どうも。奇祭ハンターのまっくです。今回の「旅する奇祭」は、「空飛ぶダーリン」で有名な新潟の奇祭、むこ投げ&すみ塗りを紹介。奇祭✕秘湯✕美酒の3コンボをお届けするぜ!それでは行ってみよう。
東京から上越新幹線で一時間強。越後湯沢の駅に着きました。さらに朝9時の雪国豪雪ライナーに乗って、松之山温泉へと向かいます。
松之山温泉がある地区は、見ての通りの豪雪地帯。豪雪だからこそ、むこ投げもできるというもの。過去には2メートルを超える積雪量となったこともあるそうな。
奇祭が行われる、松之山温泉街へ到着。一本道の小さな温泉街といった風情です。
隠れミッキーならぬ隠れアヒル。雪国ならではの遊び心が楽しい。
パパパパーン。気さくに話してくれた土産物屋「十一屋商店」さんで奇祭のチラシをゲット。地図によると、松之山温泉は一本道の両脇に宿や店が並び、一番奥のエリアがむこ投げ&すみ塗りの会場となっているらしい。奥のエリアに進むには関所を通る必要があるが、受付は13時~。しばし時間が空いてしまった。
コロナ感染対策のため日帰り温泉をやっている宿が少ない中、唯一やっていた「鷹の湯」を訪問しました。
松之山温泉の、鷹が湯で傷を癒しているのを木こりが発見したのが由来という伝説にちなんだ名前だと思われます。
露天風呂から見える一面の銀世界。湯の温度はメチャメチャ熱く、そして何故かしょっぱい!?実はこの温泉、1200万年前の化石海水が基となっているのだそう(まさに秘湯!)。これが日本三大薬湯と言われる由縁か。
13時になったのでオマツリ会場へと続く関所へ。コロナワクチンの接種証明書アプリを見せて、無事にマスクと腕章をゲット。マスクが黒いのは後ですみ塗りで汚れても大丈夫なようにという配慮らしい。
「むこ投げ」のお祝いは半分、後の半分は?
酒を飲みながら、新婚のおむこ様をみんなで祝う会場となる「地炉」。温泉街の一番奥にある、築約100年の古民家を移築した体験施設で、普段も様々なイベントスペースとして利用されているようです。「金田一少年の事件簿」であれば、ここで誰かが殺される展開になる場所でしょう。
入口の前には足湯ができるスペースも。松之山温泉の蒸気で顔を蒸す「顔湯」も、お肌があたたかく、しっとりするのでおすすめなんだとか。
むこ様が祝われているであろう間、我々見物人の間では絶好のシャッターチャンスのポイントを巡って、年配のカメラマンたちによる熾烈な場所取り争いが行われていました。もはや奇祭名物ともいえる、いつもの光景です。
14時が過ぎ、乾杯の挨拶の後、むこ様が盛大に投げられました。
窪塚洋介のように「アイ キャン フライ!」
雪の中にぶっ刺さった後、自ら転がるパフォーマンスを見せるムコ様の姿はまるでリアクション芸人のよう。
毎年1月15日は、新潟は松之山温泉の奇祭、ムコ投げ・スミ塗りじゃ。新婚の婿をお堂のから雪の斜面にぶん投げ、その後、どんと焼きで焼いた炭で顔を塗り合うゾ。略奪結婚で娘を取られた腹いせが由来と言われておる。略奪から始まる祭りもあるということじゃのう。 pic.twitter.com/NM6SQEMPID
— 奇祭ハンター まっく (@Mac40626899) January 15, 2022
そう。むこ様への祝いはむこ投げの半分で、残りの半分は娘を取られた「腹いせ」なのだそう。略奪から始まる祭りもある。そういうことです。てか、過去に起きた事件が定番化し、村の習俗として定着するのって何だか興味深いですよね。
「すみ塗り」は白銀のすみつけバトル
今回最高のシャッターチャンスも無事に終了したので、後半戦の「すみ塗り」会場へと移動しました。どんど焼き用の藁にダルマが磔刑にされたジャンヌ・ダルクのように飾られ、これからまさに火ダルマとなる模様。
今回の主役の二人によるケーキ入刀ならぬ、どんど点灯。炎の呼吸、新婚の型。
「うぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!おのれ人間め、覚えてろよ!」
磔刑にされ、火あぶりに処されたダルマたちの断末魔の叫びが聞こえた後(ウソです)、火ダルマの影も形もなくなり、いい感じに消し炭ができました。いよいよ後半戦の「すみ塗り」の始まりです。
ちなみに、不動滝を上がったところにあるすみ塗り会場にはスペインの作家、サンティアゴ・シエラのアート作品「ブラックシンボル」を設置。この高さ10mの巨大な雄牛は、スペインのシェリー酒製造会社「オズボーン・グループ」の広告看板を引用したポップアートなのだとか。モクモク煙も出ているし、どちらかといえば焼肉屋を彷彿とさせるなと思ったのは、ここだけの話。
「キャーーーーーーーーーー!」
あちらこちらで、子どもたちの楽しげな悲鳴があがり始めました(今度は本当)。笑顔で顔にすみを塗り合い、和やかに新年の挨拶を交わしている年配の方もいます。塗られれば塗られるほど除災祈願となるので、盛大に塗り合いましょう。
やべ!目が合った。「あれ?ひょっとして、塗っていいの?」
近い近い近い怖い怖い怖い。
「ねぇ。本当に塗っていいの?」
「ギャーーーーーーーーーー!」
この後、滅茶苦茶〇〇を塗られました(ハート)。
シュバババッ!
「お勤めご苦労様です!」
負傷者が出た場合の対応や火の警護にいらした十日町警察署の方々もこの通りまっ黒。
「さぁ、宴の支度じゃぁーーーい!」
祭りも終盤。子どもにはみかんが、大人には御神酒がふるまわれます。お父さんが持っている御神酒は、地元・新潟第一酒造の「越の白鳥」。
無濾過好きなら、同蔵元の山間もおすすめです。
酒のあてにピッタリのスルメも登場。
いや、てか、どんど焼きの残り火で焼くんかい! 無駄がないけど、どんなSDGsだよ!
今回主役となった新婚カップルの方々と、みんなの素敵なマドンナを奪われた腹いせ(?)にノコノコとやって来た友人のみなさん。
おめでとう!未来はまるっと君たちのものだ!今日の「むこ投げ」は間違いなく彼らにとっての一生の思い出となり、後年までも語り継がれていくことになるのでしょう。いや~、奇祭って本当にいいものですね。
今回のオミヤゲジャパン
温泉街の土産物屋「十一屋商店」には、巷で何かと話題の温泉むすめの松之山棚美さんが飾られていました。誕生日がむこ投げと同じ1月15日らしく(設定の芸が細かい)、ファンの方から花束を始めとした誕生日プレゼントが届き、祭壇(キャラのグッズや写真を一か所に集積し、飾りつけた場所)が形成されていました。何と直接、この奥越後の秘湯まで貢ぎ物を直接奉納しに来る方もいました(強火オタクの行動力!もはや神なき温泉地の新世代の神やで)。
せっかくなので私も越後ビールと湯治玉子と松之山棚美キーホルダーを購入。「むこ投げ」を見に行って見事「よめ」(二次元)をゲット!(やかましいわ!)
今回のオサケノジャパン
今回は松之山温泉の近隣にある苗場酒蔵の「醸す森」を紹介。「新潟のお酒といえば淡麗辛口!」というイメージを覆すフルーティ酒。大変コストのかかる一段仕込みを使用した、新感覚の甘味と酸味は乾杯酒にも最適です。
松之山温泉からほど近い「醸す森バル」(ホステルも併設)に直接寄りたかったのですが、コロナの影響で食事やお酒は宿泊客のみということだったので、帰路途中に越後湯沢駅から徒歩5分の「地酒BAR 山新」でオーダー。「地元のお酒だから多分あるだろう」という予感的中でした。
今回の秘湯✕奇祭✕美酒を巡る3連コンボ、いかがでしたか?なお、むこ投げでは毎年、前年に結婚した(もしくは結婚予定のある)カップルを全国から大募集。近々結婚する予定のカップルは応募してみては?当選すると、現地までの旅費や宿泊費などがプレゼントされるそうだゾ。