富山・砺波の春祭り
富山県の西部、砺波平野の中央に位置する砺波市。こちらには全国的にも珍しい、子供歌舞伎が受け継がれています。その子供歌舞伎を見ることができるのが、出町神明宮の春季祭礼の日。「出町子供歌舞伎曳山」として毎年4月29、30日の二日間で上演されています!
子供歌舞伎が町に根付いている、砺波市中心部の出町地区。街中を歩くと、歌舞伎役者の化粧”隈取”が描かれた看板がたくさん掲げられています。子供歌舞伎が上演される4月30日に出町地区へとやってきましたので、その様子をご紹介していきます!
各所で上演される子供歌舞伎
二日間に渡り上演される、出町子供歌舞伎曳山。3町によりお祭りが行われ、1969年からは西町、東、中町の順に、当番町交代制により子供歌舞伎が上演されています。今年は中町が当番町を務めており、街中に曳山が出されていました。
曳山の舞台で行われるのが、子供歌舞伎。出町地区の各所で複数回に渡り、歌舞伎の上演が実施されます。今年は29日に5回、30日に4回行われました。
こちらはアーケードのあるとなみ駅前商店街での上演の場面。歌舞伎が行われる曳山の前には、たくさんの見物客が押しかけています!
2023年の演目は、「恋女房染分手綱 重の井子別れの場」。1751年(宝暦元年)に人形浄瑠璃として大阪竹本座で初演され、歌舞伎では同年の7月に江戸中村座で初演された演目です。
この演目の見どころは、母の重の井と離れ離れになっていた息子の三吉の再会による悲哀の場面。立場上自分の息子だと周りに名乗るわけにはいかない重の井の葛藤と、再会したが去らざるを得ない息子の三吉のやり取りには胸を打たれます。
砺波街道沿いにある、不動尊前での上演もありました。こちらにも多くの方が子供歌舞伎を見ようと来ています!
右手にある建物が不動尊です。不動尊の前には”御旅屋の井戸”と呼ばれる、出町地区で最も古い井戸が残されているのもポイントです。ちなみに御旅屋とは、江戸時代の加賀藩主が休息を取るために整備された拠点のこと。こちらも旧加賀藩領内特有の場所なのですね。
観客を魅了する
ここからは上演の中身を見ていきましょう!上演は”上”と”下”の部に分かれ、各部を約45分で実施。上では三吉の活躍から三吉と重の井が親子であることが発覚するところを、下では二人の別れの場面までが描かれています。また今年は7人の地元の小学生によって演じられているのも魅力です!
若い姫から老年の家老までを見事に演じる子供たち。たくさんの練習を重ねてきた姿が垣間見れます。
役者の登場シーンでは、掛け声が飛ぶのも盛り上がるところ!
役者が登場すると、「待ってました!」と声援が飛ぶのが良いですね!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/uQmmwnhwn0
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) May 1, 2023
「いやじゃ、いやじゃ」と機嫌を悪くした調姫(中央、赤い着物)の機嫌を直そうとする三吉。見せ場ですね!
“いやじゃ姫”と言う異名まで持つ調姫。調姫は何がいやだったかと言うと、親元を離れ東国へ嫁入りのために向かわなければならなかったことです。ですが、出立に向けた準備が進められます。
調姫の機嫌を見事直した三吉ですが、家老の本田惣左衛門とは滑稽なやり取りを重ねます。ユニークな場面で見どころの一つ。「赤といえば?」「あっかんべー」と言う掛け合いには会場からも笑いが起きていました!
続いては、二人で舞を披露する場面も!
生演奏の中で、二人揃っての舞を披露。魅せられますね!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/5y85lfMFOR
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) May 1, 2023
生演奏、生効果音で行われているのも臨場感があり、惹きつけられるポイントなんです!
さあ、冒頭でもお伝えした三吉と重の井が二人で演じていく名シーンにやってきました。
裾を掴み、重の井を引き留めようとする三吉。
重の井の葛藤が伝わってきます。
涙なしには見られない名場面ですね。
重の井と三吉の哀愁を誘う場面です。#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/YQ9wJfX7fK
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) May 1, 2023
心のゆらめきを見事に演じていきます。
他の五人の役者も舞台へと出てきました。
三吉が去る、クライマックスへと物語は進んでいきます。
観客の目線が舞台へと集中です。
最後の見せ場がやってきました!
物語もクライマックス。三吉が魅せてくれます!#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/rrEifnLEQP
— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) May 1, 2023
これは泣いてしまう。別れの場面です。
最後はみんなでポーズを決めて、これにて終了!
演目も終了し、一列に並びご挨拶です。
会場からは、割れんばかりの拍手が起こっていました!上下90分にも及ぶ演目。小学生たちの見事な歌舞伎姿は素晴らしいものですね!
出町子供歌舞伎曳山、クライマックスからの挨拶シーンです。子どもたちが魅せる歌舞伎。惹きつけられますね。
19時半からは、今年の千秋楽上演が予定されています。#祭り #オマツリジャパン pic.twitter.com/CToXep8PUP— 高橋佑馬|お祭りライター (@yuma_walking) April 30, 2023
周辺情報・アクセス
出町子供歌舞伎曳山に通常時から触れることができる場所があります。砺波市出町子供歌舞伎曳山会館は三基の曳山や子供歌舞伎に関する展示を見ることができる施設です。お祭りとは違うタイミングで砺波に来られる際には、ぜひこちらに立ち寄ってみてください。
子供歌舞伎が行われるこの時期は、国内最大級の花の祭典「となみチューリップフェア」が開催されているタイミングでもあるんです!会場の砺波チューリップ公園には砺波市の市花であるチューリップが300万本も咲き、その風景は圧巻。子供歌舞伎と合わせての訪問先におすすめです。
■砺波市へのアクセス
・高岡駅よりJR城端線で約22分
全国的にも珍しい子供歌舞伎。今年はお祭りに合わせての上演は終了しましたが、明後日5月3日に砺波市文化会館と出町子供歌舞伎曳山会館ホールでの特別上演が予定されています。ぜひお近くの方は、見に来てみてください!