都心から約2時間、東京都あきるの市JR五日市線の終点、武蔵五日市駅。そこから更にバスで10分程行くと、日の出町の趣ある村の中に「伊奈沢天神社」があります。自然が多く落ち着いた雰囲気の中、近所の人達でつくりあげる手作り感溢れるお祭りを楽しむことが出来ました。様々な伝説のある「日の出町」、今、お祭りと共にその魅力を掘り起こしてみたいと思います。
伊奈沢天神社祭礼 毎年1月下旬の天神講に近い日曜日に開催
毎年1月25日の天神講に近い日曜日に行われる伊奈沢天神社の祭礼は、初縁日として盛大に祝われた天神講が起源と言われています。午前10時からの祭礼で執り行われる神事は、かつて養蚕業が盛んだった頃にお蚕さまのためにはじめられたといわれています。
その後販売される手づくりの豆太鼓、昔は小学生の高学年が新しい年への縁起物として作り、「マメで暮らす豆太鼓」と言って売っていたそうですが、今は地元青年会の青羽会により売られ、豆太鼓にはその年の干支が描かれます。動画は少し分かりにくいですが、社殿で儀式を行っている様子になります。
天神講とは菅原道真の命日!?
天神講とは、ひなまつり、子どもの日、七夕といった五節句のような全国共通の行事という訳ではありません。学問の神様とされる「菅原道真(天神様)」の命日である2月25日や、それにちなんで毎月25日に学業成就や合格祈願、子供の健やかな成長を願う伝統行事です。天満天神のお祭り、新潟県越後つばめの天神講をはじめ、福井県、富山県、長野県など一部の地域での家庭の風習として天神様の掛け軸の前にお酒や焼きガレイをお供えするところ等、様々なようです。
伊奈沢天神社の祭礼は、そのような天神講を起源とし、また養蚕業(現在都内では東京シルクの会含め数件程度)の名残も受け継いでいます。現在はお祓い等の儀式と地域の懇親がメインのようですが、かつてこの祭礼で執り行われていた湯花神事は、養蚕業が盛んだったころにお蚕さまのためにはじめられ、宮司がとりもつ熊笹で湯をかけてもらうと1年間無病息災で過ごすことができるというお祓いだったそうです。地域によっては湯立によって占いや託宣を行い、神意を問うというところも。
つるつる温泉など他にも魅力的な日の出町
日の出町は他にも、どんど焼き、火渡り荒修行、玉の内の獅子舞など魅力的な祭礼等があります。これらの行事は日の出町のHPからスケジュールを確認することが出来ます。また神社文化の盛り上がりだけでなく、木工業と製材業が盛んで、とうばや棺おけを作っており、日本の寺院文化を支えています。なんと棺おけの生産では日本で一番と言われているそうです。
伊奈沢天神社からバス停に向かう途中にあった羽生人形店に入ってみました。綺麗なひな人形の中に、首脳会談にいらした米大統領贈呈羽子板がありました。都内で羽子板と言ったら浅草寺の羽子板市しか知りませんが、その他の行事なども今後チェックしてみたいと思いました。また今回は行けませんでしたが、生涯現役の湯 つるつる温泉が近くにあります。アルカリ性の湯でお肌がツルツルで、美白になるそうです。美白で一体何が生涯現役なのかは想像膨らむところではあります。
日の出山荘 かつては首脳会談も!
日の出町と言ったら、世界の要人も訪れた「日の出山荘」が有名です。とても静かな落ち着いた場所で、武蔵五日市駅から車で、15分程度で行くことができます。青雲堂・天心亭・書院の3棟から成り、1980年代当時の日本人のふつうの生活のありさまを知ってもらうために、日の出山荘で他国の大統領と密に会談したそうです。このような会談は当時初めてで、その様子がわかるような写真の展示や、会談で使用した部屋を見ることができます。日の出山荘まつりは今のところ無さそうですが、当時の米大統領夫妻が日の出山荘に到着した際に、首相自ら抹茶をもてなした青雲堂でお茶とお茶菓子を楽しむことができます。
<参考>
東京都日の出町 https://www.town.hinode.tokyo.jp/
一般社団法人日の出町観光協会 https://www.hinodekanko.jp/