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山梨県天津司舞 日本最古の人形芝居  奥ゆかしい平安文化の魅力を知る

更新日:2023/3/23 鹿ちゃん
山梨県天津司舞 日本最古の人形芝居  奥ゆかしい平安文化の魅力を知る

天津司舞と

山梨県甲府市小瀬町。甲府盆地の中央、低湿地からなる稲作の盛んなこの地に日本最古の人形芝居があります。天津司舞。諏訪神社並びに天津司神社の伝統芸能です。
花桜の時期、平安時代から続く歴史深い人形が田楽舞を演じます。(田楽とは平安時代中期の田遊びから発達した舞)
人形で演じる田楽はとても珍しいとされ、現在では大変貴重な伝統芸能として重要無形文化財に登録されています。
数は9体、背丈より一回り小さい人形を用いて、当日は天津司神社から隣町の下鍛冶屋町、諏訪神社まで練り歩き、その後諏訪神社で舞が披露されます。

※2020年4月5日に開催予定だった「天津司舞」は、新型コロナウイルスの影響により中止となりました。

天津司の語源から知る歴史

天津司の語源は「テグツ」が変化した言葉とされ「手傀儡てくぐつ」の意味であると考えられていた一説があります。(甲斐名所図会より)

傀儡くぐつとは傀儡子くぐつしと書かれることもあり、傀儡子とは諸国を旅しながら芸能によって生計を立てる旅芸人集団です。平安時代にはすでに存在していたとされています。傀儡子の中でも操り人形を使って人形劇を行うものを手傀儡てくぐつと呼びます。

傀儡は現在の中国西域を起源とし、朝鮮半島を経由し日本へ入ってきたものと考えられており、天津司舞は手傀儡の操り人形に地域の文化が田楽として加わった形と考えることができます。

言葉1つ取っても、天津司舞は時代だけでなく、大陸を渡り文化の垣根を超えた画期的な文化であったことがわかります。今でも、人形が田楽を踊るのは珍しいとされ貴重にされていることを思うと、色あせない天津司舞の凄みを感じます。

当日の様子

当日は正午少し前に始まり、14時頃に終わります。
まずは、天津司神社にて人形を迎えます。

人形が拝殿から出てくる順番は決まっており、初めの6体は笛や太鼓、ささらなどの楽器を持つ人形、その後に剣を持つ御鹿島様、朱色の着物に身を纏った御姫様、白装束の鬼様と続きます。

この時はまだ顔をあらわにせず、顔面は赤い布で覆われています。
顔を隠した様子は怪しげである反面、簡単に素顔を見せない平安時代の奥ゆかしい文化に美しさを感じます。春風に淡い色の装束をなびかせながら現れた人形の姿は優雅で、柔らかい気品が漂っていました。近くで見ると手の表現がとても繊細であることがわかります。何気ない動きが人の仕草であるように生き生きとしていました。

 

9体揃うと、隊列になり1kmほど離れた諏訪神社へ向かいます。太鼓や笛の演奏と共にゆったりと進み、広大な面積を持つ小瀬スポーツ公園を通り抜けていきます。
この経路、昔は田んぼのあぜ道だったそうです。現代を象徴するような公園を平安時代から続く人形文化の行列が通る様子は、時代の変化を身近に感じる光景として深く思い出に残りました。

諏訪神社へ到着すると、隊列は社殿前に並びお祓いを受けます。その後、境内に建てられた御船囲おふねかこいと呼ばれる円形の舞台内に入り、その幕内で太鼓や笛の音に合わせ人形の田楽舞が披露されます。観客は御船囲の外側に立ち囲むようにして、幕の上で見え隠れする人形の舞を観覧します。

舞は反時計回りに周回しながら行われ、最初の3周は御舞と呼ばれる静かな舞で4周目から御狂と呼ばれる動作も音のテンポも早くなる激しい舞が3周行われ、再び静かな舞へ戻り、計9周したところで次の人形へと代わります。舞の種類は、2体1組の舞が4種、1体のみで行われる舞が1種で合計5種あります。人形の顔を見ることができるのはこの舞を披露している間のみ、舞の終わった人形は即座に赤い布で顔を覆われます。

初めてあらわになる人形の表情は、にこやかに微笑む者から、威厳のある者、美しい姫様や赤ら顔の鬼様と様々で、人形が顔を出すたびに胸が弾みます。笛や太鼓が奏でる特徴的な音色に合わせて上下に跳ねるようにして踊る様子は愛らしく、人形も満開の桜の下で年に一度の舞を楽しんでいるようにも見えました。

会場は子供から大人まで幅広い層が集まり賑わい、「御狂の舞」には手拍子がおきます。一番盛り上がったのは、剣を持った人形、御鹿島様が舞の途中で木製の小太刀を観客の方へ投げ入れた時でした。子供達が慌てて小太刀を拾い上げる様子や大人達がにこやかに見守る様子は、楽しげで情緒があり、昔から親しみ愛されてきたお祭りであることがよく伝わってきます。

舞終わると、御船囲から出て再び隊列をつくり天津司神社へと帰っていきます。
名残惜しげに行列へついて歩く人々もいました。楽しい時間はあっという間に終わってしまします。

 

こうして多くの人々に見守られ、大切にされてきた天津司舞。
奥ゆかしい平安時代の人形は、また来年へ眠りにつきます。

 

天津司舞の日時とお知らせ

日時:4月10日前の日曜日

甲府市観光課
https://www.city.kofu.yamanashi.jp/welcome/saijiki/tenzushi.html

 

2019年12月21.22日

YCC県民文化ホール(山梨県立文化ホール)にて

天津司舞をモチーフとした創作舞台「ヤマガヒ」の講演があります。

詳しくはこちら

http://www.yamanashi-kbh.jp/eventdetails.php?p=cf3a67aa7afc4526b81e2715ca9a2765

 

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祭り開催情報

名称 天津司の舞
開催場所 山梨県甲府市小瀬町557
天津司神社(小瀬町)~鈴宮諏訪神社(下鍛冶屋町)
開催日 2023年4月2日(日)
4月の第一日曜日
アクセス 【電車】
JR身延線「甲斐住吉駅」から徒歩約25分
【バス】
JR甲府駅より小瀬スポーツ公園行きバス(70番)に乗車し「小瀬スポーツ公園」バス停下車(所要約30分)し徒歩約5分
【車】
中央道「甲府南IC」より約10分
関連サイト https://www.city.kofu.yamanashi.jp/we...
この記事を書いた人
オマツリジャパン オフィシャルライター
写真家として、日本中のお祭を撮りながら旅をしています。

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