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花江夏樹が主人公役!5月26日公開『雄獅少年/ライオン少年』の見どころを獅子舞専門家が解説!

2023/5/23
2023/5/23
花江夏樹が主人公役!5月26日公開『雄獅少年/ライオン少年』の見どころを獅子舞専門家が解説!

中国の大ヒット映画が日本に上陸!中国の田舎町で育った貧しい少年が、中国の伝統芸能である獅子舞を通じて成長して、人生を切り開いていく映画『雄獅少年/ライオン少年』。2023年5月26日から全国で放映が始まる。

それに先立ち、獅子舞の専門家の視点で、この大ヒット映画の見所をご紹介したい。私は中国系の獅子舞はもちろん、日本全国500件以上の獅子舞を取材してきた。この映画の試写会に参加して感じたことや見所について、お伝えしたい。

中国で爆発的なヒットを記録!

2021年12月に中国で公開され、興行収入2.49億元(約50億円)、動員638万人というとてつもないヒットとなった本作。中国国内の映画レビューサイトでは、日本でも大ヒットしたアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』の8.0点を上回る8.3点を記録、数々の大作を押しのけて中国アニメーションとして前代未聞の「2021年公開作品映画満足度ランキング」第1位を獲得した。

偉人伝説やファンタジー作品の人気が高い中国アニメだが、本作は現代中国を舞台とした完全オリジナル。急速な経済発展の陰で、祖父母たちと共に故郷に残される出稼ぎ労働者の子ども「留守児童」問題を取り上げた。捨て猫扱いをされる少年が、獅子舞で自らの運命に挑戦するエモーショナルな物語が観る者全ての心を揺さぶり、大反響を呼んだ。

驚嘆する写実的な映像美とド迫力の獅子舞アクションを最高峰の3Dアニメに昇華し、中国の懐かしい伝統競技に最新のポップミュージックを融合させた本作は、2022年3月待望の日本上陸。「電影祭」で『雄獅少年 少年とそらに舞う獅子』として日本語字幕版が限定上映され、アニメーションのクオリティの高さと、魂が震える衝撃のクライマックスに観客の口コミが爆発的に拡散。業界関係者も絶賛する傑作として、全国公開が期待されており、今回の公開へと至った。

少年が獅子舞を通して、困難に立ち向かう

ここで映画のあらすじについて簡単に触れておこう。広東省の村で祖父と暮らす貧しい少年のチュン。両親は出稼ぎに行っており、お正月も帰ってこない。ある日、獅子舞バトルで屈強な男を相手に勝利した自分と同じ名前の少女・チュンの勇姿を目撃し、獅子頭を譲り受ける。そして、獅子舞バトルの全国大会を目指すこととなる。

そこから、同じように出稼ぎの親を持つマオとワン公を誘い、獅子舞チームを結成!飲んだくれの塩漬け魚売りで、元獅子舞選手のチアンという男に弟子入りする。チアンの妻・アジェンの励ましもあり獅子舞大会の予選を勝ち進むが、チュンの親が建築現場で転落し、意識不明で村に戻される。チュンは家計を支えるために、自ら広州へ出稼ぎに行くことになった。

大都会での労働は苛烈で、獅子舞の練習をする暇などない。やがてチュンはチアンに連絡すら取れなくなっていく。刻々と獅子舞の全国大会の日は迫ってきた…。

獅子舞の専門家が見どころを解説!

ここからは獅子舞の専門家の視点で、先日試写会に参加して考えたこの映画の魅力をお届けする。注目すべきポイントを5つに絞って、見どころを紹介しよう。

①獅子舞をしたくなる理由に注目

獅子舞はある意味、「自分でない何者か」になることが醍醐味だ。主人公・チュンたちが「なぜ獅子になりたかったのか」に注目するとよいだろう。

主人公・チュンが「ひ弱な猫と馬鹿にされるな」と言われるシーンがある。チアンへの弟子入りをする場面では、なかなか受け入れてもらえずに、塩漬け魚を売りさばく手伝いをする毎日が続く。その中で、李白の詩を引用して強く生きたいと訴えた。

貧困に苦しみ、社会的弱者が獅子をかぶることで英雄になれる。つまり、変身願望の根拠にあるのが生活苦という普遍的なものであり、それがこの映画を観るものの心を強く揺さぶる大きな理由でもあるだろう。

②獅子舞を続けるのに不可欠な周囲の理解

獅子舞を継続するには、家族や仕事場の理解が必要だ。仕事が終わったら夜遅くまで獅子舞の練習に没頭するという生活スタイルも珍しくない。

師匠のチアンは村一番の獅子舞の名手であったが、塩漬け魚売りに専念せざるを得ず、獅子舞を封印しなくてはならなかったという過去を持つ。同様に主人公のチュンも、出稼ぎに行かなくてはならなくなり、一時は獅子舞を手放すことすらも考えた。

主人公のチュンが出稼ぎに向かう

日本の獅子舞において、昔は農閑期の仕事のない時期に「退屈なので娯楽が欲しい」と考え、獅子舞を始めたという事例も多い。農家や個人商店であればまだ、仕事の都合をつけやすい。

しかし、現代社会においては会社の規模も大きくなり、「獅子舞のために休みたいです」と会社に言っても同じような境遇の人もなかなかいないし、一人だけ優遇するわけにもいかない。それゆえ、なかなか獅子舞のための休みを取りにくい。獅子舞を続けていくには時間のゆとりが欠かせないし、かつ経済的に安定していることが条件にもなってくる。

③女性が獅子舞をするというハードルの高さ

獅子舞の全国大会(第5回)の優勝チームメンバーの一人である少女・チュンは、女性であるがゆえに、獅子舞の継続に難しさを訴える場面がある。そして、獅子舞への希望を、主人公・チュンに獅子頭を預けることによって託す。

日本の獅子舞でもかつて、ほとんどの女性が担い手になることは難しかった。地域によっては「女性に厄を触れさせてはいけない」との想いから、禁止している地域もあったほどだ。

しかし、近年は人口減少による担い手不足などの理由から、女性が担い手にならざるを得ない地域も多くなった。女性が踊る獅子舞は男性の力強さが薄れて、しなやかさが際立つ。獅子舞の世界に女性が進出していく時代は来るのか?そのような視点で、少女・チュンについて考えてみるのも良いだろう。

④身の回りのものを獅子頭に!

さまざまな困難を乗り越えて、獅子舞に想いをぶつける主人公・チュンたち。その行動に注目してみよう。例えば、スイカやヘルメットを獅子頭に見立てて、被って舞うシーンが描かれている。獅子頭が買えなくても、自分たちの暮らしの中でそれに近いものを使って舞っているのだ。「これぞまさに獅子舞の原点!ブリコラージュの究極系か」と思い、映画を観ていて感動した。

それから、師匠のチアンが塩漬け魚の店番をしているときに、魚を入れる籠で獅子舞を始めて、奥さんに怒られるシーンは大変興味深かった。魚がピチピチと勢いよく飛び出していく感じが、獅子舞の活きの良さとシンクロしており、なかなかにエモーショナルなシーンだったからだ。

あとは、太鼓の打ち手を探している際にワン公を説得するシーン。肉を叩き切っている姿が、太鼓を叩く姿と妙にシンクロしていて、これもなかなかに良かった。獅子舞は生活の中から湧き出てくるように作られることの象徴的な行為のように思えた。

日本全国を見渡せば、農民が「箕(み)」という穀物をふるいにかけて殻やチリを取り除く道具を2つ重ね合わせて獅子頭を作り、獅子舞を始めたという記録が多数残されている。三重県伊勢市二見の箕獅子などはその典型である。豪華絢爛な獅子舞道具を作るのではなく、素朴でお金のかからない営みというのも、獅子舞界隈ではちらほらと目撃する。

⑤中国の獅子舞はひたすら決闘!

この映画の大きな見所の1つとして、獅子舞の決闘シーンがある。ポールの先を伝って高く上り戦闘を繰り広げたり、青菜を争奪しようとしたりとひたすら決闘しまくりだ。

演舞のスピードや臨場感、所作についてはやや脚色が入っている。しかし、実際に獅子舞を習って動きを研究されて、制作された映画だと聞いており、かなりかっこいいポイントが押さえられているように思う。3Dアニメーションの圧倒的な映像美によって、決闘シーンのかっこよさがより際立っている。このような場面は日本の獅子舞にはなく、中国の獅子舞らしい光景とも言える。

日本の獅子舞は中国のそれと比較すると、技術を高め合う専門集団というよりは、地域に属する市民組織のような場合も多い。

民俗学者の柳田國男の著書『獅子舞考』(筑摩書房『柳田國男全集18』1990年)が示すように、村境で獅子舞をぶつけ合って、隣村に対する鬱憤を晴らしていたなどの事例がある。あるいは昭和時代に、獅子舞に勝敗をつける大会なども北陸地方など各地で開催されていた例もある。しかし、現在はほとんど皆無だ。「自分たちの舞いは自分たちの誇り」「みんな違ってみんないい」という、平等主義的な思想で獅子舞は行われているようにも思える。

反面、中国の獅子舞は勝ち負けがはっきりと決まる、スポーツの大会のようだ。体力も技術も必要で、強くなって結果を出した人間が輝ける。中国の獅子舞だからこそ味わえる、熱血の決闘!そこに果敢に挑む、主人公・チュンたちに注目だ。

主人公・チュンは『鬼滅の刃』竈門炭治郎役の花江夏樹

日本語吹替版では豪華キャストが決定。格差社会でもがきながらも獅子舞バトルで自分の将来に立ち向かう主人公・チュンには『鬼滅の刃』竈門炭治郎役で幅広く認知され、様々な作品でその演技力を遺憾なく発揮している花江夏樹。

そしてチュンに獅子舞のきっかけを与え、折に触れて彼を励ますヒロイン・少女チュンは、出演作多数、2022年にはドラマ『silent』でその確かな演技力に注目が集まった桜田ひよりが担当する。

左から師匠のチアン、主人公・チュン、そして仲間のマオとワン公

チュンの師匠チアンには、アニメや洋画吹替の他、大河ドラマなどの俳優業でも常に話題沸騰の山寺宏一。チュンの仲間マオには『ONE PIECE』ウソップ役などで人気の山口勝平。もう一人の仲間ワン公には『不滅のあなたへ Season2』カム役などで演技力に磨きをかける落合福嗣。『SPY×FAMILY』シルヴィア・シャーウッド役などで艶のある演技で魅せる甲斐田裕子が、チアンの妻アジェンを演じる。実力派が結集した日本語吹替版が完成した。

製作総指揮は中国屈指のヒットメーカー

中国アニメーションの常識を完全に覆してみせた製作総指揮は、これまでの中国映画史上、歴代興行収入第1位を記録した『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』や全世界興行収入900億円を記録した『こんにちは、私のお母さん』を放った中国屈指のヒットメイカーであるチャン・ミャオ。

タッグを組んだのは3Dアニメーション『美食大冒険』で高い評価を得て、国内外で多くの受賞を果たしたソン・ハイポン監督。脚本は中国の人気若手作家リー・ゼェーリン。ゲームやアニメ作品で美術指導を手掛けるハイポン監督チームの辣腕、ズー・ムーユィが圧倒的リアリティーに満ちた映像を完成させた。

新宿では豪華声優陣による舞台挨拶も!

『雄獅少年/ライオン少年』は5月26日に、北海道から沖縄まで全国90館以上で一斉公開される。新宿バルト9では5月27日の10:30の回の上映後に、花江夏樹、桜田ひよりをはじめ吹替キャスト陣による公開記念の舞台挨拶も行われる予定だ。

まずは下記の予告編から!そしてスクリーンで中国の獅子舞バトルの迫力と少年チュンの物語をぜひ見てほしい。詳細は『雄獅少年/ライオン少年』公式サイトでご確認いただきたい。

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