ。
花言葉の「合意」「一致」は、多くの花々が集まって咲くことに由来します。小さな花々が群生して咲く様子から「臆病な心」とも呼びます。
*りんご
開花時期:4月~5月
分類:バラ科リンゴ属
中央アジアなどの寒冷地が原産地であることから、涼しい気候を好みます。りんご生産量日本一の青森県弘前市では、5月上旬(予定)に「弘前りんご花まつり」が開かれます。長野県須坂(すざか)市の千曲川(ちくまがわ)河川敷では、季節になると一面にりんごの花が咲き誇ります。
花言葉の「優先」は、美しい花が美味しい果実に先んじて咲くこと由来します。また、「選択」の言葉は、ギリシア神話で王子パリスが美しい女性を選んだ「パリスの審判」にちなみます。
*ポピー
開花時期:4月~6月
分類:ケシ科ケシ属
北アメリカ南部が原産地で、世界で約150種もの品種が存在します。古代の住居後からも発見されるなど古くから人間の生活に馴染みのある花で、あんぱんにも使われるケシの実はこのポピーの実です。千葉県館山市のポピーの里館山ファミリーパーク、神奈川県横須賀市のくりはま花の国、昭和記念公園、大阪府吹田市の万博記念公園、兵庫県淡路市のあわじ花さじきなどで、その優美な姿を楽しむことができます。
花言葉の「慰め」は、ギリシア神話で、愛娘を冥王ハデスに奪われて不眠になった豊穣の女神デメテルが、眠りの神ヒュプノスに催眠作用のあるポピーの実をもらって、心と体を癒したことによります。ヒュプノスの「やさしい愛」、デメテルの「感謝」「喜び」、愛娘への「別れの悲しみ」などの言葉も、ここから来ています。
*バラ
開花時期:5月~11月
分類:バラ科バラ属
原産地はチベット周辺や中国からミャンマーにかけた一帯とされています。古くから人々に愛されてきた花で、交配によりさまざまな品種が生み出され、その数は3万とも4万ともいわれています。横浜市の港の見える丘公園 ローズガーデン、神戸市の須磨離宮公園、前橋市の敷島公園ばら園など、日本でも全国に名所があり、その気品ある花姿で人々を魅了しています。
バラ全般の花言葉は「愛」「美」。花色、つぼみ、トゲにも花言葉があり、全ての花々の中で一番多くの言葉で賞美されます。
*あじさい
開花時期:6月~7月
分類:アジサイ科アジサイ属
原産地は日本をはじめとする東アジアで、日当たりの悪い環境や湿度が高い環境にもよく耐える丈夫な花で、日本全国に自生しています。岩手県一関市のみちのくあじさい園、東京都日野市の高幡不動尊金剛寺、神奈川県鎌倉市の明月院、京都府宇治市の三室戸寺(みむろとじ)、京都府福知山市の丹州観音寺、沖縄県国頭郡本部町のよへなあじさい園などが見どころです。
花言葉は、「移り気」や「浮気」「無常」です。花の色が時期によって変化することに由来します。
*蓮
開花時期:7月~8月
分類:ハス科ハス属
原産地には諸説あり、インドや中国などではないかといわれています。花の中心がハチの巣に似ていることから、「はちす→はす」と呼ばれるようになったようです。関東では上野公園の不忍池や立川市の昭和記念公園、鎌倉の鶴岡八幡宮などが見所です。他に、京都で名所として名高い法金剛院や、日本を代表する産地の福井県南越前町の花はす公園など、全国各地で楽しめます。
花言葉の「清らかな心」は、蓮の花が泥沼の中から生長して、清浄な華を咲かせることに由来します。また、「雄弁」の花言葉は、冥府で雄弁に死者を裁くオシリス神に捧げられたとのエジプト神話にちなみます。
まとめ
こうやって日本の花々のことを知るだけでも、気分が浮き浮きしてきますね。家族や友人と連れ立って行っても良し、また自由なひとり旅でも良し。春めいて暖かな日も増えてくるこの季節、ぜひ観賞に出かけてみてはいかがでしょうか。