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『五節舞』謎の天女「瀬織津姫命」による十二単の舞

2020/10/15
2020/10/15
『五節舞』謎の天女「瀬織津姫命」による十二単の舞

舞が大好き!カメラマンの佐々木美佳です。
祭りがない今だからこそできるスタジオ撮影をと、美しい舞と装束の「女人舞楽・原笙会」の撮影を行いました。舞楽をくわしく一曲ずつ、シリーズでご紹介いたします。

↓ 雅楽の基本知識や原笙会についてはこちらをご参照ください ↓

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それでは早速、舞楽の中の宝塚のような存在「原笙会」の生川先生に、豪華絢爛な十二単の「五節舞」の解説していただきましょう!

原笙会 生川先生解説!「五節舞」

五節舞

その起源は、天武天皇(在位673 ~686)が吉野の離宮で琴を弾いておられると天女が舞い降り、「乙女ども 乙女さびすも唐玉(唐や朝鮮から来た珠玉)を 袂にまきて 乙女さびすも」(大歌)という歌に合わせ、五度袖をひるがえして舞ったのをかたどったと言われています。

平安時代には大嘗会(だいじようえ/皇位継承の宮中祭祀。舞姫五人が叙位にあずかります)や新嘗会(しんじょうえ/舞姫四人)で奏さる国風歌舞(くにぶりのうたまい)ですが、南北朝以後戦乱のため廃絶され、現行のものは大正天皇即位式に用いるため新作された舞です。

元来、この舞は天皇即位式ごとに当時の楽長(雅楽寮)が作舞したとも言われており、所作は一定ではありませんでした。

伴奏は龍笛、篳篥(ひちりき)、和琴(わごん)、拍子。舞姫はおすべらかしに袙装束(単、袙/あこめ、唐衣、裳/も)、手には桧扇(ひおうぎ)を持ち、この舞に限り唐衣の上から小腰をつけます。

ー生川先生、解説ありがとうございます!

美の結晶をまとう十二単の装束

今回、スタジオ撮影時に「女性カメラマンで良かった…」と感じたのは「お仕度風景」を見られること。普段は見ることのできない内側の着物や鬘をつけるところも拝見できました。

舞では実際に12枚の着物を着るわけではなく、たくさん着ているように見える重ね衿(伊達衿)を着用し、着物は三枚ほどを重ねて着ています。
そこで、この美しい着物についても生川先生に教えていただきました!

萌黄の装束写真:この美しい萌黄の装束はいつもは内側に着ていて、襟元しか見られない

着物について

五節舞装束

唐衣(からぎぬ)…赤色織物(鶴松模様)
打衣(うちぎぬ)…薄紫桜柳地
表着(うわぎ)…二倍(ふたえ)織物、萌黄亀甲地に向鶴菱紋(むかいつるびしもん)
単(ひとえ)…萌黄地幸菱(さいわいびし)
濃色長袴(こきのながはかま)※未婚女性の色

現在の五節舞装束は、内側の着物は一番外側として着ることはなく、装束の着る順番を変えることは基本的にはありません。(※五節舞にかぎるかもしれません)

髪型について

髪型は「おすべらかし」のカツラで両側から紐で固定させます。後ろは床にまで届く長さの「長髢(ながかもじ)」。

おすべらかしは飾り込みで、重さは約3キロあります。原笙会のカツラは昔に作ったものなのでとても重く、人によってはカツラの重みで頭痛を起こす人がいるほどの重いカツラです。
今は和装のカツラなどびっくりするくらい軽く作られています。

お化粧品について

化粧品のほとんどは「三善」のものを使用しています。
化粧品の種類や工程はほとんど舞妓さんが使用しているものと同じです。

手は、普通の水白粉だと装束についてしまうため「リキッドメークアップミニ(三善)」を使用。
顔の水白粉はカネボウのピンク色を使用しています。

ー生川先生、装束の解説をありがとうございます。永久保存版の資料になります!

こうしてお仕度が完成!
十二単を簡素化した装束とはいえど、やはり豪華です。
お姫様たちにとっては天皇から見染められる機会でもあった五節舞。緊張もあり、大きく重たい着物を身に着けて美しく舞うというのは大変だなと改めて感じました。

五節舞をはじめて舞った「瀬織津姫」の謎

奈良県の吉野に舞い降りた天女で、五節舞を初めて舞ったと言われているのは「瀬織津姫(せおりつひめ)」。
「祓戸四神」のうちの一柱である瀬織津姫。登場するのは祝詞「大祓詞」で罪穢れを流すという一文と古代大和ことばで綴られた叙事詩「ホツマツタエ」だけで、日本書紀や古事記などからも消されてしまった謎の存在の女神です。

別名は天照大神荒魂、撞榊厳魂天疎向津姫命(つきさかきいつみたまあまさかるむかつひめ)など、たくさんの名前があります。

アマテラスオオミカミの荒魂が瀬織津姫であるという説や、アマテラスやニギハヤヒの妻だという説が有名です。その謎を追っていくと、水の神様だということから龍神や弁天、七夕の織姫ではないかとも言われている神様です。

雅楽【五節舞】天皇即位限定!十二単の五人の舞

天皇即位式で舞われる格調高い「五節舞」。天女が舞い降りてきたことが起源ということも、謎多き女神が舞ったということにも魅かれる美しい舞です。

(ちなみにカメラマン佐々木は最近、奈良・吉野アンバサダーに就任しました!吉野の地で瀬織津姫が初めて舞ったという五節舞をいつか撮影してみたいと願っております。)

西宮神社で撮影された五節舞写真:天皇の即位のときだけ五人で舞われる五節舞。後ろ姿も美しい。西宮神社にて撮影

古典文学や映画などにも影響を与える五節舞と瀬織津姫

「続日本紀」にはじめて記載され、「紫式部日記」「源氏物語-少女-」にも登場する五節舞。

近年では映画「君の名は。」の主人公ミツハは日本書紀「罔象女神(ミツハメノカミ/瀬織津姫の別名)」から命名されていたり、「千と千尋の神隠し」の白龍のハクは瀬織津姫の夫、ニギハヤヒではといわれています。

以上、舞楽の中で宝塚のような存在「原笙会」による「五節舞」の解説はいかがでしたでしょうか。
今回、スタジオ撮影にご協力いただいた「ふらるさん」は月3回のお稽古をしに芦屋に通っており、関西を中心とした神社での奉納舞をされています。
原笙会では装束体験も可能です。

女人舞楽・原笙会
〒659-0015
兵庫県芦屋市楠町14-20-115
TEL/FAX 0797-23-1886
http://www7a.biglobe.ne.jp/~gagaku/

モデル:ふらるさん

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撮影協力:7studio京都

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