2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2022年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
1年の振り返りに羽子板を
12月も中旬に入ると、東京の街もすっかり年末ムードを迎えている。師走ともいうが、1年の締めくくりに奔走し、新年への準備を進める人の姿が見られるのも、この時期ならではである。その雰囲気が街全体から感じられるのが、ここ浅草ではないだろうか? 毎年12月17日から19日の3日間で行われる「浅草寺歳の市」は、まさにそれを味わえるお祭りだ。
浅草寺の仲見世へやってくると、土産などを売るお店の頭上に掲げられる正月飾りの数々。門松、獅子舞、駒など。その中の一つには、羽子板もある。浅草寺歳の市の代名詞でもある羽子板市の主役だ。日暮れ、仲見世を抜けて朱色が美しい宝蔵門の前までやってくると、左右にはぼわっとした黄色い明かりが艶やかな羽子板を売る露店が立ち並ぶ。大小さまざまな羽子板には、歌舞伎役者や美人画の顔が描かれる。時には現代の有名人の顔も。野球選手や映画スターなど、特にこの1年間に活躍した方が登場することからも、1年の世相を振り返られる場としても知られている。また、来年の干支(えと)が描かれた羽子板があるというのも師走らしい景色だ。
ところで、なぜ羽子板なのか。羽子板で行う羽根つきの玉はむくろじ(無患子)という木で作られるが、その名の通り「子どもに災いが無いように」との思いが込められたものである。1年の初めに羽根つきをすることで、子どもの無病息災を願っているのだ。また女の子の初正月に羽子板を贈る文化もあり、こちらも女の子の健やかな成長や厄除けの願いが込められている。そんなことからも、羽子板は新年を迎える際の縁起物として重宝されてきたのだ。
境内を巡ると、店ごとに趣向を凝らした羽子板がたくさん並ぶ。お気に入りを探して見て回ると、決めかねて迷ってしまうのも悩みの種である。露店の後ろには、煌々と光るスカイツリーが望めるというのも、文化の新旧の融合でおもしろい。羽子板を決めたら、後は屋台で一杯やって温まり帰りたいところだ。