茨城県桜川市の代表的な名刹「雨引観音(雨引山楽法寺)」。毎年4月の第2日曜日、日本二大鬼祭の1つである「マダラ鬼神祭」が開催されます。
祭りの起源は、さかのぼること室町時代。当時、兵火によって寺が焼失した際、白馬に跨ったマダラ鬼神が大勢の鬼を統率し、寺を再建したという故事にちなんで始まったとされています。鬼神の乗馬を伴う行進や鬼踊り、お稚児の行列など見どころが満載です。
ここからは、2021年の現地からの開催レポートをお届けします。ぜひ、現地を訪れるときの参考になさってください。
マダラ鬼神祭とは?
毎年4月第2日曜日に、茨城県桜川市の雨引観音(雨引山楽法寺)で開催されます。京都の広隆寺に伝わる鬼の祭とともに、日本二大鬼祭と呼ばれることもあります。新型コロナウイルスの影響で、2020年は開催が中止となりました。今回、鬼神祭ファンにとっては念願の開催だったことでしょう。それでは、実際に祭りを見た様子をお届けします。
雨引観音の境内に鬼が登場
雨引観音はJR水戸線の岩瀬駅からタクシーで10分の場所にあります。休日は雨引観音の駐車場までバス「ヤマザクラGO」も運行しているようです。車で訪れる場合は駐車場が複数ありますが、鬼神祭当日は混むので早めに到着しておくと安心かもしれません。
雨引観音の駐車場に着くと、鬼たちが集まっていました。ここから行列は開始されるようです。鬼たちを眺めていたい気持ちもあったのですが、境内の石段に先回りして、場所を確保することにします。
マダラ鬼神祭は午前11時、花火の轟音とともに開始。参道の門にマダラ鬼神が姿を表すと空気は一変し、この異形の神に見物客の視線が一直線に注がれます。マダラ鬼神が石段を駆け上がってくると、感嘆の声が上がります。
法衣を着た僧侶が後に続きます。
旗を掲げた鬼たちも続きます。
紫色の法衣を着ているのは、雨引観音のご住職様であり、このお祭りでは様々な重要な役割を担います。
この行列の最後に来るのが籠です。
見物人は籠の後ろにぴったりと付き、一緒に石段を一歩一歩上がります。
炎が燃え盛る中で、鬼が踊り狂う
石段を上った先にあるのが、雨引観音の観音堂や桜、そしてこれから演舞が行われる広場です。
竹矢来(たけやらい)と呼ばれる竹で作った囲いの周りに、見物客が続々と集まり始めました。
鬼は一直線に勢ぞろい。さて、これから何が始まるのでしょうか。
ご住職様が厄災を払うため、大太刀を様々な方向から振ります。
ご住職様はお経も唱えます。
火を点けているようです。
煙がどんどん広がっていきます。
煙の広がり方は凄まじく、空を隠すような勢いです。
煙の中から姿を現したのが、マダラ鬼神です。
他の鬼とともに、棒を振りながら演舞が始まりました。
演舞は激しさを増します。
棒に火を点け始めました。
火が付いた棒を振りながらも、演舞は続きます。
12時半ごろ、踊りは終了しました。
終了後は、一旦鬼たちは建物に入ってしまいますが、少しだけ記念撮影にも応じてくれました。11時から12時半までとあっという間でしたが、激しく迫力があり見応えのあるお祭りでした。コロナ禍ということもあり、例年行われている破魔矢は実施されませんでしたが、それでも充分楽しむことができました。
マダラ鬼神祭の由来
ここで、マダラ鬼神祭の由来についても触れておきましょう。そもそも、マダラ鬼神祭はなぜ始まったのでしょうか。
「マダラ」とは中国で言う「摩多羅」であり、インドで言う「外金剛部の神」のこと。すなわち、観世音菩薩の主宰する「補陀洛浄土」の守護神です。雨引観音と「マダラ」との関わりは、用明天皇2年(582年)に雨引観音を開いた法輪独守居士(ほうりんどくしゅこじ)が東支那海を渡航した際、荒れ狂う波をマダラの神が鎮めたことに始まります。
マダラ鬼神祭の発祥は文明4年(1472年)と伝えられています。
長尾景信と古河公方足利成氏(しげうじ)の争いが起こり、成氏の弟・弘尊と結城城主結城氏広が長尾方の立てこもる雨引山(雨引観音)を奇襲します。山は炎上しましたが、本尊延命観世音菩薩は難を避けられました。
それから数日後、覆面をした鬼形の職人たちが毎晩現れて、仮本堂の制作を始めたそうです。その職人たちを統率したのが白馬に跨がる鬼神で、それを見た地域の人々はこれこそまさに天竺のマダラ鬼神だと噂しました。このように、異形の職人集団が無償で仮本堂の建設を始めたのが、マダラ鬼神祭の由来であり、少なくとも江戸時代にはこの祭りが定着していたようです。(参照:雨引観音のホームページ)
雨引観音の美しい桜
お祭りの後は雨引観音の境内やその周辺を散策してみました。
このマダラ鬼神祭の開催時期は、桜の開花と重なります。雨引観音は桜の名所としても知られており、境内各所に美しい桜が見られるのです。観音堂の横に植わっている桜は、とても大きく白色に近い花を咲かせます。
周辺はお店なども充実
お祭りといえば、屋台がつきものです。駐車場の前にはずらりと屋台が並びます。
大判焼きやバナナチョコレート、焼きそば、煮イカなどがありました。
また、参道近くに青竹製品のお店もありました。ここでは、地域の民芸品を見ることができます。また、春らしくたくさんの筍が並んでいました。
境内にはアヒルが飼われている他、孔雀が歩いている姿も見かけました。動物とも触れ合えるなんて、本当に見所が満載です。雨引観音はマダラ鬼神祭はもちろん、お花見もお店も動物も楽しめる場所なのです。ぜひ現地を散策してみてはいかがでしょうか。
マダラ鬼神祭 例年の開催情報
■開催日
毎年4月の第2日曜日
■開催地
雨引観音(雨引山楽法寺)
茨城県桜川市本木1番地
■アクセス
・JR水戸線「岩瀬駅」よりタクシー15分(6km)、または自転車40分、徒歩1時間40分
・桜川筑西ICより15分(7km)
・「筑波山口」バス亭よりタクシー30分(19km)
・桜井市真壁町より車20分(10km)
■内容
11:00頃~
雨引観音の第1駐車場、レストラン「三笠」前からマダラ鬼神の乗馬に伴う行列が出発します。黒門(薬医門)をくぐり145段の石段を登ります。
11:30頃~
境内本堂前にて紫燈護摩、厳修開始します。マダラ鬼神等の鬼踊りの後、本堂から鬼等が49本の矢を放ちます。その矢を拾うと家内安全・無病息災等の後利益があるといわれています。その後、参詣人に向って祝いの餅投げをします。
※詳細と最新情報は雨引観音ホームページなどでご確認ください。
※当日は大変混み合うことが予想されますので、時間には十分余裕を見て、お出かけください。