「瀬戸内国際芸術祭(=瀬戸芸)」は、瀬戸内海の島々を舞台に、3年に一度開催される現代美術の国際芸術祭です。会期は春、夏、秋に分かれ、それぞれ1か月前後に及び、各期間中、それぞれ美術作品、アーティストや劇団・楽団のパフォーマンス、地元伝統芸能・祭事と連携したイベントなどが行われます。なんと2019年が開催年であり、ふれあう春という春会(31日間)の最終日である、5月26日に「サンポート高松 大型テント広場」で<『舞』讃岐の伝統~新たな時代へ~」>という「讃岐獅子舞集結イベント」が開催されるということを聞いたので、香川まで行ってきました。
紹介が遅くなりました。私はオマツリジャパンの南です。韓国出身で、日本の獅子舞を見ることは初めてです。初めて見た時の感想を含めて、イベントについてお話します。
■イベント概要
<『舞』讃岐の伝統~新たな時代へ~」>は、讃岐獅子舞保存会さん※が「瀬戸芸を観に来られたお客様がふらっと立ち寄り、香川県の獅子舞の迫力と魅力を知ってもらいたい」という目的で開催したイベントです。讃岐獅子舞保存会が出演したのは前回の2016年以来、2度目になり、今回は讃岐獅子舞保存会が選出した4市2町の6団体が出演しました。
※讃岐獅子舞保存会について
400年以上の歴史を誇り約1,200組あったとされる讃岐の獅子舞を広く認知してもらい、後世まで保存、伝承したいと願う団体及び個人で構成する団体です。まちづくりの推進及び、世代を超えた交流や伝統・文化の振興に寄与することを目的に活動しています。
■初めての人も讃岐の獅子舞の魅力が分かる演出
会場となるサンポート高松のテント広場には、出演する6組の獅子が出番まで展示されていました。
東京の獅子舞とは大きく異なり、各獅子は油単(ゆたん)や獅子頭がどれも特徴的です。獅子頭毎に造りや表情まで違いがあり、近くまで寄って見学や写真を撮ることができました。
特に、油単は各獅子組で模様や題材が異なりどれも見事で迫力がありました。
■初めて観る人にも優しい「獅子舞御朱印帳」
今回は「香川県の獅子舞を始めてみる人にも魅力を知ってもらう」事が目的の為、6組の獅子組を紹介したパンフレットが配布されました。
この御朱印帳は各獅子組の特徴をイラストで紹介していて、分かりやすいよう工夫されていました。香川県の獅子舞は地域ごとに特徴が大きく異なり、初めて見る人にはなかなか分かりにくいのですが、この御朱印帳を読めば初心者でも特徴や見所を把握できるようになっています。
また、裏面はスタンプを集められる様になっていました。御朱印帳は11月に開催される「獅子舞王国さぬき」でもスタンプを集められる様になっています。
御朱印帳は当日大変好評でした。子供や社会人、年配の方まで多くの方が楽しんでいました。特にスタンプのデザインが可愛いため、外国人旅行者の方々も自分のノートにもスタンプを押して行きました。
また、自分だけの獅子頭を作るワークショップもあり、たくさんの方が親子で参加していました。必死に段ボール製の紙に好きな色を塗ったり、作る姿はとても可愛らしかったです。とても人気で、イベントが開始される前に全部売り切れてしまったとのことでした。
■いよいよパフォーマンスの始まり!
当日の進行は、瀬戸内国際芸術祭ということもあり、岡山県の郷土芸能とのコラボの意味を込めて、備中神楽の「神楽太夫」さんが務めていました。
備中神楽の方々は、神楽の演舞を交えながら各獅子組の紹介をしていきました。
スタートを切ったのは、綾川町の綾南の親子獅子舞保存会 中筋獅子組さん!
香川県で珍しい「親子での獅子舞」を演じる獅子舞であり、香川県指定無形文化財にも認定されています。
まずは最初にインパクトを受けるのは鳴り物のボリューム。東京の獅子舞ではまず耳にすることがない大きな鐘の音に合わせて親と子の獅子が演舞を行います。
この獅子舞は親と子の愛情を表現した演舞になっており、初めて見る人でもその愛情が良く分かる程。ストーリー性があって20分程度の演舞があっという間に感じられました。
2番目で登場したのは、東かがわ市の落合芸能保存会さんです。
1組目の獅子組とは異なり、2頭の獅子とその前には2人の女の子が立って演舞を行いました。前の女の子は2人で息を合わせて所作を行い、後ろの獅子も合わせて演舞を行います。威嚇するように左右に獅子頭を振りながら近寄ってくるのが特徴です。クライマックスは後方からジワジワと近寄ってきます。2頭の獅子が競り合いながら近寄ってくるのは見所です。
こちらが落合芸能保存会の獅子頭と油単。
背中には小鳥が描かれており、演舞の際には獅子頭の動きに合わせてこの小鳥が細かく揺れ動きます。
3番目で登場したのは、高松市の讃岐高松本獅子会さんです。
この獅子組の獅子頭は一刀彫りで作られており、他の獅子頭に比べて重いようです。その為、演舞中には次々と人が入れ替わりながら迫力ある演舞を行います。
演舞の序盤は2頭の獅子が観客の眼の前まで近くまで寄ってきます。獅子の怖さに子供が泣いてしまうのは全国共通です。笑
前半2組の獅子組と異なり、この獅子組の演舞はとにかく激しいのが特長。2頭の獅子が演舞が進むにつれて、激しく首を振って行きます。重たい獅子頭を全力で振り回すため、腕は痣だらけになってしまうとのこと。
重量感のある獅子頭。
演舞のクライマックスには、梯子の上に駆け上がり頭上高いところで全力で振り回します。
太鼓の音も相まって会場内からは歓声が上がります。会場内の一体感が生まれる演舞でした。
4番目で登場したのは、三木町の二条獅子連さんです。
この獅子組も他とは全く違う特徴がありました。
まずは、獅子の数が5頭と6組の中で最も多かったです。そして、それぞれの獅子の近くには天狗がおり、獅子の周りで舞を演じていきます。
途中には、獅子がお酒を飲むシーンもあるなど1つ前の本獅子会とは違いコミカルな動きも交えて演舞を行っていました。
親の獅子頭には見事な龍と虎の絵が描かれておりました。
5番目で登場したのは、さぬき市の鴨部中筋獅子保存会さんです。
まず目につくのは一際大きな太鼓です。これは「桶胴太鼓(おけどたいこ)」と言われるそうで、多くの種類がある香川の獅子舞の中でも珍しいと言われています。
奥に見えるのが桶胴太鼓
今回の会場は屋根があるということもあり、雷の様な音を鳴らしながら演舞が行われていました。この獅子舞の演舞のラストは、獅子が離れた位置から太鼓の音に合わせて左右に大きく動きながら進んできます。獅子は2名で演舞しますが、その2名がぴったりと足を揃えながら進んで行く様は見応えがありました。
この動きは他の獅子組が見てもやはり素晴らしいそうで、演舞が終わった後には会場内から拍手喝采とアンコールの声が飛ぶ程でした。
2頭の獅子の油単には鮮やかな「那須与一」が描かれていました。また、よく見ると獅子の目は血走っており、迫力ある表情をしています。
そして、今回の演舞のトリを飾ったのは七宝古流本村夫婦獅子舞保存会さんです。
まず特徴的なのは、2頭の獅子を囲むように並ぶ太鼓です。その太鼓が一斉に音を出すため会場に地鳴りのような衝撃が走ります。
そして、その真ん中では獅子舞の夫婦がじゃれ合うように演舞を行います。
他の獅子頭に比べて立派な牙を持つのがこの獅子頭の特徴。
演舞を行っている頃には各島から高松に帰ってくる人も多く、大迫力な音に誘われて国内外の多くの観光客が会場に足を運んでいました。本日のクライマックスを締めくくる迫力ある太鼓の音と獅子の演舞は胸を打たれるような感動がありました。
6組それぞれの演舞終了後には、一旦備中神楽による結びの演舞が行われ、その後に6組の獅子の「一斉演舞」が。
6組の獅子が同時に踊り出し、会場は地鳴りをするように震え、どこを見渡しても獅子が入ってきます。各獅子舞の演舞を見てすっかり讃岐の獅子の虜になった観客達はスマートフォンを片手に会場内を動き回ります。
観客の中には外国の方々も多くおり、3時間ずっと会場内にいた方もいらっしゃいました。
■「香川の獅子舞」ってなんだろう?!
私は生まれ育った韓国で、韓国の無形文化財に指定されている「北青獅子」を一度みたことがあります。
日本と同じく、厄払いや五穀豊穣などの願いがかけられていますが、獅子の単体よりは仮面劇の中で登場することが多いので演劇的な要素が多く、フッサフサの長い茶色い毛が獅子の足まで覆われているのが特徴的です。
国は違うけど、似てるところもあれば似てないところもあり、面白いなと感じました!
こういった素敵な伝統文化が次世代にも継承されるといいですね!!
今回は香川県内の6組の獅子舞の演舞を見ましたが、どの地域も特徴が異なり、飽きることなく3時間を過ごす事ができました。
香川県に存在する獅子舞は1,000を超えるとも言われ、長い歴史の中で各地域趣向を凝らして特徴ある演舞に育っていきました。
そんな香川中の獅子を1日で楽しめるイベントが、毎年11月に行われる「獅子舞王国さぬき」です。
このイベントでは、今回演舞を行った6組の獅子をはじめ、なんと60組以上が出演します。
2019年の開催は11月3日(日)になる予定です。各地域の特色ある獅子舞を楽しみながら、是非「御朱印帳」のスタンプを集めてみませんか?!
獅子舞王国さぬきについての詳しい情報はイベントのFacebookページをフォローしましょう!
イベントページ:https://www.facebook.com/shishimaioukoku/
■終わりに
一般の子供が自前の獅子を持って途中から参加したり、参加団体だけでなく、来場者も楽しめるイベントでした。彼らの演舞をまた観れる日が来ることを楽しみにしています。
会場を埋め尽くす観客の方々。初めて見る方も多かったはずですが、魅了されていました。
My獅子頭をもって途中から参加した一般の子供!自前の獅子を持っているとかすごすぎる!
皆さん楽しい会を本当にありがとうございました!