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「龍勢祭」思いを託し、秩父の空へ|観光経済新聞

2021/4/17
2021/4/30
「龍勢祭」思いを託し、秩父の空へ|観光経済新聞

2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2021年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)

思いを託し、秩父の空へ

竹筒に火薬を詰め空中に打ち上げる「バンブーロケット」はアジア各地で見られる文化で、日本では「龍勢」「流星」「龍星」など、さまざまな呼び名で全国に伝わっている。とりわけ有名なのは秩父吉田の龍勢祭で、2011年放送のアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」で取り上げられたことで認知を広げ、いまだ多くのファンが毎年10月の例大祭に詰めかけている。

埼玉県秩父市下吉田にある椋神社がお祭りの舞台。西武秩父駅から臨時バスに揺られながら40分。午前10時30分ごろに会場に着くと、既に黒山の人だかりで、ゆっくり腰を据えて見物することは早々に諦める。出店が多く、祭りの気分は高まるが、中でも秩父産猪肉が入ったうどんにはぜひ舌鼓を打ってほしい。

龍勢は一つ一つにスポンサーがついており、打ち上げる前には必ず櫓の上から、代表者による口上が読み上げられる。歌い上げるような独特の節回しも面白いが、口上の中に織り込まれた龍勢の特徴、製造流派、工夫を凝らしたパフォーマンスもユニークで、慣れてきたらその内容にもぜひ耳を傾けてみることをお勧めする。また、スポンサーといっても、地元の民宿、工務店、中には「じいじの願い」という名前を冠した個人名協賛の龍勢もあって、そのローカル感もこの祭りの魅力だ。

口上の後は、お待ちかねの龍勢発射だ。「しゅるるる」という空気を引き裂く鋭い音とともに龍勢櫓から白煙が空へと伸びていく。意外にも、発射が失敗する確率は高い。打ったら必ず成功するというお約束感はなく、毎回ハラハラ緊張しながら見られるし、成功したときの喜びはひとしお。これも龍勢祭の醍醐味(だいごみ)なのだろう。

龍勢祭には400年の歴史があるといわれる。明治以降は太平洋戦争中と、1964年からの8年間、長期の休止期間をはさんだが、そのつど地元民たちの熱い思いで復活を遂げている。コロナ禍を克服し、龍勢が秩父の空に再び打ち上がる日を熱望している。

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