三重・伊賀の伝統芸能
三重県に広く伝わる民俗芸能「かんこ踊り」。「かんこ」の元の漢字は「羯鼓」となり、踊りで使用される肩から胸前へ下げられた締め太鼓のことを指します。太鼓のリズムに合わせて行われる踊りは、三重県北部では「雨乞踊り」として、南部では「念仏踊り」としての側面を持ち実施されることが多いです。
その中で今回は、伊賀市山畑地区の勝手(かって)神社で毎年10月第二日曜日に開催される「神事踊(かんこ踊り)」をご紹介します!
勝手神社のある伊賀市は特にかんこ踊りが盛んに行われている地域で、元々は40ヵ所以上に伝わっていたと言われています。雨乞いや厄払いの祈りを込めて続いてきた伊賀のかんこ踊りですが、その中でも「勝手神社の神事踊」は2022年にユネスコの無形文化遺産に「風流踊(ふりゅうおどり)」の一つとして登録され話題になりました。その舞台、勝手神社へ踊りが行われる10月8日にやってくると、のぼりがはためいていました。
こちらは勝手神社の社殿です。提灯が掲げられ、お祭りの雰囲気で良いですね。ユネスコの無形文化遺産に登録されたことを祝うのぼりも出ていました。
というのも2022年に登録された訳ですが、新型コロナウイルスの影響で踊りが披露されるのは実に4年ぶり。登録されてから今年は初の披露の場となるんです。
カラフルな行列が出発
勝手神社の神事踊りが開始する時間となりました!あいにくの雨予報のため、少々時間を早めてのスタートです。まずは勝手神社から東へ1km程行った所にある御旅所から行列が出発していきます。
この御旅所から勝手神社へと向かう行列のことを「御渡り」というそうですが、注目したいのがその衣装。色とりどりの衣装に身を包んだ皆様に目を惹かれます。
そして行列の先頭を行くのは2頭の馬。黒馬と赤馬がペアで勢いよく進みます。
地元の子どもたちも行列に加わり楽しそうですね。
花を頭に乗せた男衆。こちらは「ホロ花」と呼ばれるボタンの造花で、異彩を放っていますよね。
赤鬼と青鬼も現れました。その後ろから続くのは枝垂れの先の造花がかわいらしい「オチズイ」を身に付けた「中踊」と呼ばれる6名の踊り手になります。オチズイの上にはホロ花が乗っていて、胸前にある太鼓が羯鼓ですね。
さあ行列は、勝手神社を目指してどんどん進みますよ。
バチを持って進むのは、花笠を被った男衆。この4名は楽打(がくうち)と呼ばれ、「フクメン」と称される赤い布が顔を覆うように笠から垂れているのが特徴的です。
野山の風景の中をカラフルな一行。美しい光景です。
行列は集落の方へも。
自然の緑と衣装の赤の対比が映えますね。
この風景の中、笛や太鼓の音を響かせ行列が進むのは、どこか懐かしさを感じさせる風情があります。
勝手神社の神事踊「かんこ踊り」がはじまりました!雨天予報のため、時間を繰り上げてのスタートです。御旅所を出た一行は、勝手神社を目指し約1kmの道のりを歩んでいきます!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/smtF2l7mxJ
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) October 8, 2023
ちょうど田んぼには稲が育っている時期でした。
集落をだいぶ進み、勝手神社はもうすぐです。
とここで、先頭を行く馬に動きが。
急に暴れ馬になりました!勝手神社が近くなり見物客が増えたところで、沿道の人々を驚かせています。
かなり激しく向かってくる黒馬。これにはみんなビックリです!
勝手神社の鳥居前へと到着しました。神職の方々がお出迎えをし、お祓いを受けてから境内へと入っていきます。
オチズイを付けた皆様もお祓いを。オチズイをまとめて持っているのにもご注目。
このまま境内で行われる踊りが楽しみですね!
華麗な踊りを披露
勝手神社の境内では中央に太鼓が設置されていて、楽打の皆様がこちらでの演奏を担当します。太鼓と笛の音を合図に、踊りが始まります。
楽打を囲むように笛の奏者や踊り手の皆様がスタンバイ。
くるくるとオチズイを揺らしながら踊ります!
2体の鬼も踊りに参加しているんですよ。
だいぶ雨が激しくなってきましたが、踊りが続いていきます。カラフルな踊り手が動く様子が、どこか幻想的なものにも感じられます。
それぞれがそれぞれの踊りを披露していき、目が離せません!
踊り手を取り囲むように見物客もいて、一つ一つの踊りに見入っています。4年ぶりの踊りが見られるのは嬉しいですね!
笛と太鼓の音が響く中、かんこ踊りの行列が勝手神社へと入ってきました!ここからは境内で神事踊が行われていきます!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/lPKnY6gBl9
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) October 8, 2023
雨はどんどん強くなる一方で、1つの踊りが終了したところで中止となりました。本来なら4つの踊りを奉納する予定だったとのことで残念ではありますが、4年ぶりに1つでも踊りが奉納できたことに皆様ほっとされている様子でした。
衣装は紙で作られているため、雨は天敵。雨乞いの要素もある踊りなので雨は嬉しいのかもしれませんが、踊りを行っている時に振られるのは困っちゃいますね。一目散に片付けがはじまりました。
踊り衣装が解かれていく様子が見られるというのは、珍しい経験かもしれません。
両手で抱えて分かる衣装の大きさ。こんなに大きなものを頭上に乗せていたのですね。
服にも鮮やかな牡丹が描かれ美しいです。
ユネスコの無形文化遺産に登録されてから初、そして4年ぶりの開催となった勝手神社の神事踊(かんこ踊り)。毎年10月第二日曜日に開催されていますので、古くから連綿と続く踊りを見に来てみてください!
アクセス・周辺情報
勝手神社の神事踊が開催される伊賀市山畑地区へは基本的に車でのアクセスになります。今年は御旅所と勝手神社の中間地点にある山畑グラウンドが駐車場として開放されていました。車で来場の際は、三重県観光連盟ホームページ等の情報を確認のうえ、お越しください。
名古屋方面から車で来られる場合は名阪国道上柘植ICで降りるのがおすすめですが、その近くには俳句で有名な松尾芭蕉の生誕地があるんです。神事踊と合わせて、奥の細道の原点を感じに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
※松尾芭蕉の生誕地とされる場所は、伊賀市内にもう一箇所あります。