2022年11月19日(土)、愛知県蒲郡市で「第2回 花火甲子園」が開催されました。2019年の初回開催以来、コロナ禍のため2年連続で中止を余儀なくされていましたが、ついに3年越しの第2回目を実現! その様子をレポートします。
目次
「花火甲子園」は愛知県初で唯一の競技花火大会
「花火甲子園」は、人気のテーマパーク、ラグーナテンボスに隣接するラグーナビーチで開催されました。
甲子園とはいえ、高校生が競う花火大会ではありませんが、花火師たちの勝負の場、という意味でつけられた名称だそう。
愛知県は古くから花火の盛んな土地でありながら、競技大会はこれまで開催されていませんでした。
それを初めて実現したのがこの「花火甲子園」なんです。
花火競技大会とはどんなもの?2022年の結果は?
花火競技大会は、煙火店(花火師個人であることも)が花火の完成度や創造性などを競い合うものです。
秋田県の「全国花火競技大会(大曲の花火)」や、茨城県の「土浦全国花火競技大会」が有名ですね。
大会にはそれぞれルールがあり、単発の花火で競う場合も、スターマインといって、数十発~数百発の花火を連続してあげる花火で総合的な表現を競う場合もあります。
「花火甲子園」では、「5号玉創造花火」と「10号自由玉」の競技が行われました。
「5号玉」とは、直径約15㎝の花火玉で、上空で直径約150mの大きさに開きます。5号玉は3発で競われました。
「10号玉」は、直径約30cmの花火玉で、上空で開く大きさは直径約300mにもなります。大きい分さまざまな工夫が凝らされ、何重もの同心円を描く「多重芯」や、たくさんの小さな花火が開く「千輪」なども、より表現が多彩になります。
「第2回 花火甲子園」では20社の煙火店が競技にエントリーし、「5号玉創造花火」は全20社が、「10号自由玉」は20社のうち15社が出品しました。
今回の優勝作品はこちら。
今回は「推し花火」という、観覧者の投票による賞が設定されていました。
その他の受賞作の詳細は、花火甲子園公式サイト、公式SNSで公開されています。
全国花火ファンの皆様こんにちは、花火甲子園実行委員会です(๑•̀ㅁ•́ฅ✧
お待たせ致しましたー!
結果発表ーーーです📣
ワァ───ヽ(*゚∀゚*)ノ───イ pic.twitter.com/8VzpKf1H1y— 第2回花火甲子園 (@hanabikoushien) November 15, 2022
これが花火競技大会のおもしろさ!
「花火の良し悪しなんてわかんないから、サクサクドンドン上がる花火が見た~い!」という人もいるかもしれませんね。
でも、競技花火って、見慣れてくると面白んですよ。
まず、煙火店がその最高の技術で仕上げた、クオリティの高い花火をたくさん見ることができます。
加えて、花火競技大会は各地から煙火店が参加することが多いので、地元ではあまり見ることのない煙火店の花火も見られます。
「第2回 花火甲子園」でも、競技参加20社の他に、競技の合間のスターマインを6社が打ち上げ、東北から九州まで、計26社もの花火を見ることができました。
また、花火のタイトルやコメントがパンフレットなどに記載されていることも多く、作品のテーマや意図がわかるのも、普通の花火大会にはないところ。
競技の部門が複数あった場合、一貫したテーマの花火を出品する煙火店もあり、比べてみると面白いですよ。
エンタメ性の高いスターマインに観客が湧いた!
多くの花火競技大会では、競技だけが延々と続く…ということはなく、間にスターマインなど、競技以外のプログラムが挟まれます。
「第2回 花火甲子園」では、オープニングとエンディングを含め、計7回の音楽つきスターマインが披露されました。
オープニング担当は和火屋(秋田)。Official髭男dismの「ミックスナッツ」が使用され、ヒット曲でのスターマインに会場が湧きます。
アップテンポな音楽に合わせ次々に上がる花火に歓声が上がり、終了後は大きな拍手が!
今回の「花火甲子園」で非常に特徴的だったのは、ライブ歌唱とともにスターマインを上げたこと。2つ目・4つ目・6つ目のスターマインがこの形式でした。
音楽つきスターマインは一般的ですが、生歌とともに上げるというのはあまりありません。
これは日本花火推進協力会の「みんなの花火 プロジェクト」の一環。「世界中の健常者と障がい者が一緒に楽しめる花火大会」を目指した企画です。
2つ目のスターマイン「ひまわり」と4つ目の「光の花」は、車椅子生活をしながら音楽活動を行うシンガーソングライター森圭一郎さんの生歌に、6つ目の「Broken Clock」は、韓国のシンガーで、肢体障がいをもちながら音楽活動を行うべ・ウンジュさんの生歌に合わせ、打ち上げられました。
「ひまわり」では、花火会場と鹿児島県徳之島とをつなぎ、特別支援を求める子どもたちとともに歌唱。
生歌でも花火の音にかき消されることなく、歌もしっかり届きました。
生歌以外のスターマインももちろん充実。
3つ目のスターマイン、生島煙火(大分)による「残響散歌」は、人気曲だけにお客さんの反応もばっちり。リズムをしっかりつかまえたテンポのいい花火に盛り上がりました!
5つ目は、2022年の「大曲の花火」で内閣総理大臣賞を受賞したマルゴー(山梨)がスターマインを披露。第1回では、前年(2018年)に内閣総理大臣賞を受賞した菊屋小幡花火店を招聘していたので、今後も「花火甲子園」の定番になるかもしれませんね。
マルゴーの突き抜けてカラフルな花火は、地元の方々にも印象に残ったのではないでしょうか。
フィナーレは山内煙火(山梨)。山内煙火は、2022年の「土浦全国花火競技大会」スターマインの部で特等を受賞しています。その時はビートの効いたロックに合わせたスターマインでしたが、「花火甲子園」でもアップテンポの曲に合わせ、「カッコイイ」系のスターマインを披露し、花火大会の締めを盛り上げました。
すべてのプログラムが終了したあと、サプライズで大玉花火が次々に!
約90分間の充実した打ち上げでした。
初回開催時と比べてどう変化した?
3年の空白を経ての第2回目の開催。前回も「5号玉創造花火」と「10号自由玉」での競技でしたが、第2回では構成に変化がありました。
第1回は、煙火店ごとに「5号玉創造花火」と「10号自由玉」を続けて上げていたのですが、第2回では、煙火店ごとではなく部門ごと、つまり前半に「5号玉創造花火」を上げ、後半に「10号自由玉」を上げるという構成に変わっていて、とてもテンポが良くなっていました。
花火競技大会の場合、難しいのは競技性とエンタメ性の両立ではないかと思います。
ある程度花火の知識があり、花火の種類や煙火店の名前まで知っていると、競技花火の1つ1つが楽しめます。でもそうでない人にとっては、玉名や煙火店名など馴染みのない名称が続くと、集中して見続けるのが難しいのでしょうか。
実際、初回開催時はかなり間延びした感があり、私の周りでは「飽きてきた…」という声も聞かれました。
ですが今回は全体にテンポよく進み、競技の間のスターマインも、5号玉は5発ごとに、10号玉は7発目と8発目の間に入り、ほどよい間隔。
煙待ちなどもなかった良好な状況にも助けられ、客席の集中や興味が途切れない構成だったと思います。
「インターバル花火」として、子どもたちにも人気の型物花火(ハートやスマイルなどをかたどった花火)を上げたり、メッセージとともに花火を上げる「メッセージ花火」を取り入れたりしたのも、花火をより身近に感じられる企画。
観客の評価が反映される「推し花火」賞も、花火を知らない観客を置き去りにしない効果があったと思います。
前回も出店は出ていましたが、今回は100店以上とパワーアップし、お祭りの楽しさも充実!
今後の継続に期待!
2022年末時点で、まだ次回の開催は予告されていません。ですが、2020・2021年も開催に向けて動いた花火甲子園チームなので、きっと第3回の開催も期待できると思います。
さらに磨きをかけて、愛知県での競技花火の定着に繋げて欲しいと思います。