2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
真っ黒な笑顔あふれる奇祭
1月6日以降で最初の日曜日、顔が黒くなるほどご利益があるという、250年続く伝統の奇祭、「片江の墨つけとんど」を見に、島根県松江市の美保関町片江地区へ足を延ばしてみた。他の地域では左義長やどんど焼きと呼ばれる小正月の行事を、この地域では「とんど」と呼んでいる。
早朝から竹で組まれたトンドの準備が始まり、午前9時ごろに左右赤や黄色、周りに大漁旗をくくりつけられた鮮やかな、トンドを地域の方々総出で立てていく。
午前11時ごろから片結(かたえ)神社で神事が始まるので、神事が始まる前に神社へ足を運んで見てほしい。地域の女性たちが集まった人たちに墨を塗ってくれる。そう、参加者、見学者全員に塗ってくれる。
もちろん拒否してもいいが、全員顔が真っ黒、皆さん墨を塗られて笑っている。顔が黒いほど笑顔、それ見て周りも笑顔になっていくのだ。私も黒く塗ってもらって一緒に笑顔で参加する。
墨をつける理由は1年間風邪を引かないように、海難に遭わないようにと魔除けのおまじないだそうだ。墨の作り方も独自の方法があり、作る時に皆さんの健康や安全を思いながら作るそうだ。秘伝の墨を「元気にな~れ! 笑顔にな~れ!」と混ぜるのだろうか…と想像して、また笑顔になっている。
地域の方が作った温かい豚汁のおもてなしもあるので、墨で真っ黒になりながら豚汁を味わうのもまたこの祭りの醍醐味(だいごみ)だ。
神事が終わると、町内を神輿(みこし)が練り歩き、出てきた人を黒く塗って、トンドを回り、砂浜で神輿と一緒に海に入って、神社へと帰っていく。後日トンドは焼かれ、1年間の無病息災が天に届くのだ。
黒く塗られて、笑っちゃう、塗られている人を見て笑っちゃう、このシンプルな笑いが長く続く伝統行事。片江の墨つけトンドの笑顔の理由を皆さんも体験してはいかがだろうか。