「大曲の花火」といえば8月末の「全国花火競技大会」が有名ですが、春と秋にも大規模な花火大会が開催されています。
2023年は4月29日(土)に「春の章」を開催。この2023年の「春の章」、実はこれまでとは構成を変えての開催でした。その変化とは? 開催当日の様子とともにお届けします!
目次
2023年「大曲の花火 春の章」は新作花火コレクションと合体!
「花火のまち」大曲(秋田県大仙市)では、夏の「全国花火競技大会」以外にも多彩な花火大会が開催されています。なかでも「大曲の花火」を冠した「春の章」「秋の章」は、ボリューム・企画内容ともに、「全国花火競技大会」に次ぐスケール。
2021年までは、3月に「冬の章」として「新作花火コレクション」が開催されていましたが、2022年は「大曲の花火 SPRING FESTA」として4月29日に「新作花火コレクション」、30日に「春の章」を開催するという特別企画を実施。
そして2023年は、「新作花火コレクション」を「春の章」に吸収し、ゴールデンウイーク初日の4月29日(土)開催となりました。
「春の章」はもともと、「世界の花火・日本の花火」として海外花火業者のプログラムが披露されていたのですが、2023年の「春の章」では、「新作花火コレクション」と「世界の花火・日本の花火」の両方を盛り込んだ構成となりました。
打上時間も、従来の約90分から約120分に拡大。
会場では、ついに出店も復活!お祭り的な楽しみも戻ってきて、開始前から賑わっていました。
幕開けは豪華なスターマイン
ようやく日も暮れてきた19時。ついにオープニング花火がスタート!
曲は2022年公開の映画「THE FIRST SLAM DUNK」の主題歌、10-FEETの「第ゼロ感」。アップテンポな曲入りで派手なトラ打ちが始まり、まだ薄く青みが残る空に鮮やかな花火がガンガンと上がります。
加速感のある音楽とともに、観客をあっためるに十分な花火が上がりました。
完成度と創造性を競う「新作花火コレクション」
続いては「新作花火コレクション」の開始。
「新作花火コレクション」は、45歳までの若手花火師による競技花火です。若手とはいえ、すでにその煙火店を担っている方も出場されるので、そのレベルは決して低くはありません。
競技種目は「10号玉芯入割物」「新作花火」の2種類。
「芯入割物」は、円形の花火の真ん中にさらに円(芯)がある花火で、同心円がいくつも重なっている多重芯花火です。
芯が多ければ多いほどいい、というわけではなく、全体的な形やバランス、発色、消え口やその他の工夫など、さまざまな要素で評価されます。
「新作花火」は、4号玉10発と5号玉5発、計15発を組み合わせて表現します。その創造性や独自性、斬新さで評価されます。
この2種類を20人の若手花火師が競いました。
今回の総合優勝は、北日本花火興業の今野貴文さんでした。
今野貴文さんは2022年の新作花火コレクションでも総合優勝を果たしているので、貫禄の二連覇!
その他、芯入割物および新作花火の優勝・準優勝作品を動画にまとめてみました。
画質が良くないので恐縮ですが、よろしければ参考に。
個人的に、入賞作品以外で気になった作品を、少しですが挙げてみたいと思います。
髙城煙火店(千葉)の髙城渉さんの新作花火「とんぼの楽園」。ひと目でとんぼとわかる造形の花火が夜空を飛びました。
「三重芯 月が欠けていく」で知られる佐藤煙火(宮城)の、「天体シリーズ」とでも呼びたくなる「昇曲付 三重芯 星空とオーロラ」。佐藤晃朗さんの作品です。複雑にスライドする光の変化が面白かったです。
毎回個性的な新作花火を披露してくださる、芳賀火工(宮城)の石村佳恵さん。これまでも、秋田県の竿燈まつりをイメージした花火や、羽生結弦さんの4回転半ジャンプを表現した「氷上の挑戦者に花束を」など、「これ花火でどうやって表現するの?」と思うような花火を出品されています。
2023年の新作花火「虹色しゃぼん玉」は、パチン・パチンとしゃぼんのように弾ける曲導や、開いたあとの色変化など、個性的でカラフルで遊び心溢れる作品でした。
(株)華松煙火(長野)上條僚士さんの芯入割物「昇曲導付 四重芯細波菊」。落ち着いた色合いと、すっーと長く伸びてゆく光が印象的でした。
花火で世界旅行!5つの煙火店が魅せる創造花火
そして、競技花火だけでなく、競技花火3~4社ごとに、地元大曲の煙火店による創造花火「花火と音楽で巡る世界紀行」の5つのプログラムが披露されました。
第一幕「北アメリカ」は、誰もが一度は耳にしたことがあるであろうロックの名曲「Rock Around the Clock」。軽快なリズムに合わせ、アメリカらしいポップで華やかな花火が上がりました。担当は和火屋。
第二幕「アフリカ」は北日本花火興業担当。ディズニー映画「ターザン」の勇壮な音楽「トゥ・ワールズ」(フィル・コリンズ)に乗せた花火が、広大な大地や力強い自然をイメージさせます。
第三幕「ヨーロッパ」はパリをイメージした「La Vie en rose」。宝石を表現したペンダントシリーズの響屋大曲煙火らしく、煌びやかな花火がシャンソンをバックにゆったりしたテンポで上がりました。薔薇の花の型物花火が印象的。最後は薔薇の花束?
第四幕「アジア」はインド映画のダンスシーンをイメージしたものだそう。担当は小松煙火工業でした。いかにもボリウッド!な音楽に、花火もリズミカルなだけでなく余韻を残す緩急をつけたプログラム。
第五幕「中東」はエジプトをイメージ。使用曲の「マルコ・ポーロ」(ロリーナ・マッケニット)はオリエンタルな楽曲でわりと単調でしたが、華やかな花火がシンプルな曲の世界観を膨らませていました。担当は花火創造企業。
いずれも、一般的な花火大会ならフィナーレクラスの花火。このクオリティの花火がいくつも見られる「大曲の花火」ならではの贅沢さを味わいました。
競技花火を見慣れていない人にも、競技3~4社ごとにドカンと賑やかな創造花火が入ると、集中力が途切れないのではないかと思いました。個人的には来年以降もこの構成がベースだと嬉しいです。
締めは世界と日本の花火の大コラボレーション
フィナーレは、「世界の花火・日本の花火」。2019年以前は、海外業者が独自のプログラムを上げる形式だったと思うのですが、2023年は、カナダの「Fireworks FX」と大曲の煙火店とのコラボとなりました。
カナダのミュージシャン、アシュリー・マックアイザック「Sleepy Maggie」で始まったプログラムは、それまでの創造花火の倍以上と思われるワイド感!
カナダの楽曲を意識して聞いたことがないので、これがカナダ音楽独特のものなのかわかりませんが、ちょっとケルテイックな感じもする曲でゆったり目に上がりました。
しかしラストは
夜のスクリーンをいっぱいに埋め尽くすような花火!
1曲目が終わり、これで終了かと思ったら、少し間を空けて、再び音楽が響きました。
重厚な音楽にのせた大玉の単打ちから対打ちへ。
「Dream Chasers」(Future World Music)の心を揺さぶるような旋律に乗せ、鮮やかかつ繊細な花火の数々が夜空を染め上げました。
フィナーレは過去の「春の章」「秋の章」と比しても見ごたえがありました。
ただ、どういうコラボだったのかがパンフレットやHPを見てもわからず…。見慣れた大曲の煙火店の玉が上がっているのはわかったし、トラ打ち(地上から吹き上げる花火)のパターンがあまり見ないものだな~という程度には思ったのですが。
翌日の競技会表彰式の会場では少し解説もあったようで(後日、大仙市のコミュニティFMラジオ「FMはなび」で放送)、表彰式まで注目するコアなファンのお楽しみ、というのもアリかとは思います。でもせっかく日本ではほぼ見る機会のない海外業者の花火なので、事前にもう少し特色や見どころの説明があれば、これから花火を知っていきたい方にも親切だったのではと思いました。
とはいえ全体的には、大満足の花火大会でした。
花火師さんの熱意と創造性溢れる花火に、「これぞ大曲!」な見ごたえのあるスターマイン。今後の「春の章」や「秋の章」への期待がさらに高まりました。
春の花火はここが魅力!「GWに花火」は定番なるか?
夏と違い、春の花火は
・観客数少な目のなのでゆとりをもって見られる
・往復の交通機関の混雑も控えめ
・価格的にもリーズナブル
・比較的気候が安定しており、日中も過ごしやすい
などのメリットがあります。
特に「大曲の花火 春の章」は、そのクオリティの高さからも、抜群のコスパを誇る花火大会だと思います。
2019年以前は5月中旬開催だった「春の章」ですが、2022年からはGW序盤の開催になりました。花火と旅行を組み合わせたりと、花火と地域観光の相互作用が見込めるよい時期だと思います。
2023年は桜が早かったですが、例年通りか遅めなら、東北はまだ桜も楽しめる頃。
さわやかな気候と花火、そして季節の花を贅沢に楽しむのがこれからのGW旅行の定番になるかも?
そして夏の「大曲の花火(全国花火競技大会)」は、例年同様8月最終土曜日(2023年は8月26日)に開催!
6月8日(木)からはチケット販売も始まりますよ!
詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。