2019年からスタートした、観光経済新聞のオマツリジャパンコラム記事連載!2020年も「お祭り」をフックに、旅に出たくなる記事の連載をして参ります!奇祭好き、ケンカ祭り好き、お神輿好き…等、様々なライターさんに記事を執筆いただく予定ですので、ぜひご覧ください♪(オマツリジャパン編集部)
神輿が炎の中に投げ込まれる
7月初旬、石川県・能登半島東部に位置する漁師町、宇出津(うしつ)で行われるこの祭りでは、他に類を見ない「あばれ神輿」をお目にかかることができる。
一般に神輿は激しくゆすられることが神様を喜ばせるとされているが、この祭りでは暴れ方が桁違い。神輿は「バーン!」と大きな音を立てて地面に叩きつけられ、橋から川に落とされ、バチバチ音を立てて燃え盛る炎の中に投げ込まれるのだ。クライマックスでは何度も炎の中でひっくり返され、燃える木を突き刺され、担ぎ手たちはやけどだらけの真っ黒焦げ。祭神である暴れ神「スサノオノミコト」もこれだけやれば満足に違いない。
同時に、この祭りは能登ならではの「キリコ祭り」のシーズン到来を告げる祭りでもある。人々が高くそびえ立つ灯籠の「キリコ」を担いで街を渡御するこれらの祭りは江戸時代からの歴史を誇り、文化的な価値も高い。宇出津のあばれ祭りは夏の間に行われる29のキリコ祭りの皮切りとして7月第1週土日に行われる。
若者たちが「いやさか、よっせ、さかよっせ!」の掛け声に合わせてキリコを元気良く担ぐ。少子高齢化問題にあえぐ現状はこの町も例外ではないが、大勢の若者たちが祭りに合わせて都市部から帰ってくるそうだ。伝統文化を大切にする能登の風土が、この祭りを支えているのだろう。彼、彼女らが心の底から祭りを楽しむ表情にもぜひ注目していただきたい。
祭り翌日、のと里山空港ではちょっとしたマルシェが開催されており、そこで焼き牡蠣を味わうことができた。新鮮で大粒のそれはなんと3個で500円。もちろんお味も絶品だ。肉厚ぷりぷりで新鮮な海の恵みは、味だけでなく価格もご当地ならではの魅力と言えよう。
宇出津近郊にも数々のグルメスポットやオーシャンビューの立ち寄り湯などがあり、魅力は十分。深い緑に覆われる初夏の能登半島、大地の香りとともに日本の原風景が広がるこの地で、五感で記憶に残る旅を楽しんでもらいたい。