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歴史的価値の高い建築物が移築された三溪園
全国に点在する歴史的価値の高い建築物は、建造された場所で大切に保存されています。ところが横浜市の三溪園には、京都や鎌倉などから、数多くの建造物が移築されました。園内の古建築は例年11月下旬から12月中旬には紅葉で彩られ、「紅葉の古建築公開」が開催されます。2020年は11月21日~12月6日の期間で行われています。
三溪園は生糸貿易で財を成した実業家の原富太郎が1906年に開いた日本庭園です。約17.5ヘクタールの敷地に17棟の歴史的建築物が保存されています。
三溪園に公共交通機関を利用して訪れる場合、横浜駅をはじめ根岸駅、桜木町駅、元町・中華街駅などから路線バスに乗車し、三溪園停で下車すれば正門の前です。
正門から園内に入ると穏やかな水面を湛える大池が広がります。
大池の南西の畔に設けられた三溪記念館では、三溪園を開いた原富太郎に関する資料や自筆の書画が展示されています。解放感が漲るロビーからは腰をかけて窓越しの紅葉を楽しむことができます。
ステレオ・カラーで彩られる旧天瑞寺寿塔覆堂
三溪記念館から園路を南西に向かうと、原三溪が最初に三渓園苑に移築した古建築の旧天瑞寺寿塔覆堂が建っています。堂の南に寄り添うように大きなイチョウが育っています。太い幹の下はイチョウの落葉で黄色の絨毯が敷かれたかのようです。
一方で旧天瑞寺寿塔覆堂の北はモミジの紅葉で彩られ、紅葉と黄葉がステレオ・カラーで堂を彩ります。
紅葉の見頃時期に合わせて公開される古建築
旧天瑞寺寿塔覆堂の西に建つ聴秋閣と春草盧が、紅葉の見頃時期に合わせて公開されています。聴秋閣は江戸幕府第3代将軍徳川家光によって京都の二条城内に建造された後、乳母の春日局に与えたと伝えられる楼閣建築です。3つの屋根が絶妙なバランス感をもっていることから、三笠閣の名で呼ばれていました。
春草廬は織田信長の弟でありながら茶人として暮らした有楽の作と伝わる茶室です。宇治の三室戸寺金蔵院から三溪園に移築されました。
聴秋閣から北西になだらかな坂道を上ったところには、徳川家康が1603年に伏見城内に諸大名の控えの間として建てた月華殿が移築されています。
三溪園は大池を中心として点在する古建築が季節の彩りに包まれます。
紅葉に包まれる古建築や展望台からの眺望
大池の南の小高い丘の上には旧燈明寺三重塔が聳えています。1457年に京都の木津川市に建造された塔は、三溪園に移築された建造物の中で最も古いものです。塔の下からは三溪園の全景の先に横浜の市街地が広がります。
旧燈明寺三重塔の南の松風閣からは、紅葉越しに横浜港の姿を見下ろすことができます。
旧燈明寺三重塔の丘を南東に下ったところには、飛騨白川郷から旧矢箆原家住宅が移築されています。江戸時代の後期に建てられた入母屋合掌造りの民家には、和の情緒が漲っています。
紅葉の時期に重複して開催される菊花展
三溪園では紅葉の時期に合わせて普段は公開していない古建築の公開が行われますが、正門近くの広場では菊花展も開催され視線の異なる秋を感じることができます。2020年の菊花展は、10月26日~11月23日に行われました。
横浜市の三溪園には、全国各地から歴史的価値の高い建築物が数多く移築されています。園内の古建築は、例年11月下旬から12月中旬には古建築が紅葉で彩られます。紅葉の見頃時期に合わせて「紅葉の古建築公開」が開催され、秋の彩りを鑑賞しながら、歴史にふれることができます。